表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

「チャンスを掴むには、犠牲だけでなく努力が必要だ。」

一日が過ぎ、アーサーは自室で体を伸ばす。

今日はメリー先生がタルミの決めたスタメンを発表する日だ。

急いで昼食を済ませ、学校の制服に着替える。赤いブレザーに白いズボン、ネクタイを締め、鞄を肩にかけ、寮のドアを開ける。


隣室のヴァートが丁寧に日本式の礼で挨拶してくる。

もう一人の隣人、ヤミも奇妙な日本人少年で、ニコニコしながら手を振る。


アーサーは挨拶を返し、興味を持って尋ねる。


「ねえヤミ、どのクラスなんだっけ?」


ヤミはわざとらしく傷ついた顔をする。


「えぇ!? 同じクラスだよ! 俺、幽霊じゃないよぉ〜!」

大げさな声で。


アーサーは驚く。本当に気づいていなかった。


「ごめん、見てなかった……」

少し恥ずかしそうに。


教室に向かう道中、アーサーはヴァートとヤミと楽しげに話す。

少し信頼を求めて、ヴァートに尋ねる。


「ヴァート……俺、最初の試合でスタメンに入れる可能性、あると思う?」

不安げに。


ヴァートは一切の遠慮なく、ストレートに。


「いや、正直ないと思うよ、アーサーくん」


アーサーはさらに自信を失う。


教室に着くと、チョークと開いた窓の匂いが懐かしい。

みんなおしゃべり中。メリー先生はまだ来ていない。

黒板にはスタメンが書かれている。


センターフォワード:ソニー

左ウイング:ケルミン

右ウイング:ロドリギーニョ

攻撃的MF:タルミ

サポートMF:ヤミ、ヴァート

センターバック:オリバー、カール

左SB:ニコール

右SB:ミンソク

GK:イェルム(スウェーデン出身の落ち着いた壁)


アーサーはすぐに反応できなかったが、心に不安が広がる。

やっぱり父の言う通りか……。

予想はしていたけど、ベンチスタートだ。


メリー先生が「おはよう」と入ってきて、普通に数学の授業を始める。


休み時間のチャイムが鳴る直前、メリーが天気の話のようにさらっと。


「今日の午後5時、1Yとのリーグ戦がある。

招集された者は全員グラウンドに来なさい」


ざわめきが広がり、チャイムと同時に生徒たちが獣のようにドアへ殺到する。


廊下を歩いていると、ソニーに会う。

いつもの笑顔だが、目は相変わらず評価するように鋭い。


「アーサー、スタメンになるために何をする?

みんなを犠牲にする? それとも自分を犠牲にする?」

興味深げに。


アーサーは意味が分からず。


「犠牲って……どういう意味?」


ソニーはそれ以上何も言わず去る。


チャイムが鳴り、授業が終わる。

嬉しそうな生徒、友達と予定を立てる生徒。

アーサーが教科書を片付けていると、ミンソクが近づいてくる。


「お前だけ補欠だろ? 恥ずかしくないの?

クラスで一番下って超恥ずかしいよな。

で、お前のポジションは?」

軽蔑たっぷりに。


アーサーは立ち上がり、拳を握りしめて白くなる。


「何だよ!? 舐めんなよ、このクソ野郎!

俺はウイングだ! なんで聞くんだ?

お前のクソみたいな右SBの座が奪われるのが怖いのか!?」


ミンソクは嫌悪の目で。


「相変わらず、下等生物が上等な人間の間にいられると思ってるんだな……」

独り言のように呟き、去る。


アーサーは屋上へ上がり、休憩する。

そこにアリスが座っていて、挨拶してくる。


「やっほー、アーサー! 元気?

なんか落ち込んでるね。スタメンに入れなかったから?」

あまりにも優しすぎる笑顔。


アーサーは少し疑うが、信じてみる。


「……そうかも。なんでそんなに気にするの?」


アリスはさらに笑みを深く。


「だって、クラスメイトが心配なんだもん!

みんな幸せでいてほしいじゃん!」


アーサーは少し頷く。


「……そうだね。ありがとう」


アリスは去り、アーサーは一人残る。

ボールを蹴り始める。

最大記録は30回。いつもそこで落ちる。

26回目で落とし、また練習。

試合1時間前になり、ボールを拾ってグラウンドへ。


仲間たちがウォーミングアップ中。

観客席には20〜30人、暇な生徒が見に来ている。


ベンチから見る1Y。

特に目立つ二人がいる。

スペイン人のマヌエル、異常にハイテンション。


試合開始のホイッスル。

ソニーがセンターサークルから素早くキックオフ、ヴァートが受ける。

ヴァートは落ち着いてオリバーへバックパス。

オリバーは叫ぶ。


「上げろチーム!!」

パスというよりクリア気味に蹴る。

ヤミが楽にトラップ、前から1Yの選手が猛スピードで来る。

ヤミはルーレットでかわし、股抜きパスをソニーへ。

ソニーはオリエンテッドコントロールで背後のDFを外し、シュート……

だがマヌエルが中盤から猛ダッシュでクリーンなスライディング!

スタンドから「オオオオ!」

マヌエルがボールを奪い、笑いながらドリブル。

ソニーをプレスするが、股抜き。

中盤まで運ぶ。


守備が殺到。ヤミとミンソクがサンドイッチ……

だがマヌエルは簡単に抜け、イングランド人のマックスとワンツー。

カールを抜き、オリバーがラストマンになるが、マヌエルは素早くオフサイドラインを抜け、マックスがループパス。

イェルムが飛び出すが、マヌエルが軽くコースを変えてループシュート。

ゴール。


メリーはベンチで眉を少し寄せ、ノートに記す。

4分で先制された。


試合再開。

タルミがソニーからセンターサークルを受け、落ち着いて進む。

一人目はフェイント、二人はレインボー。

流れるようなドリブルでプレスをかわし、左足でクロス。

曲がりながら落ち、ソニーがスプリングのように跳び、シザースキック!

DFの上を越え、高さと跳躍力で。

GKは予測不能の質の高いシュート。

ゴール。


アーサーはベンチから飛び上がり、歓喜。

2分足らずで同点。

ソニーのスーパーゴールに拳を握り、輝く笑顔。

メリーの肩の力が抜け、メモを続ける。

ピッチでソニーがタルミに。


「アシストありがとう、キャプテン」

笑顔だが目は冷たい。

タルミは無表情。


「パスをもらわないと何もできないって、無能じゃないか?」

ヴァートが笑顔で仲裁。


「まあまあ、議論は後に。

彼は彼のやり方で輝くんだから、続けよう」

相手を指す。相手は目覚めた。


時間が進み、40分。1YのCK。

マックスが強烈なクロス。

マヌエルがペナルティスポットで背を向けてバイシクル……

失敗気味だが、別の1Y選手が押し込む。

ゴール。


イェルムがミンソクを睨む。


「もっと頑張れ。上がるとき穴開けすぎ。ニコールはそんなことしない」

ミンソクは怒り。


「お前だって2失点だろ、黙れよ」


6分後、ハーフタイムのホイッスル。


ハーフタイム。メリーの指示。


「聞いて。マヌエルとマックスは抜群の相性。

マックスの危険なクロスをマヌエルが爆発的に合わせる。

後半、アーサー、ミンソクに代わって入って」


沈黙。

ミンソクOUT、アーサーIN?

問題はアーサーが右利きでSBじゃない。ウイングだ。

右SBに置くのは本人にもチームにも拷問。


タルミが最初に口を開く。


「でもアーサーは右利きのウイングですよ。

右SBに置くのはチームに負担が……」


メリーは即答。


「分かってる。でも試したいことがある。

後半はSBをより攻撃的にする。

アーサーは右サイドを上がってロドリギーニョをサポート。

あいつはドリブルばかりで時間浪費してる。スペースがないから」


選手たちは立ち上がり。

ミンソクは「チッ」と小さく舌打ち。ソニーが近くを通る。


後半開始。1Yのキックオフ。

マヌエルが狂ったようにドリブル、3人抜き。

オリバーがカットに出るが、マヌエルはマックスとワンツー狙い。

アーサーが運良くインターセプト、ボールが少し跳ねるが落ち着いて後ろへ。

イェルムへパス、イェルムがクリア。

アーサーは速い。右サイドを駆け上がり、ロドリギーニョがイェルムのクリアをアーサーへタッチ。

DFが来るが、アーサーはロドリギーニョへチップパス。

ロドリギーニョがトラベラでケルミンへ。

ケルミンのボレー、GKが奇跡的にセーブ。

こぼれ球をソニーが押し込む。

ゴール。2-2


メリーは満足げに頷く。

アーサーは無能じゃないが有用でもない。でもロドリギーニョを覚醒させた。

ミンソクは攻撃参加しないから、アーサーの賭けは当たった。


1Yのキックオフ。マヌエルが時間を稼ぐパス回し。

攻撃らしい攻撃なし。

アーサーは我慢できず、70分にボール奪取。

右サイドをロケットのように駆け上がる。

コーチの言葉を思い出し、センターも兼ねる。

左足を置き、右足でクロス。

マヌエルをかすめ、ソニーへ。少し悪い位置だが、ソニーはどんなパスでも活かす。

走って跳び、バイシクルキック。

アーサーは呆然。

奇跡的にネットを揺らす。

3-2


1Zベンチは大爆発。

ニコールが駆け寄り、ヤミがソニーの背中に飛びつく。

ソニーはいつもの笑顔。

タルミは満足げだが、ソニーがクロス依存なのは気に入らない。


試合再開。マヌエルがキックオフから弾丸のように。

マックスが即クロス。アーサーが体をぶつけられて転がる。

マヌエルはフェイント、オリバーに股抜き、カールにオーバーヘッド、

エリア内で鞭のようなシュート。

イェルム無力。3-3


時間が進み、90分。1YのCK。

マックスのクロス。アーサーがマヌエルに密着。

マヌエルはアーサーに寄りかかり、空中シザース!

イェルムが伸ばして弾くが、ペナルティスポットに落ち、1Y選手が押し込む。

ゴール。4-3


1Yベンチが大歓声。

終了のホイッスルがアーサーの頭に響く。

自分が責められる……

あのシュートをブロックできていれば、せめて引き分けかカウンターで逆転できたかも。


メリーはタブレットをしまい、何の苛立ちもなく去る。


アーサーは芝に座り込み、汗だく。

ソニーがいつもの笑顔で水を差し出す。


「いい試合だったよ、アート」


アーサーは振り向き、拳を白く握る。


「でも俺のせいで負けた……」

苛立った声。


ソニーは眉を上げ、平坦に。


「じゃあ自分を犠牲にする方を選んだんだね。

変わった選択だな。まあ、水飲めよ、アート」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ