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Ⅱ金曜日の偶然(2)
「…城川さんお酒強い?」
「ん?」
「なんかよゆーって感じだよ」
もうそろそろ限界な私に比べ、彼はほんのり赤い顔が健康的だねと言われる程度。
何がおかしいのかくすくす笑ってから答えた。
あなたの笑顔は人ひとり殺せます。未遂だけど。
「そうでもないよ。俺の顔赤く無い?」
「少しだけ。血色いいですねってくらい」
私はふてくされるようにテーブルに突っ伏した。
「雨降ってるけど、榊原さん傘ある?」
「持ってきてない…」
耳をすませると結構降ってるみたいだ。
駅まで走ればなんとかなるかな、と少し機能低下気味の頭で考える。
「…12時か。止むのを待つにはもう遅いな」
今夜はぐっすり寝れそうだ。明日は朝寝坊しよーかなぁ。
「帰りますー?」
「うん、榊原さん歩ける?送ってくよ」
週明け、女性社員が怖いかもしれない。
このとき私は何の目的でここにいるのか、頭からすっぽり抜けてしまっていた。
他のメンバーが未だに来ないことを疑問に思うどころか、気づきもしなかったのだ。
果たしてそれは酔いのせいなのか、それとも―――