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「必ず戻って来るんだぞ、アリウス」
そう言って殿下が走り去った後、ロレンツィオに向き直った。
この時のロレンツィオは凄まじい変化の途中だった。
剣を足元に落として両手で頭を抱え、背中からは肉を突き破って生えた、血液が点々と付着した純白の翼が広がっていた。私とは正反対の色で、白と灰色の怪物のような皮膚が指先から両肩、左の頬までを覆い、私が刺した傷もあっという間に治癒してしまった。
漏れ出す不気味な笑い声に、さすがに私も恐怖を感じていた。まるで自分を見ているようで――もう人間でも死神でもなんでもない、ただの怪物そのもの。この世の生物ではない。
「アリウス、君の負けだね」笑い混じりに彼は言い放った。「君は自ら翼を引き抜き、進化を拒否した。その進化を受け入れている僕に君は勝てないよ。なんせ僕は“真の死神”だからね!」
高らかに笑ったかと思うと、猛スピードで突進してきて防御しようとする私を軽々と突き飛ばした。宙に浮き、飛ばされている最中に体勢を整えようとしたが、目も及ばぬ速さで私の背後に回り込んでいたロレンツィオは、私を殴って地面に叩き落し、胸倉を掴み上げた。体が浮き、足が地面から離れる。
「僕が本気を出せばこんなものだよ。何もかも破壊してやる。世界も、全部……」
私の魂を抉ろうとしたロレンツィオの左手を、私の右手は咄嗟に掴んで阻止していた。強く握り締め、少しずつ爪が皮膚に食い込んでいく。
ロレンツィオは私を忌々しく思ったのか、手を振り払い、凄まじい怪力で私を投げ飛ばす。私はそのまま背中から地面に落ち、まだ手放していない槍を再度握り、立ち上がってロレンツィオを見据える。
「それはさせない。私にはこの世界を守る義務がある!」
その瞬間、左腕に鈍い痛みが走った。視線を落としてみると、なんと、左腕も右腕同様、どす黒い皮膚に覆われているではないか。刃のような爪も同じ。
だが、不思議とこれが嫌だとは思わなかった。こうにでもならなければ、私はロレンツィオに殺されてしまう。何も守れなくなってしまう。
「これだからペドロの犬は嫌いなんだ」攻撃態勢に移るロレンツィオ。「次で終わってもらうよ」
「臨むところだ」私も槍を構えた。
私とロレンツィオは同時に飛び出し、ロレンツィオは私に手を伸ばし、私はロレンツィオに矛先を伸ばした。先に……届けば……頼む、届け……!




