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19話 塔上層

 上層に着き、その光景に最初わたしは目を見張る。


 それと、同時にどこか納得するものがあった。それは、考えてみれば当たり前のことだったからだ。


 わたしは入り口の七日妖精さんから、菊の花を受け取ると一列に並んだ七日妖精さんたちの列に並び順々にお墓に花を供えていく。


 一つのお墓に供えると、その隣のお墓へ、それが終わるとまたその隣のお墓へ。そんなことを繰り返す七日妖精さん達が列を作っているのだ。


 七日妖精のコミュニティの上層で行われていたもの、それは効率化されたお葬式。それは、粛々と、それでいてどこか事務的に行われていた。


 考えてみれば、それは当然のことだ。


 七日妖精は七日しか生きることが出来ない、彼らにとって死はいつも彼らの隣にある。それは比喩でもなんでもなくて、文字通り毎日数十人単位で七日妖精は死に続けるということなのだから。


 目の前で行われている事は七日妖精にとっては毎日の習慣のようなものなのだろう。どんなことだって、習慣となればそこに込められた意味合いは薄れてしまう。だから、こんなにも事務的なのだろう。



 塔の上層は墓地となっていた。



 それで、気がついた。


 七日妖精が塔を作っているのは何も、伝承の中の塔を再現するという理想だけが理由というわけではなくて、増え続ける死者を供養する場所を確保するためという現実的な理由が大きかったんだと。


 お墓がないなんて、それは七日妖精が目指した文化的な生活とはかけ離れたものだから。



 でも――



 でも、そうだとしたら思考能力まで放棄して塔を作り続けるというのは、どうなのだろう。


 それは、死ぬために生きているような、そんな感じがしてしまう。あの時七日妖精さんは、


『何か一つに全てを捧げることしか出来ないなら、大きなことを成し遂げたいと思うのは性ですよ。でも七日という期間ではそれは叶わない。だから、私たちは七日妖精として生きることにしたのです』


 そう言っていた。


 だからこそ七日妖精はあらゆる物を切り捨ててまで塔を作ることに固執したのだ。


 それは七日妖精が自分の人生に意味を求めた上での結果であり、別にそれはそれで非難するような事じゃない。


 ただ、今の七日妖精さんはその本来の意味合いがひどく薄まってしまっているような気がした。それは、今目の前で行われているお葬式とまったく同じような気がするから……。


 少なくとも、この塔がもし生き物だというなら、きっともう寿命なんだろうな。とわたしは思った。

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