シルフの目
奇術師事件翌日
僕はいつものように時間をかけて脳を覚まし。
洗面台へと向かい顔を洗う。
そこで僕はある異変に気が付く、その異変とは、昨日シルフの力で蘇った右目その瞳が綺麗なエメラルド色をしていることに。
そう、シルフが宿った瞳だ。僕はあり得ないが、念のためにその精霊の名を口にした。
「シル」
『ん、おはよコウ君…ん今日はやけに早いねっていつもとなんか顔が違うし。』
信じられない、いや正確に言うとこうだ。
信じたくなかった。
僕の思考回路は一時的にNEETとなった。
ゲームのキャラとゲームの中で融合した。
そこまではいい、しかしそれがリアルでもということになると話は別だ。
「シル、ここどこかわかる?」
僕は尋ねる。そしてシルが眠たそうにして答えた。
『どこってシューティングスターのギルドホームでしょ?』
やはりシルは、気づいていなかった。
「それが違うんだよ。ここはね僕たちがシルと一緒にいない時に過ごしている世界、地球っていうところだよ。」
『…え、えぇー‼︎地球って僕達の星から1銀河ぐらい離れているところにある星だよ!?』
僕がシルに真実を教えると、シルの叫びが脳に響き気を失いかけた。
そしてシルの星と星の距離の話はそう設定されているんだろうと思った。
「信じられないと思うけど、事実なんだ。」
と次の瞬間
「あんた、ブツブツ一人で言ってるの!?少し気持ち悪いわよ!」
いかにもおばちゃんって感じの母親の登場だった。
「はは、ごめんごめんちょっと劇の練習を…」
てきとうな理由で誤魔化す。どうやらシルの声は、僕にしか聞こえないようだ。
と、ふと時計を見る。
「ヤバイもうこんな時間か!」
僕は目を隠すために眼帯をして急いで登校した。
学校ではみんなから「どうしたんだ?」「大丈夫?」などみんなが心配してくれた。
そして僕は、みんなにこう言う。
「あはは、少し腫れてるだけだよ。
心配してくれてありがとう。」と。だけどハヤには、言っておこうと、思った。
そしてハヤを昼休み一人で屋上に来てくれと頼んだ。
そして昼休み。
「おーどうしたんだ、一人で屋上に来てくれって告白でもしてくれるのか?」
ハヤは、あははと笑いながら手を振ってきた。僕はそれに少し手を上げて返事をする。
「うん、まー告白ってのもあながち間違ってはいないんだけどね。」
と言いながら眼帯を外す。
「お、おまえそれカラーコンタクトか?それとも…」
「いやシルフの目だよ。」
ハヤは、アホの子みたいにずっと口をポカーンと開けていた。
当たり前の反応だろう、ゲームの中で起こったことが現実世界にも影響しているのだから。
驚かない方が逆におかしいことだ。
「それだけじゃないんだ。シルの声も聞こえるんだ。そしてこれ…」
僕は、人差し指をたてる。
するとそこに竜巻が発生したのだ。
スピリットダンジョンの風属性の魔法【サイクロン】だ。
「どういうことだ、わけがわからないぞ、おい。」
「僕にもさっぱりわからないんだ。朝起きたらこうなっていたんだよ。」
今回の事はわからないことが多くて、自分でもとても混乱していた。
というかしない方がおかしい。
「コウその力絶対に他のやつの前では出すなよ、もしバレたらどうなるか、それはお前は皆から化け物扱いされるだろう。俺はそんなこと絶対に嫌だ。」
ハヤの目はとても真剣だった。
だがそれは、手遅れだった。
ゴトと物が落ちる音、僕たちは、慌ててその方向を見た。
そう見られたのだ、そしてその見られた人物も最悪だった。
星姫だったのだ。
「コウ今のなに?」
どこか幼さを残した可愛らしい声だがそんな可愛らしい声も、なんとも重い言葉に感じた。
「えーとそのー」
「て、手品の練習だよ!」
何にも言えない僕を懸命にハヤがカバーしてくれた。だが…
「なんで、そんな嘘つくの!分かってるんだよ!昨日のことが関係してるんでしょ!」
星姫は、怒った初めて僕達に怒った。
「昨日のことってなんで星姫が!?」
星姫は、昨日のことなんで一切知るはずがないのだなのに、僕がなんでこうなったか。その原因が昨日のことである。その事実を知るのは僕とハヤしかいないはず。
「昨日コウとハヤを助けたのは、私よ」
僕の思考は本日二回目のNEETになった。
「えーとそれは、一体どういう…」
「昨日ダンジョンで奇術師に襲われたでしょ?」
僕はこの言葉で確信できた。というか確信せざる負えなかった。
「本当にあれは星姫なの?」
僕は戸惑いながらも聞いた。
「だからそうだって言ってるでしょ?なんで信じてくれないのかなー」
星姫は、頬を膨らませて顔を近づけて来た。
「い、いやーだってさー星姫、僕とハヤがスピリットダンジョンの話してても何も反応しなかったし。」
僕は一歩下がりながらいった。
「だって恥ずかしいじゃん!言い出しにくいじゃん!コウと一緒にゲームしたいから私も買ったんだーなんて!」
一歩開いた距離が再び縮まる。
「えーと俺は?コウとだけやりたかったの?」
ハヤが恐る恐る尋ねた。
「あーもーうるさいなー!ハヤは、どうでもいいの!」
その言葉を聞いたハヤは、膝から崩れ落ちた。
「ハヤ大丈夫!?」
僕はハヤを助けに行った。
正確に言えば星姫との距離が近すぎたので逃げたかったのでハヤを利用した。だろうか?
「俺は、大丈夫だなんとかな、そんなことよりこの目の事だ。」
ハヤは、立ち上がりながらいった。
「改めてこの目のことお前らは、どう思う。」
ハヤは、そう質問する。
そしてみんなで考えた。
そしてでた答えそれは、「わからない」。だった。
当たり前だ人間ば勉強して賢くなり知識を得る。しかし普通今回のことについて知ってるものは、いない。
教師にも、親にも、警察にも、何処かの高校生探偵にも解くことができない謎なのだ。
しかし唯一知ってるかもしれない人物が浮かび上がった。
スピリットダンジョンの製作者でありレックス社の社長を務める龍神 不知火である。
「だけどどうするの?社長となんかの話なんて出来るはずないじゃん。」
僕は今、当たり前のことを言った。
そう当たり前だろう、平凡な高校生が大企業の社長に会おうなんて、非現実的すぎる。
するとハヤのニヤリと笑いながらこう言った。
「決まってんだろ、侵入だ。」




