第13話 もう一人の冒険者
洞窟タイプのダンジョンを探索中の章司。
バシュン!ガン!
突如高速にて飛来した矢を章司は無詠唱で土系統魔法≪阻む土の壁≫を発動させて防ぐ。
「貫通したか。でも威力はすごくても暗殺には向かない音だよな」
章司の土の壁を矢は貫通していた。幸いとして完全に貫通することはなく途中で停止しているが章司の魔法で完全に止められない程度には威力が高いということ。
バシュン!バシュン!
2本3本と飛来する矢。真っ暗闇の向こうから高威力な矢が襲い掛かりそれが土の壁に突き刺さる。このままではあと1本でも攻撃を受ければ章司の阻む土の壁は破壊されるだろう。それまで相手が持てばだが。
「そもそも射手が一撃目を防がれたのに同じ場所から移動しないのは悪手だろ。土系統魔法≪土の巨人の腕」
ドゴン!
「ゴギャ!?」
壁よりモンスターに対して巨人のような腕を作り出しそれでぶん殴った。たとえ真っ暗闇で射手が見えないとしても数多の戦闘を経験してきた元大魔導士からしたら魔法を使用せずとも自然に敵の位置を把握することなどたやすいこと。
吹き飛んだモンスターに近づくとそれは真っ黒なオークのような姿だった。
「ああ~なるほど。だから見えなくて矢の威力が高かったのか」
「ゴギャ!」
吹き飛んでもまだ死んではいなかったモンスターは近づいた章司を至近距離から矢を放ち殺そうとした。だがそれよりも章司の魔法のほうが早かった。
ザン!
それは風系統魔法≪断ち切る風≫。鋭い風によってモンスターの首は刎ねられた。後に残ったのはブラックオークの弓矢という素材だった。
「しっかし……本当にモンスターしかいないな……ダンジョン資源も宝箱もなにもない」
歩けども歩けどもいるのはモンスターのみでダンジョン資源や宝箱が一向に姿を現さない。おまけにモンスターは闇の外から遠距離で襲い掛かったり気配を消して暗殺者のように忍び寄るものしかいない。
「そりゃあ不人気なのも納得だよな」
章司はダンジョンに入ってまだ1時間ほどだったがそろそろ飽きていた。
「……もう出るか……」
そういって引き返そうと持ったその時に章司は音を聞いた。
キン!
「ん?金属音?」
金属音がしたということはどこかで戦闘が行われているということ。そこで章司は思い出したのがスタッフの言葉。
『あら?珍しい。こんな昼間からもう2人も来るだなんて』
2人しかいないのかという考えがよぎるがそれはつまり章司以外にもう一人誰かがこのダンジョン内におり戦っているということ。
「……なんでこんなダンジョンに……」
その冒険者に興味が出てきた章司はその音のした方向に歩いてみた。
「お~い!誰かいますか~!ちょっと話しませんか~!」
火の玉を浮かべても真っ暗で遠くが見えないので章司は思い切って叫んでみた。
「魔法を使えばどこにいるかってのはわかるけどこれのほうが友好的に見えるかもしれないしな」
急に現れるよりも声だけでも友好的にすることで話せる可能性が高くなるかもしれない。しかし章司の言葉に返事はなかった。
「まあ……怪しいか……。はたから見たら変な奴でもあるか?」
相手の立場に立って考えたときに暗闇で見通せない不人気ダンジョンで人を呼ぶ声。考え方によっては不気味であるしもしかしたらモンスターの可能性も0ではない、と判断していてもおかしくない。
「……帰るか……」
"なにやってんだろう俺"と客観的になった章司はこのダンジョンから出ることを選択した。
「そういえば……どっちから来たんだっけ?」
ここは真っ暗闇であるので来た道を戻ろうにもそれがわからない。このダンジョンは帰還するだけでも難関なダンジョンだった。
「しまった……もう適当に歩くしかないな。いつかは出れるだろ」
楽観視していた章司は適当にダンジョン内を歩くことにした。いつかは出入口にたどり着くことを信じて。
「まあ魔法を使えばいいだけの話なんだけど」
本来なら焦りを抱くこの状況でも魔法があるために章司は楽しんでいた。そんなこんなで歩くこと十数分。
キン!
またしても金属音がした。
「これ……近いな……こっちか」
先ほどよりも音が近かった。その音を頼りに歩いてみるとそこには1人の高校生ほどの男の子がいた。
「あの子か……もう一人の冒険者は……」
だがその男の子は木刀を持ち居合のような構えで目をつぶっていた。そして次に瞬間には例の音が3回した。
バシュン!バシュン!バシュン!
それはブラックオークが矢を放つ音。しかも3本が別の方角からタイミングをずらして放たれる矢。しかし章司はその男の子の構えを見て助けは不要と結論づけた。
スッ
ザシュ!ザシュ!ザシュ!
「「「ゴギャアアア!!」」」
一斉に泣き叫ぶブラックオーク。何が起こったかといえば男の子が放たれた矢の軌道を木刀でずらした。そのせいで矢は男の子には当たらずに3体のブラックオークの首に突き刺さるという事態に。高速で飛来する矢に剣を当てるというだけでも偉業なのだが、これは高速で飛んでくる3本の矢に対して見えていないブラックオークの首筋に当たるように調整して木刀で矢を滑らせた。
これらをコンマの時間で成し遂げた異常な反応速度と精確な剣術。それは章司の直感としてすべてが能力ではなくあの精確で完璧に制御された身体操作がなしている剣術はとても能力からくるものではないと判断した。
「……どこの世界にもいるものだな……天才剣士というやつは……」
前世を懐かしむ章司だった。
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