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前世編 2


 気が付けば入学式の日から二週間がたっていた。


 「おい、神也。今日の午後空いてる?」


 あの後まずは優馬に話し掛けてみた。右隣のやつは完璧青年って言っていたが、本当のところにどうなのか?まあ、少し話したらすぐにボロも出るだろうと思っていたが、


 結論から言おう。完璧だ。


 漫画の人物がそのまま現実に出てきたような人物とでも言えばいいのだろうか、逆に違和感を感じるぐらいだ。


 それで、なんとか化けの皮を剥がしてやろうと思って優馬と話していたら予想外に馬が合い、何時も一緒に居るようになった。



 「現在、音波が伝わらない場所に居られるか、お話になられる相手をお間違えになられてる可能性があります。もう一度時間をおいてからお話し直し下さい。」


 「あれ?調子悪い?」


 オレが反応する間もなく、頭にチョップをかまされる。」


 「いてっ、おいおいオレは最新モデルだぞ。旧型とは違うぞ。」


 それを聞いて優馬は少し笑った。


 「その割にはちゃんと直ってるみたいだけど?」


 「うるせえな。」


 今ではこれぐらいの冗談は普通に言い合えるぐらいの仲になった。


 「それで、今日の午後空いてるかどうかだっけ?」


 オレがそういうと、優馬はオレの肩に手を乗せた。


 「そうそう、もし空いてるんだったら一緒に世界の始まりのニューアルバム買いにいこうぜ。」


 今日は土曜日。一応この学校も少しは名のある学校なので、

土曜日は休みではなく午前中授業がある。が、午後からはフリー。しかもオレは塾に通ってないので今からは自由が自由時間だ。


 当然ok・・・


 「ごめん、今日は無理。」


 そのオレの言葉に優馬は少し驚いたような顔をする。


 「あれ?なんかあるの?確か塾はいってなかったよね。」


 「今日、妹と靴見に行く約束してるんだ。」


 そういえば、今まで履いていた靴のサイズが合わないとかなんとかいってたときに、一緒に買いに行く約束をした気がする。こんなことなら、梓一人に行かせりゃ良かった。


 「妹さんか・・・、そうそう前も言ったけど妹さんの写真見せてよ。」


 置いた手を肩から離した優馬はオレの前に現れた。


「何、オレの可愛い妹は人に見せられないとかそんな感じ?」


 優馬の笑みが少し意地悪いものに変わる。


 「そんな訳じゃないんだけど・・・。なんか恐いんだよな。」


 「何それw?」


 「恐いもんはしょうがない。怖い自分を恨むんだな。」


 「ひど!」


 優馬が少し苦そうな顔をした後、笑う。


 「まあ、それは冗談としてそんなに見たいなら今度写真持ってくるよ。」


 「お、ホント?」


 「今日一緒に行けないし。ホントごめんね。」


 「別にいいよ。やっと梓ちゃんの顔とご対面か。」

 そんなことを言いながら優馬が俺の席から離れていく。


 「じゃあな神也、また今度。」


 「ああ、またな。」


 オレはそういいながら横の席に目を向けた。

毎日、毎日ずっと飽きずに窓ばっかを眺めている彼女。

つい先日、横の席のやつから苛められてるとは聞いたが、苛められてるとは言っても別に机に何か書かれたり、教科書が破られたりしてる訳じゃない。

あまりストーカーみたいに見てる訳じゃないから分からないが、何か暴力を振るわれている様子もなかった。


 ただ無視され、悪口を言われるだけのある意味一番辛いいじめ。聞けば2年近く続いているらしい。そしてオレは彼女の声を入学してからまだ一度も聞いたことがなかった。


 もしも、


 もしも、オレが何かの物語の主人公のような振る舞いができるのであれば、声をかけるのかもしれない。


 最初は当然無視されるか、事務的な会話しか返ってこないのだろう。


 でも何度も挫けず話し掛ける内に、何時しか向こうも少しずつ

心を開いて普通に話せるようになるのかもしれない。


 そしてオレは、ある日、彼女を苛めから救うために立ち上がるのだろう。


 だが、


 だが、現実はそんなヒーローを許しはしない。


 そして、

 オレはそのヒーローから最も遠い場所にいる人間だ。


 オレに出来ることは、いつか彼女を救うヒーローが現れた時に、そのヒーローを邪魔せずに見守る事ぐらいだ。


 学校のチャイムが鳴り響く。本日最後の授業が始まる合図だ。


 そういや、・・・何であいつ梓の名前知ってるんだ?


 オレの疑問はチャイムの音に呑み込まれた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


 「それで、学校はどんな感じ?」


 オレが外に出る準備をしていると梓がそんなことを聞いてくる。


 「どんな感じ?って言われてもな。・・・そうだな、優馬ってやつと仲良くなったかな。」


 「ああ、優馬さんね。あ、そこの財布取って。」

 

 梓が指し示した場所を見ると、机の上に堂々と、少し落ち着いた感じの財布が置かれていた。いつ、こんな財布を手に入れたのだろうか・・・。確か前の財布はもうちょっと可愛い感じだった。


 「あれ、梓。財布変えたの?」


 オレが梓に財布を手渡すと同時に聞いてみる。


 「うん。お母さんがくれたんだ」


 すると少し嬉しそうに受けとる。そういえば、昔の母さんの財布はこんな感じだった・・・。


 「そっか、良かったな。梓。」


 「うん。・・・そういえば、その優馬くんって、学校ではどんな感じなの?」


 オレが、梓にそう言うと少し恥じるように話題を変えた。


 「一言で言ったら、・・・完璧超人?」


 オレもその話題の転換に応じた。


 「へぇー、完璧超人?」


 「いや、結構まじでマンガに出てくるようなレベルで、完璧超人なんだよね。」


 そう言うと、梓が顔を輝かせた。


 「それは、・・・結構会ってみたいんだけど。」

 「それで、その優馬が実はお前の写真見たいっていってるんだよね。」


 「ほぉー、ということは本人に会ってもいい感じ?」


 「多分。」


 オレがそう言うと、梓が小さくガッツポーズした。


 「そっか、シンが完璧超人っていう人に会えるのか。」


 「もしかしたらオレが盛ってるだけかもよ。」


 少し喜びようが、いつもと違ったので一応釘をさしておく。だが、


 「それは、ない。」


 一蹴された。


 「シン、結構そういうところすごいシビアだから。」


 「そうか?」


 「うん。もしかして気付いてないの?」


 そんな会話をしている間にオレの準備が終わる。


 「じゃあ、行こっか。電話持った?」


 「うん・・・あれ・・・ちょっと待って。」


 急に慌てて鞄を探し始めた梓に先程、財布の横に置いてあった電話を取り出す。


 「はい、今度から気を付けろよ。」


 渡すと梓は少し不貞腐れたように受けとる。


 「じゃあ、いこっ。」


 そして、さっさと一人で玄関に向かってしまった。


 オレたちが向かう場所はオレの家から電車を使って十五分ぐらいのところにある巨大ショッピングモールだ。まだこっちに来て二週間しか経っていないので、この辺りの地理の確認も兼ねている。


 「そういや、そっちはどうなんだ?」


 巨大ショッピングモールがある旧大阪駅で、ふと疑問に思ったことを梓に聞く。


 「そっちはどうってどういうこと?指事語が多すぎて分からない。」


 それに何処か不服そうに梓は問い返してきた。


 「学校だよ、学校。そういや梓の方はどうなってるのかな?と思ってさ。」


 そう言うと、梓は急にモソモソし始めた。


 「・・・別にどうともないよ。」


 ボソッとつぶやいた梓はオレの前を歩き始めた。その態度に不審なものを感じたオレは急いで梓の横に行く。


 「梓、その態度よりなんかある言葉はないぞ。」


 そういいながら、梓の顔を見る。


だけど、その顔に惨めさや不快感は浮かんでいなかった。

というより逆に、・・・恥ずかしさか?ちょっと顔が赤くなっている。

ただ、そんな紹介しづらいようなことが学校であったのか?


 「もしかして、梓。」


 そう言うオレの顔に何か嫌なものを感じたのか、梓は身構えた。


 「何よ。」


 「学校で好きなやつでも出来た?」


 梓の顔がマンガみたいに真っ赤になる。


 「・・・。」


 そして、歩くスピードがいつもの二倍ぐらいになった。


 ヤバい、分かりやすすぎる。


 急いで追いかけて追い討ちをかけた。


 「名前は?何処に惹かれたの?一目惚れ?」


 オレが言葉を発する度に、梓の顔をが赤くなっていく。


 「そっか、一目惚れか・・・。よほど格好良かったんだろうなぁ。」


 いつの間にかショッピングモールの前まで来ていた。


 梓が初めて来るのに、地図も何も確認せずにはや歩きでショッ


ピングモールに入っていく。


 オレは大量の人混みのなか、ふとすれば見失ってしまいそうになる梓を急いで追いかける。

梓も場所がわからなくなったのか、

それともオレの姿を見失ったことに気付いたのかどちらか分からないが道路の真ん中で突っ立っている。


 「梓、大丈夫か?」


 するとオレの方を向き、少し安心したような素振りを見せた後すぐに顔が赤くなった。


 「うるさい、バカ。」


 それだけ言ってまた歩き始める。


 靴屋とは反対の方向に。


 「梓、そっちは靴屋じゃないぞ。」


 オレがそう言うと、梓の動きが止まった。


 「こっちだよ、こっち。」


 けれど梓はオレの呼び掛けに応じなかった。


 「どうした梓、お腹でも痛くなった?」


 そう言いながらオレが近付くと。


 「死ね。」


 と呟いて梓はオレの横を通りすぎていった。


 少しやり過ぎたかもしれない。


急いでオレは梓を追いかける。


 「ごめん梓。」


 「・・・。」


 「ちょっと言い過ぎた。ごめん。」


 「・・・。」


 「もう学校の話しないからさ。」


 「・・・。」


 オレが何度話しかけても反応が返ってこない。


 靴屋に行くまで謝り続けたがそれでも反応が返ってこなかった。


 「ホントごめんって、もう二度とからかわないからさ。」


 「・・・。」


 「そうだ、梓。今日の靴オレが奢ってやるよ。な、だから・・・」


 「・・・それホント?」


 だからだろうか、こんな失言をしてしまったのは。あざとく聞き分けた梓が反応する。


 「え、・・・あぁ、もちろん。」

 いってしまったことだ。ここで取り下げることは出来ない。


 「そっか、ありがとねシン。」


 その怒気の欠片も存在しない顔を見たとき、自分が騙されていたことに気付いた。


 「う、うん。ただ、」


 「奢ってくれるんでしょ。何にしようかなぁ?」


 オレが出そうとした言葉が封殺される。


ヤバい・・・このまま上限を設定できなかったら、オレの貯金が。


 「私こういう高い靴履いてみたかったんだよね。」


 「あの、あず・・・」


 「ありがとねシン。」


 ・・・。これは諦めるしか無さそうだ。


 自分の貯金と、今梓が見ている靴の値段を見比べているその時だった。


「あれ、清水さん?」


 急に横から若い男の声がした。慌ててそちらを振り向く。


 「清水さんだよね?」


 そこには今まで見たことの無いような美形の男が立っていた。

というか、誰だ?


 「雪村君・・・、何で・・・?」


 というオレの疑問はすぐに晴れた。梓が男の子の方を向いて驚いている。


 ん、?待て・・・雪村だと!


 「えっと、梓のクラスメイトか何かかな?」


 驚き、しゃべれないでいる梓に変わって雪村と言われた男の子に話し掛ける。


 「はい、清水さんと同じクラスの雪村結城です。」


 そこでようやく動き始めた梓が会話に参加する。


 「どうして・・・ここにいるの?」


 だが梓の顔は、何故か(と言っても明らかだが)赤くなっている。


 「そりゃ、姉ちゃんの買い物のつきそいだけど。・・・もしかして迷惑だった?」


 「え、・・・いや、そんなことないよ。うん。全く。これっぽっちも。ホント迷惑とかそんなんじゃないから。」


 「そっか、ならよかった。」


 迷惑だった?のところで急に青くなったかと思えば、また赤くなる。久しぶりにこんな面白い梓を見るなと思う一方、あるひとつの確信がオレの頭のなかをよぎった。


「あのさ、結城君の姉ちゃんは何処にいるの?」


 その論を確かめるために結城くんに尋ねる。


 「あぁ、今からは呼びましょうか?姉ちゃん!!!」


 結城くんが声を張り上げると、誰かがこちらに向かう音がきこえた。


 「どしたの?そんな大声をあげて。何か用?」


 そしてオレの想像と違わない、しかし異なる人物と出会った。


 普段はかけている野暮ったい眼鏡を外し、目にかかっていた髪の毛は一部分上にあげて三つ編みにしている彼女は。


 いじめられてる雰囲気など何処にもなく。


 ただただ目を奪われる圧倒的な美貌を持った。


 普通の少女だった。


 そしてこのときが、初めてオレが彼女の声を聞いた時だった。


 そう、この時が。


 あぁ、


なつかしいなぁ。



 

この話で、とりあえず前世編は一回終わります。

次から、ようやく転生します。

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