八坪でした。
―――――この世界に来てから64日目
今日も人影どころか動くものすら見当たらない
不幸中の幸いといえばこの半透明の体が水や食料を必要としないって所だ。
半透明って言っても別に幽霊ってワケじゃない
この世界で精霊と呼ばれる存在だそうだ。
眼が覚めたとき持ってた「せいれいの友」という分厚い本にそう書いてあった。
・半透明なのはだいたい精霊!ゆうれいいみねーな!
…ダメだこの本、早く何とかしないと!
もっとも、そのおかげでこの八坪ほどの土地から…
いや、この人っ子ひとり通らない砂漠の中の不毛の八坪ほどの土地から動けないんだけどな。
「せいれいの友」によると
生まれたての精霊ってのは、自分の持ち場から離れる事が出来ないんだそうだ。
アホか…はぜろ!
もちろん出れないかは試してみたが、透明な壁に阻まれ押してもびくともしなかった。
ところで八坪ってどのくらいかわかるか?
畳で16枚分、約26.5㎡
1DKのアパートぐらいだと思う
何?結構広いじゃないかって?
バカ言え、荒涼とした岩と砂の広がる景色の中の八坪なんて
屁のツッパリもいい所だぜぇ
そうつまり…
さみしいのだ!!とっても!!
せめてインターネッツを下さい!!
―――――この世界に来てから85日目
日本人の中学2年生経験者なら異世界召喚なんて隣人のようなものだ。
しかし残念ながらそれらの知識は何の役にもたたなかった。
何故かって?まあとりあえずコイツを見てくれどう思う?
精霊名: つぼはち
精霊Lv: 1
精霊MP: 10/10
精霊スキル: 緑化
精霊ポイント: 0
「せいれいの友」の表紙に表示されてるオレの精霊としてのステータスらしい。
でだ、
「せいれいの友」によると精霊は最初から一つのスキルを使う事が出来、レベルが上がるとポイントと時々スキルが貰えるらしい。
逆に言えばレベルが上がるまでオレは緑化しか使えないってワケだ。
そしてここは砂漠ですね。
タネも土も養分も水もない所ではオレの緑化スキルは屁のツッパリでしたとさ…
レベルを上げろって?
「せいれいの友」によるとレベルを上げるには、動植物の感謝を受ける事が必要なんだそうだ…
ここ砂漠な…
人っ子ひとり通らない…
ペンペン草の一本も無い…
ハイ詰んだー!
やってられるか!!