珍問珍答シリーズ その9 「伊勢物語」の「筒井筒」の後半「もとの女」について
「伊勢物語」の「筒井筒」を学習して、その後半部の「もとの女」について、どう思うか、「感想を50字以上で書きなさい」という問題を出しました。
その解答の中に、おもしろいものがありましたので、メモの中から、いくつか紹介します。
主人が他の女の所へ通ってたってのは、きっと知っていたと思う。その女としては、いつかきっと、また、私の所へ帰ってきてくれると信じて待っていたのでは? と思う。「おんなのカンはあたる」っていうけど、本当なのか? と思う。
他の女の所に行ってほしくないのなら、行かないで、と言えばいいのにと思いました。もしも男の人が疑がわずに、ほったらかしにされて、別れることになったら、絶対に後悔すると思いました。じぶんの気持ちに素直になった方がいいと思いました。
男が浮気しているのに気がついていなはずなのに、男を送り出して、化粧をして、歌を詠んで、結局、男を離さなかった。女のずるがしこい計算なのかなあと思った。
………在原業平は勝手がいいヤツだと思った。………
………時がたてば、この男、また浮気するだろう。
………今の日本には滅多にいないバカか女神のような人だと思う。自分としては、バカの方だと思っている。
………この女には、「男に結婚してもらった」という考えがあるんじゃないか。
昔、こういう女性がいたんだなあ。ものすごく立派だと思う。一人の男につくすところが、…………女性にこんなことをされたら、僕、泣いちゃうなあ。
男に対して「くやしい」とか「もういっしょにいたくない」とか思わないで、「こんな夜おそくに、一人で大丈夫かしら」と心配するだけ。それほど好きじゃないみたいにもおもえる。本当に好きだから、おこらないのかもしれないけど、やっぱり、この女の考え方が、よく分からん。
…………こんなに冷静でいられることにチョットあこがれるけど、愛する人が去って行くのに、一度くらい、とりみだしてもいいと思う。私だったら、絶対に行かせない。
相手が浮気しているのに、その身の安全を心配するなんて、すごく、いちずで、けなげだと思う。私だったら、男のあとをつけて行って、浮気の現場をとりおさえて、絶対にあやまらせてやる。でも、本当に男を自分の方にひきつけておきたいのなら、「もとの女」のように、けなげな一面を男に見せるのもいいかなあ、
とも思う。
………なんか、よほど世間ずれしてない人かと思う。………とうていマネできないし、マネしたくない生き方だ。
………今だったら、こんな女の人はいないだろう。私だったら、くやしいので、そのスキに、まちに行って
自分もあそぶ。でも、このの人は夫の浮気を、結果的にはやめさせられた。すごい。
夫をどなることもなく、逆に、夫が相手の女の所に行く途中のことを、かえって心配している。とても強いなあと思った。そういう女を見て、だんなさんは、いとしいと思い、河内にも行かなくなった。私も将来、この人のように、だんなさんが一回くらい浮気をしても、ゆるしてあげようと思う。でも、こりずに、二回も、三回もした時は、なぐってやろうと思う。
夫が浮気しているのをしっているのに、何も文句を言わないのは、言ってケンカ別れなどになるのがこわいからでしょうか。この夫は、妻が文句も言わず心配してくれるので、いとしいと思っているが、もし別の女だったら、ずっと浮気し続けるかもしれない。
しっとをしない人なのか、それとも、男の人の心をとりもどすための作戦だったのか。もし、しっとをしない人だったら、すごく人間のできた人だなと思いました。好きな人が、他の女の人のところへいくのを、黙って見送って、しかも山賊におそわれないか心配しているくらいだから、やっぱり、できた人だと思います。それを知って、男の人は、やっぱりこいつが好きだと戻ってきたわけで、それはそれでいいでしょう。しかし、私としては、しっとしすぎるのもよくないけれど、少しくらいしっとする女の方がいいと思います。
この場合、夫が妻の想いを知る、いい機会になったからよかったが、普通は、あまりうまく行かないと思う。やっぱり、浮気をしてはいけない。
とても損をする生き方だなあと思った。他の女の所へ行く途中の男のことまで心配して。しかも、この男は、それをかわいいなんて。たしかに男心をくすぐるかもしれないけれど、女の私から見たら、少し腹がたつ。男が、うたぐりぶかい人(隠れて、こそっと見ているような人)で、この女の人はラッキーだったね、という感じです。
男の浮気をゆるせたとしても、その身の上を心配するという気持ちは、私には絶対に出てこない。この女は、やさしすぎだ。
…………いい生き方かもしれないけれど、私にはムリだなと思う。…………
あこがれる部分もあるけど、もし、だんなさんが、その場面を見ていなかったら、きっと、別れていたと思う。私には、ぜったい、こんな生き方はできない。なぜ、夫が出て行ってから、また化粧をしなおしたのか、そこがよくわからない。
…………実は作戦だったんじゃないか。もしかしたら、この女は、男心を一番理解しているのじやないか。
二人は、親の決めた人との結婚を拒否するほど、お互い、愛し合っていたのに、女の親が死んで、このままおちぶれるのはいやだと、他の女の所へ走った。こんな男、私なら、ぜったいにゆるさない。浮気している事実を知ったら、即座に離婚か。 この「もとの女」は、なんにも言わない。それだけでも尊敬に値するのに、他の女の所へ行く途中の夫の身の上まで心配している。すごいことだと思う。妻のかがみだと思う。こんないい人のところへ戻って来ない男がいるはずない。新しい女のところへ行くのもやめた。これは、「もとの女」の愛情のふかさ、強さ、寛大さ、やさしさによるものだ。でも、一つだけ言っておきたい。二度目の浮気は、ぜったいに許すなということ。
男子の解答は、おおむね、好意的。
女子の解答は、おおむね、批判的。
まあ、予想通りでしたかね。
文を書くのをイヤがる生徒がほとんどですが、問題が適切であれば、進んで書く者もいる、ということを知っていただけたら幸いです。