Ⅲ金曜日の動揺(3)
自宅に着いてすぐに彼女の頭を拭く。色素の薄いブラウンの髪は、肩までの長さとはいえ水気を取るのに時間がかかった。
明日休みで良かったですね、と一応会話はしていたのだが、軽く微笑む彼女に見とれて時々手も会話も止まってしまったりした。
それからリビングのソファに座らせてホットミルクを渡すが、ぼーっとしながらホットミルクを口にしようとするところを見るとまだ酒が抜けきっていないようだ。
身体は拭いてやるわけにもいかず、タオルだけ渡して自分も着替えることにした。
風呂は朝出る前に予約したからすぐに入れるだろう。
まったく彼女のあの格好は目のやり場に困る。さっさと部屋を出るに越したことはない。
下を脱ごうとするところで榊原さんがノックもせずに入ってきた。大分驚いたが、それ以上に彼女が動揺しているのがわかる。
身体を拭くように言ったのにまだ拭いていないようだし、普段取り乱すことがない彼女が顔を赤らめ動揺しているのがおかしかった。
飛び出そうとするのを押さえると、ますます熱を持ち始めたのが触れる肩から伝わってくる。
……熱すぎないか?
さっきから反応が鈍かったり逆にテンションがおかしかったりするのは熱のせいかと焦る。
俺に意識を向けてもらおうとしたのには少し強引だったと認めよう。
―――俺だけの責任とは微塵も思っていないが。