世界の異変
SF要素が多いかも。
まったり、凄惨な話に進めていきます
西日が差しこみ館内を明るく照らす。この時間が最も好きな時だ。
わが小説同好会は弱小だが、仲がいい楽しい部活だと思う。
「もう帰れ、鍵かけるぞ」
そう言って入ってきたのは顧問の阿野先生。
その声でみんなが慌ただしく動き始めた。この人はやると言ったらやる人だ。
「鍵閉めんの忘れるなよ」
そう言うとそそくさと出て行った。
あれ?阿野はここにいつも残るのに…。
「きゃあぁぁぁ!!」
突然、二年の小野先輩が悲鳴を上げた。
「如何したんですか!」
先輩のほうを見た瞬間、視界がブラックアウトし、俺は意識を失った。
「ウグッ!!」
頭が割れるように痛い。 まるで頭の中に無理やり何かを詰め込まれたようだ。
「京矢っ!」
誰かが声をかけてきた。母さんかな……って違う。叔母さんじゃん!
まさか…半泣きの叔母さんに俺は尋ねた。
「母さんは?」
「千晶義姉さんなら死んで無ければそれで良いって言ってた。昔からだけどなんでああなのっ!あの人って」
うん、やっぱり。めんどくさいからって、また叔母さんに押し付けた。昔からそういう人だったけど。
「やっぱり、こっちに来ないか」
「しかも帰りは遅くなるから、私と食べてって!あんたそれでいいの?」
「別にいいんですけど、帰っていいのかな?」
叔母さんはナースコールを押した。
「今聞くから、ちょっと待ってて」
2分ほどして看護士と先生が来た。いろいろ検査して
「今日は泊まってください。明日か明後日には退院できると思います」
…叔母さんは帰っていった。
もう何もやることがない、寝よう。
―四国沖―
警報の鳴り響く中、大乃木は目を覚ました。内線で状況確認をしようとしたがつながらない。
次の手を考えていると、下士官が来た。
「すぐに艦に移ってください!」
大乃木は重要なものを持って外に出た。
準護衛艦「国後」につくと船長室に案内された。
豪奢な作りの部屋には「愚者」のみがいた。
「さて、艦橋へ行きましょうか」
そう言うと愚者は部屋の外へ出た。
エレベータの中で大乃木は口を開いた
「いったい何があったんですか?」
「煉獄を破られたわ。天使が出現するまでそう時間はないわよ」
その言葉に大乃木は眉尻を上げた。
「いずれそうなると分ってましたし、あなたの予言もあった。ですから…」
「だから驚いてないのね。でも、なぜ用意しておかなかったのか。それが不思議なんでしょう」
「えぇ、不満たらたらですよ」
そう言った瞬間、艦橋に到着した。
艦窓から見た景色は異質だった。空間が歪み、まるで破ろうとしているように見える。
「我々は何と戦おうとしているんだ…」
艦長のつぶやきが聞こえた。
その次の瞬間、空間が揺れ動いた。
「なっ、何だこれは!?」
空が、海が、雲が、空気が、歪んだ。
艦が軋んだ。区画の状態を表すランプがいくつかグリーンからレッドになった。
…そして、「天使」が姿を現した。
大きな目玉から黒いゴムのような腕をはやした「天使」はどちらかと言うと「悪魔」に近いだろう。
腕をうねうねと動かしながらその場にたたずんでいる。
一瞬の沈黙の後、艦長は叫んだ。
「全艦艦対空ミサイル発射っ!!米空母エンタープライズⅡに支援要請!」
近隣海域にいた日本護衛艦2隻と米駆逐艦4隻から一斉にミサイルが放たれる。
ミサイルは白い航跡を残しながら天使に向かって飛んでいき、手前で爆発した。
「何っ!!」
クルーから驚きの声が出る。
「直撃して壊れなかった」なら信じられるが、「当たる前に突然爆発」など前代未聞だ。
艦長は再度ミサイルを発射させた。
しかし、またもや届かず手前で爆発した。
「いったいどうなって居るんだ!」艦長の怒鳴り声が静まった艦橋に反響する。
その時、天使はこちら向きを変え、腕を一本持ち上げた。
腕の先で魔方陣が展開される。
「伏せろっ!!」
大乃木が叫んだ瞬間、魔方陣から大量の光の弾が迸った。
狙い違わず隣の護衛艦「澄雲」にあたると艦を大きな火の玉と変えた。
愚者が隣でささやく「この艦からすぐに避難しないといけない。……この船もすぐ破壊されるわ」
「やっぱり、既存兵器じゃだめですね。すぐにオスプレイは出せるようなっていますが、行きますか?」
「えぇ、多分この船もすぐ沈められるわ」
そう言って愚者は、艦橋を出てエレベータに乗りこんだ。
オスプレイはテスト飛行で落ちるという最悪の結果を出した機体だ。
ただし、我々は改良を加えたオスプレイ―Aとでもいうべき機体に乗っているため心配はない。
パイロットが大声で叫ぶ。
「すぐ出しますか!それともまだ待ちますか?」
俺も大声で叫ぶ
「すぐ出してくれ!もう離れないとまずい!」
天使は2隻目を破壊し、こちらを向いている。次はこの艦だろう。
だんだんと回転数を上げ徐々に上昇していく。
艦から離れ水平飛行に移った。ものすごい勢いで「国後」から離れていく。
次の瞬間、「国後」は艦体を紅く染めながら火の玉となって海中へ没した。
〈黒崎〉
やっと退院できた。
結局、何の問題もなかったため3日で退院出来たが、なかなか忙しかった。
久しぶりの学校、結構質問攻めにされたが自分も覚えていないためそれほど多くはなかった。
「黒崎、せっかくだしみんなで帰ろう!」
そう提案してきたのは藤堂、俺の友達の一人。
いや、親友の一人だ。
「おい、せっかく抜けてきたんだ。俺を置いていくな」「私もよ!」
そう言って昇降口から出てきたのは、凪下と江長だ。
この二人はいつも委員会や、生徒会などで忙しくなかなか会えない。
ただ、この間の事件があってから二人は早く帰らされている。
「黒崎、聞いてんのか?…おまえ大丈夫か?」
突然目の前に江長の顔が現れた。珍しく心配そうな顔をしていてびっくりした。
「何驚いた顔してるんだよ。おまえ、ほんとにどこもおかしくないんだよな」
気づくとみんながこっちを向いていた。
「大丈夫だって、どこも悪くないし元気だから。心配すんなよ」
笑って言い返す。だが、どこか江長の表情がすぐれない。
もやもやとした空気の中、家まで帰って行った。
ふと家を見ると家の前に知らない車が止まっている。
ちょっとした高級車のようだ。うちの家族にそんな車に乗っているような知り合いはいない。
家に入ると、母さんは俺を呼び止めた。どうやら、今回の事件がらみらしい。
「黒崎京矢君だね。俺は千崎と言う科学者なんだけど…」
そう言って名刺を差し出してきた。
書いてあるのは文部科学省ではなく自衛隊でもなかった。
『特殊研究開発機構』と書いてある。
「この研究所は独立していてどこの指図も受けない。そんなところに俺は勤めている」
彼は息を吸うと、話し始めた。
「君は超能力を知ってはいるよね。まあ、信じれないとは思うけど。ほんとにあるなんて思わないよね」
彼が何を言いたいのかわからないまま俺はうなずいた。
「だが、あったんだよ。実際に存在していたんだ。君の知り合いにもいるよ。例えば、江長君とか。あと…」
「あいつが?なんで、どんな能力を?」
「…君も持っている、能力を。ただ調べられていないんだよね。ちょうどそのころ忙しくてさ、結構調べ洩らした能力者がいるんだ。ただ、江長君は気づいてコンタクトを求めてきた。だから知っていたんだよね。それから、藤堂君と凪下君も持っているよ。彼らはこの間調べたから、そろそろ結果が出るはず」
彼は言葉を切るとこっちを見てきた。どう反応しろというのだ。
「…で、俺にどうしろと?そこで調べる必要でもあるのか?」
千崎は立ち上がりながらこう言った。
「そりゃもちろん」
車は中央道を順調に進んでいる。ちなみにこの車を運転しているのは専属のドライバーだ。
「あんた金持ちに見えないけど、こんな車に乗れる御身分なのか?」
「この車の代金は国と世界各国の金から出している。まあ、税金だけどな」
結局、俺は車に乗せられて千崎が言うところに行くこととなった。
「サークル」とか「ラボ」というところらしい。
彼が言うには能力者の研究とバックアップをおこなっているそうだ。
「バックアップってどんなことしてるんですか?」
彼は一瞬考えると
「…たとえば健康診断、メンタルケア、能力の正しい使い方などかな」
「それだけですか?」
「…後は、いろいろ君に聞いてから話す」
そう言ったきり黙ってしまった。
中央道を降りると景色は田舎だった。
「こんなところにあるなんて…」
「いかにも秘密基地だろ。…まあ、予算とかいろいろ絡んでこんなところにしか作れなかったんだけど」
肩をすくめるとそう言ってきた。
「大人の事情ってやつですか」
「まあね。一応自由にやらせてもらってるとはいえ組織だから」
30分ほどすると山をえぐりそこにでかい扉を立てたような入り口が見えた。
高さは8~10メートルほどだろう。何でこんなにもでかい扉が必要なのか。
「ここからは人だけじゃなくてもっとでかいもんも出入りするからな。多くのものもいっぺんに出すことがあるし」
「例えば…ロボットとか?」
行ってから幼稚すぎたかなと思う。現代日本にそんなでっかいロボットなんてあるわけないのに。
「よくわかったな。見れば吃驚するぞ」
そういって中に入っていた。
中の通路を2~3分歩くとまたもやでかい扉がある。
『危険、厳重警戒』と書かれたプレートが貼ってあるその扉を彼は開けた。
中はコンクリート壁のトンネルになっていた。
100メートルほど先に扉がある。
「何ですか、ここは」
「ラボだよ。ここは超能力者の研究場所、ラボⅧだ」
「厳重警戒ってどう言う意…」
「つまりは、怖いんだよ。おまえたち…超能力者たちが」
「そんなに強い人たちが?」
「多分瞬殺だろうな、しかも専用の武器まで持ってるんだってんだから。…ほんと始末に負えないな」
第二の扉を開け、中に入ると
「……何なんだここは!!ここって山の中じゃ……ない」
「ここは、もう一個の空間。俺らのいる世界とはちょっと違う場所だ」
どう言えばいいのか、言うなればファンタジーに出てくるドラゴン(高貴な)の住処=洞窟のようなものだろう。
天井は自ら発光し、まるで昼間のような明るさだ。
そしてこの空間の中は町になっている。聞いたところ、ここには「ラボ」と呼ばれる研究所があり、そこの研究員・
警備・その他諸々の生活環境を作るためにこうなったらしい。
どうやら、3000人が暮らしているとか。
そして、ラボのひとつに俺らは入っていった。
会議室3に通された、ここで待てという事らしい。
5分ほどしてはいってきた人たちに俺は驚いた。
「凪下、江長、藤堂!!」
「「「黒崎っ!?」」」
「「「「何でここにっ!!」」」」
「みんな揃ったようだな。1から説明しよう…」
口を開いたのは壇上に上がった千崎さんだ。
「君らをここに読んだのは、君らが能力を持っているからだ。
ふざけたことを言っていると思うだろう。だからまず、これを見てもらおう」
そう言うと、部屋に一人招き入れた。20歳ぐらいの女の人だ。
「初めて見る人はショックを受けるかもしれないので気負付けてね」
そういって、いきなり服を脱いだ。
「!!?」
絶句する俺らの前ですべて脱ぐと、何やら集中するように目を閉じる。
だんだんと彼女の体が変化していく。
体から黒く薄い毛が生えてきて四足の獣になってしまった。
「……何が起きた?」
状況についていけない
意味が分かんない
常識が通用しない
壊れかけた
無意識に呟いていたらしい。
千崎が口を開いた。
「黒崎君が言った通り、常識は通用しない。
この世界に合ったこれまでの常識はこの後の世界において意味をなさない。
そう、この世界はすでに壊れているっ!!」
休憩にするといって千崎は出て行った。
ここにいるのは監視員1名と俺、江長、藤堂、凪下の5名
「で、どう思った。今の見て」
一番に口を開いたのは江長。
「本当……だよね。あの女の人がしたこと」
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本当はもっと少ないです