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番外編 王妃と元婚約者の婚約者(上)

 

 リリーシアがアルバートと婚姻して数カ月後の話。


 


 「王妃様。お手紙が届いております」

 

 薔薇に囲まれた豪華な庭園で一人、ティータイムという名のケーキバイキングを楽しんでいた王妃リリーシア。何種類ものケーキを味わいながら食べていた時、侍女が手紙を持ってきた。

 リリーシアはケーキを食べる手を止めて手紙を確認すると、宛名を見てハッとした。


 「ジルドからだわ…」


 リリーシアの元婚約者のジルド・クラウディア。ある夜会でリリーシアに婚約解消を宣言したが、その一件でクラウディア家は経済的に困窮する。状況を打開するためにリリーシアと寄りを戻そうとしたが、既にリリーシアは隣国の王子アルバートと婚約していて見事に振られた男だ。その後のジルドの近況はわからないままだったが、手紙の内容にはある公爵令嬢との婚姻が決まったとのことらしい。


 「…それに伴い、一週間後お二人と一度婚約者の紹介を兼ねて会食パーティーを開きたいと思っております。ぜひお越しください…かぁ」


 リリーシア自身はジルドに会うこと自体嫌ではない。むしろ会食の方に興味があった。しかし問題なのは夫であるアルバートの方だった。


 カリファチュア王国王子でリリーシアの夫であるアルバート・サーガスト。未来の伴侶を求めて様々なパーティーや夜会に訪れ、ある夜会で偶然見かけたリリーシアの食べっぷりに惹かれ、リリーシアに猛アタックの末見事伴侶をゲットすることに成功した男だ。

 しかし婚前パーティーでリリーシアと寄りを戻そうと迫ったジルドを毛嫌いし、婚姻後もジルドの名前が少しでも話に出ただけで不機嫌になるのだ。


 「ジルドの名を出すのはヤダなぁ…でもパーティーの料理食べたいなぁ…」


 リリーシアの大食いは婚姻後も相変わらずだ。

 アルバートの偵察に付き添い、そのついでに各国の料理巡りが一番の楽しみなのだ。


 「…言うだけ言ってみるか…」







 その日の夜。偵察から帰ったアルバートにパーティーの誘いの話をした。それとなくジルドからだと伝えると、


 「…わかった。せっかくの誘いなら、ぜひ行こう。パーティーの日は空けておこう」


 アルバートはすんなり承諾した。てっきり、『そんな奴のパーティーなぞ絶対に行かん!!』とか言うと思っていたから、リリーシアは拍子抜けてしまった。とは何よりパーティーに行けることが決まったリリーシアは、ジルドにパーティー参加の返事を出した。






 一週間後。リリーシアとアルバートは馬車に揺られること数時間、ようやくパーティー会場に着いた。

 ここはカリファチュアから数キロ離れた『アポロティア』という地方王国で名のある貴族『センチュリア公爵』の豪邸だ。ジルドはこの公爵家に婿入りしたようだ。


 「殿下、リリーシア。本日はお越しいただきありがとうございます」

 「ジルド君。本日はお誘いありがとう」

 「ジルド様。ご婚姻おめでとうございます」


 屋敷に入るなり、それぞれ挨拶を交わす。会場には既に大勢の招かれた貴族達で賑わっていた。




 「皆様。本日ははるばるお越しいただきありがとうございます。本日は私ジルド・クラウディアと私の伴侶であるキャロル・センチュリアのお披露目パーティーを心ゆくまでお楽しみください」


 参加者が集まったところでジルドはパーティー開始の挨拶をした。しかし、参加者の視線はジルドではなく、ジルドの隣りにいる巨漢な女性キャロル・センチュリアに向いていた。

 金髪を縦ロールに巻いた派手な髪型や煌びやかな宝石が散りばめられた赤色のドレスよりも目立つ程のふくよかな体型。細身のジルドと並ぶと圧迫感を感じる程で、着ているドレスはパツパツで今にも破けてしまうんではないかというくらいだった。


 「キャロル嬢…噂には聞いていたがすごい体だな…」

 「いくら公爵令嬢でも、あれはないよな…」

 「なんでジルド様はあんな方を伴侶に?」

 「あれじゃないかしら。公爵家からの経済的援助が目的ではなくて?」

 「いわゆる逆玉の輿ということですかね」



 周りの貴族達が口々に囁く中、パーティーは始まったのだった…。


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