第15話 被害者づら
塚原浩孝と出会い章司が修行をつけるようになってから数日が経過。今日もまた例の洞窟のダンジョンにて修行中。ちなみに浩孝の能力は「変剣”神速木霊”」と言い変剣という名の通り真剣と木刀を変化させる変わった剣。真剣の場合は身体能力が2倍となり木刀の場合は反射神経が超強化される。
「でも!≪キン!≫家では真剣のことしか言ってないんです!≪キン!≫しかも弟の能力が!≪キキン!≫うっ!?」
「どうした?弟の能力はなんだ?話の続きが聞きたいな」
両者は話しながらの斬り合い。浩孝は本気となるときに使用する木刀を使って章司に挑むがそのすべての攻撃に回避・防御され、逆に超強化された反射神経でも回避不可能な攻撃を繰り出され浩孝の身体は傷だらけ。それについては章司曰く、
『別に反応が速くなっただけで体の構造が変化したわけではないのなら無理な態勢に身体を誘導すればいいだけのはなし』
らしい。そんな簡単そうに章司は言っているがそんな芸当を天才剣士・浩孝を相手に剣は専門外なはずの大魔導士の章司が行っていることが異常だろう。
「お、弟の能力は……名刀"麒迅"……身体能力が5倍になるんです……」
「身体能力が5倍か……それはすごそうだな……」
「僕は弟に剣術でも負けて能力も下位互換なんです……だからこそみんなが僕には期待しない……」
浩孝の声がだんだんと小さくなる。家のことに関して話すときは決まってこうなる。しかし章司はそんな浩孝を励ましたりなどしない。
「なにを被害者のように話してるんだ浩孝。すべてはお前が悪いんだろう?」
「え?」
励ましてくれると思っていた時にまさかの説教に困惑の浩孝。
「弟と……相手と真剣に戦わず適当に戦うのは武士として相手への最大な侮辱だろう?」
「そんな……僕は適当になんか……」
「真剣に戦えないことに対して向き合わず誰にも相談せずあきらめた……最後まで足掻かなかった……」
「……それは……」
「現に今は俺と戦えてる……動きも徐々に良くなっていっている……こんなやり方じゃなくても家族ぐらいには相談していればもっと早くに違ったやり方での克服ができたかもしれない……すべてのことをやりつくしたわけでもないのに諦めた……そもそもが真の能力を隠している時点でなにかそこに思いがあるんだろ?」
「……」
心当たりがあるのか黙ってしまった浩孝。そこに章司が追撃する。
「勝ってしまうと思ったか?」
「っ!?」
「緊張でまともに動くことができなくとも真の能力を発揮すれば弟に勝ってしまう……だけど自分なんかが弟に勝ってはダメだ……自分は期待されていないのだから……」
まるで浩孝の心を覗いたかのように心情を当てる章司。
「……エスパーかなにかですか?……」
「年の功だ。魔法も使ってない」
「……年の功っていうほど年取ってないじゃないですか……」
「言葉の綾だ、気にするな」
「……ちゃんと謝れるようにならないと……」
「任せろ。そのために俺が腕や脚を斬りおとしてやる」
「……それは勘弁してほしいんですけど……」
それからはさらに浩孝の修業は過酷を極めた。章司は有言実行とばかりに腕を斬りおとし戦術級の水系統魔法≪白光の聖水にて部位欠損すら治療可能であると証明してから幾度も切り落とされる腕に脚。
そうなれば浩孝も緊張がどうのなどと言ってられない。激痛という言葉が優しく聞こえるほどの痛みに死がよぎるようになった浩孝は急激に力が発揮できるようになってくる。
/////
十数分後
章司の剣が振り下ろされようとしている。体勢的に回避は不可な浩孝はそれまでであれば防御を選択する場面。しかし今回は防御ではなく章司の剣をはじき返した。
「はあ!」
キン!
「お?」
浩孝はそのままの体勢から一歩踏み込むのと同時に章司に対して木刀を振り下ろした。
カン!
「なっ!?盾!?」
章司は浩孝の攻撃に回避も防御も間に合わないと感じ取りとっさに盾を生み出し防御した。それは初めて章司が魔法を使用して防いだ瞬間だった。
「俺は魔導士だからな。これが俺の本当の姿だ。 さあ……まだまだ行くぞ?」
「はい!師匠!」
こうして数日間の師弟関係によって浩孝は生まれ変わりつつあった。
そして時はきた。塚原浩孝が己の実力を解放する瞬間が。
読んでくださりありがとうございます!
もし少しでも面白いと思ったら評価・ブックマーク・感想をしてくれるとそれが作者の描き続ける原動力となります!よろしくお願いします!




