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転生後 6 円卓転生 前編

 そして、前世の夢を見て今に至る。


 「おじいちゃん、昨日も思ったんだけどそっちのご飯はそんなに不味かったの?さっきから物凄い勢いで食べてるけど。」


 俺が何も言わずずっと食べ続けていると、キリハが心配そうに話しかけてきた。


 別に自分の世界の料理が不味いわけではないと思う。

 ただ、ここの料理が旨すぎる。


 ホントにレベルが違う。違いすぎる。味が薄いとか濃いとかそういう問題じゃない。美味しいと言うものをそのまま食べているかのような感覚。


 麻薬だと言われたら簡単に納得してしまう。


 「いや、多分そこまで不味くはないとおもうんだけど。」


 「でも、その割には凄い勢いで食べてる気がするんだけど。そんなにお腹減ってたの?」


 「違う違う。ここの料理が滅茶苦茶美味しいんだよ。」


 俺がそう言うとキリハは少し不思議そうな顔をした。


 「そんなに美味しい?」


 「うん。」


 「この料理は、アレンジも何も加えてない既製品だよ。」


 嘘だろ・・・これが既製品?ありえないだろ。じゃあ、ここの料理はさっきのが、カップラーメンとかそんなレベルなのか?


 「そんなに美味しいかな?」


 キリハが不思議そうに料理を見つめた。


 やはり常に美味しいものを食べていたら、そのありがたみが分からないのか。


 結局食べ過ぎてお腹が痛くなった。死ぬ。


 「大丈夫? 消化を助ける魔法かけてあげようか?」


 「それこそ、本当に死ぬからやめて。」


 俺がそういった瞬間、急にカミトさんが目の前に現れた。


 「ちょっと来てくれないか?」


 そういいながら俺に手を伸ばす。


 「何処にですか?」


 俺は、あまりの事に展開についていけなかった。


 「ちょっと早すぎじゃない?まだ、こっちに来て1日しかたってないんだよ。」


 キリハはわかっているのか否定の言葉をいっている。一体俺はどんなところに連れていかれるのか。


 「逆に、ちんたら物事を決める方が問題とは思わない?」


 「そうだけど・・・。」


 「だろ?」


  話がついたのかカミトさんが俺の方を見る。


 「じゃあ行こうか。」


 そのままつれていかれそうになる。


 「ちょ、ちょっと待って。」


 「ん、どした?」


 「一体どこにつれていかれるんですか?」


 俺がそういうとカミトさんが笑った。


 「そんなに心配しなくていいって。昨日の内に根回しは済んだから。」


 根回し?まじで何の話だ?


 しかし、俺の疑問など無関係に、


 「じゃあ、今度こそ行こうか。」


 突然視界が移り変わった。


 こっちの世界でこの建物を作ろうとすれば一体どれくらいの金額がかかるのか想像もつかない、力学を完全無視した建物が目の前にそびえ立っていた。


 「ついてきて。」


 カミトさんは俺を連れてその建物に入ろうとする。色々混乱しながらも俺は慌ててついていった。


 「結局ここはどこなんですか?」


 異常に豪華でなおかつ巧妙な細工がされている廊下を歩いている最中に結局教えてもらえなかったことを聞いてみた。


 「あれ、教えてなかったっけ。」


 カミトさんが意外そうな顔でこちらをみてくる。


 「えぇ、教えてもらってませんよ。さっきから微妙に誤魔化してるじゃないですか。」


 「いや、そんなつもりは無かったんだけどね。」


 彼は笑いながら、そこで一息ついた。


 「ここは円卓。この世界の方向性を定める最高意志決定機関。と言えばわかりやすいかな?」


 日本で言う国会議事場みたいなものか。


 ん?ちょっと待て。


 「なんで俺がそんなところに連れてこられてるんですか?」


 見学ならば、わざわざついてきてほしいなどと言う必要はない。なのに俺を連れてくる必要があると言うことは・・・。


 「そりゃ、君の処遇を決めるためさ。」


 カミトさんがさらりと言った。


 俺の処遇?


 「まさかいくら偶然だからといって、俺の父さんの意識を奪って転生した責任を問われないと思ってないよな。」


 カミトさんの声のトーンが少し下がった。


 「いや、そんなことは・・・。」


 「まぁ、流石にそれはないか。そっちの世界にも何かしでかしたときに判決を下すような機関はあるんだろう?」


 「えぇ、はい。」


 「なら、話は早いな。」


 気付けば長い廊下は終わり、これもまた異常に豪華で凝った造りをしている扉のところに来た。


 「ひとつ君に忠告しとく。」


 カミトさんはこちらを全く見ずに扉に手をかざした。


 「一応昨日の内に根回ししといたけど、君にとってあまり良くない展開になるかもしれない。

 でも、何もしゃべらない方がいいよ。」


 そして物凄い勢いで扉が開いた。


 「やっときたか。遅いぞ副議長。」


 「正直あんまり時間ないね。ちゃっちゃと決めてちゃっちゃと終わらすね。」


 なかなかの大きさを誇る円形のテーブルに均等に十二個椅子が並べられている。


 ただ、それだけしかない部屋だった。


 「いやいや、ごめんごめん。」


 カミトさんが謝りながら十二個ある椅子の内空いている2つの席のひとつに座った。


 「ということは、彼が転生者ということで間違い無いのだな。」


 カミトさんが座った横に座っていた小柄な碧髪の少女が俺の方をみた。


 「あらら、青年の姿になってしまって。私達爺婆同盟の数少ない同士だったのに。」


 「まったくじゃ。みんな揃いも揃って子供か思春期の姿しかしない中、逆境に立ち向かう私達の希望が・・・。」


 「効率悪いじゃん、その姿。なにやるにも魔法の補助が必要だし。しかも頭の冴えも悪くなっちゃう。やっぱ子供の柔軟な脳じゃないと。」


 カミトさんの反対側にいたお爺さんとお婆さんの会話に白銀の髪をした、その髪と同じぐらい白い肌をしている男の子が参加する。


 「何もかも効率効率と。そんなんだから色々大事なものを落としていくのではないのかね?」


 「ハイハイわかったわかった。」


 「なに、子供みたいな対応してるんですかシャル。外面に精神年齢が引きずられたんじゃないですか?」


 「ナナ、そんなわけないだろ。いつもこんなもんだよ。」


 「あぁ、精神年齢がそもそも子供だってことですね。それはしつれいしました。ですが、そんな人は私の好みじゃないですね。ですのであの話は・・・。」


 今度はそこに同じく白銀の髪をして、病的にまで白い肌をした女の子が参加した。


 「ちょ、そんなこと言わないでくれよ。悪かった、謝るから。」


 「私に謝るんじゃなくて、智也さんに謝ってください。」


 「まぁまぁ、そこら辺にしなよ。ほら、転生者が困ってるじゃん。」


 「タケルさんは黙っててください。」


 タケルと言われた女の子の反対側に座っている青年は、頭がタケノコだった。


 何をわけわからないことを言ってるんだと思うかもしれないがそうとしか言えない。


 ホントに頭からタケノコが生えている。(ちなみにイケメン)


 「そろそろタケルさんは、頭の気持ち悪いものを取ったらどうですか?」


 「はぁ、このファッションがわからないとは。君もまだまだだね。モモ」


 「えぇ、そんなファッションがわかるぐらいならまだまだの方がましです。」


 「そんなこと言っちゃダメよ。モモちゃん。人の趣味嗜好は尊重しなくちゃ。」


 タケノコを生やしたイケメンの隣にいるのは、ガチムチとか言うレベルを越えた、もはや巨人というに相応しいオカマだった。


 確かに、彼(彼女)がいうと説得力がある・・・。


 「そうだぞモモ。この春の息吹を感じさせるヘアスタイルにケチをつけるなど百年早い。」

 

 「・・・・・、そうですね、すみません、でした。」


 「おぉ、これまた完璧な棒読み。」


 「シャル、うるさい」


 「すみません。」


 モモと呼ばれた子供によって、シャルの存在感は入った当初に比べ半分以下にされていたその時、


 「じゃあ、そろそろ本題に入ろうか。」


 あまり大きくはないがやけに響く声で、カミトさんが語りかけた。


 「今日、円卓十二人に集まってもらった理由は、昨日言った通りそこにいる彼、転生者の処遇について決めてもらうためだ。」


 「ほんと、こんなに集まったのって何時ぶりって話だよね。」


 「あんたはその中でもサボりまくってた方でしょうが。」


 カミトさんの言葉にシャルがしみじみと呟く。その言葉にモモの突っ込みが入った。


 「ということで、司会は議長が勤める・・・と言いたいところだが、残念ながら今回議長はこの通りだ。」


 その言葉で、もう一度俺に視線が集まるのを感じた。そこに友好的なものを感じとることは出来なかった。


 「なので、円卓のルール通り今回は俺が司会を勤めるということでいいか?」


 しん・・・と空気が静まりかえった。


 「では、俺がとり仕切らせてもらう。」


 さきほどまでの緩い雰囲気は消え、まるで今から戦争でも起こるのかと言うほど空気が張りつめる。


 「今回の議題はさっき述べた通り、そこにいる転生者の処遇。

というわけでまず、彼が罪を受けるべきか受けないべきかを決める。」


 有罪か無罪か・・・ということか。


 「情報はいま、マジックリンクで送った通りだ。では、罪を受けるべきだと言う人は挙手してくれ。」


 ちょっと待て!早すぎるだろう!まだ何も弁解すらしていないのに、もう判決を下すっていうのか?


 慌てて異議申し立てをしようとするが、先程のカミトさんの言葉がふと頭をよぎった。


 「何もしゃべらない方がいいよ。」


 そういえば、根回しはしてあると言っていた。もしかしたらもう俺の無罪は確定しているのかもしれない。

 ここでもし、俺が下手なことを言って立場が悪くなってしまったらカミトさんの好意を台無しにすることになる。


 俺は、カミトさんの事を信じることにした。そもそも初めからずっと俺を守ってくれていた人だ。ここで彼を疑ったりしたら、疑った自分を許せない。


 目を閉じる。正直まだ、ここで、俺の処遇が決まるという実感はない。

 全てが余りに突然すぎて、まだ心が理解していない状況なのだろう。

 でも、もしかしたらここで、よくテレビで見る犯罪者みたいに罪を定められると思うと背筋が凍るのを感じた。


 「わかった。判決を下す。」


 意外と目を閉じていた時間は少なく感じた。カミトさんの声が聞こえて目を開ける。


 「賛成六人、反対四人。よって転生者は有罪であることが確定した。」


 そこには目を疑う光景が広がっていた。


 最初、全く状況が呑み込めなかった。


 少しずつ自分が一体どういう状況に立たされたのかということを頭が理解し始めた。


 俺が・・・有罪・・・?


 待て、根回しは?カミトさん、根回ししてくれているって言ってたじゃないか。俺を裏切ったのか?


 「では、次に転生者の刑罰内容について定める。ここも時間短縮のためマジックリンクを用いて定めようと思う。」


 俺の思いとは別に物事はどんどん決まっていく。


 一瞬取り乱しそうになるが思い直す。たかが有罪になったぐらいだ。しかも満場一致ならいざ知らず6٠4。そう重い罪になることはあり得ない。


 「では最終確認として口頭により最終判決を下す。」


 もう決まったのか。

 どうやって決めているかわからないが、こんなスピードで物事を決めれる政治体制があるのなら、その知識だけでも、現世に持ち帰ることが出来れば・・・。


 「被告人は第一級封印の罪に処す。この判決に異議申し立てがあるものは?」


 第一級封印?


 その言葉に不穏なものを感じた俺は、カミトさんの言いづけを無視して手を挙げた。


 「どうした、被告人。」


 カミトさんが不審げな顔でこちらを見てきた。


 「第一級封印とは一体なんなんですか?」


 俺のその言葉に、何かを思い出したかにように手を叩いた。


 「そういや、わかるわけないね。第一級封印とは、


 これから、この世界が終わるまで永遠に、身動きがとれない状態になる、


 この世界では最も重い罪にあたるものだ。」


 俺は耳を疑った。

 

更新遅れて申し訳ありませんでした。

これからはちゃんと隔日投稿します

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