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7、婚前パーティーと惚れたきっかけ


 次の日。街では号外が流れた。


 『カリファチュア王国の第一王子とアルケミス伯爵令嬢の婚約発表』と。


 国中で大騒ぎとなり、もちろんこのニュースは貴族の間でも噂になる。


 「アルケミス伯爵のご令嬢が婚約ですって」

 「しかもお相手は隣国の第一王子のアルバート様だなんて」

 「ついこの間婚約破棄されたばかりだというのに。一体どうやって隣国王子とお近づきになったのかしら」

 「ホント人生何が起こるかわからないものねぇ」








 「おめでとうリリーシア!あんな素敵な方に見初められるなんて。母様とても嬉しいわ!」

 「今夜はお祝いだ!皆の者、至急パーティーの準備だ!」


 アルケミス家にもこの話が伝わるとすぐに両親は祝福してくれて、使用人達も「おめでとうございますリリーシア様」と拍手喝采で祝福してくれた。その日の夜はいつもより豪華な料理がフルコースで振る舞われ、リリーシアは思う存分料理を堪能した。





 それからリリーシアの生活は慌ただしかった。

 隣国を訪れてアルバートの両親に婚約の報告をしたり、未来の王子妃としての英才教育を受けたりと目まぐるしく充実とした日々を送っていた。

 その合間にはアルバートとデートを重ねた。といっても、ほとんどリリーシアのための食べ歩きのようなデートであったが、アルバートは満足していた。

 

 一方で、リリーシアの大食いが国に広まったことで街の経済にも影響していた。

 リリーシアに打ち勝つために、あらゆる飲食の店が大盛りのメニューを開発し、リリーシアに挑戦の文を送っていた。文を受け取ったリリーシアは店に赴き、大盛りメニューを完食すればお代はタダというルールだったが、リリーシアにとっては普通の食事をしに来ているようなものだった。

 リリーシアが立ち寄った店は注目が集まり、瞬く間に繁盛していった。そのため、例年より国の経済効果は大きく上昇していき、各国でもリリーシアの名が知れ渡るようになった。







 ある夜会で、リリーシアとアルバートの婚前パーティーが行われた。このパーティーは二人が結婚する前の最後のパーティーとなる。婚前パーティーというが、来客のほとんどのお目当ては、リリーシアの食べっぷりだった。


 「リリーシア様、こちら一流シェフに作らせた特製パイ包み焼きです」

 「私からは各国の高級食材を使ったフルコースでございます」


 リリーシアのために用意した大皿いっぱいの料理を振る舞う者や、


 「リリーシア様、私と一勝負お願いします!」

 「いえ、ぜひ私と!」

 「私もぜひ!」


 リリーシアと大食い勝負を挑む者もいた。その勝負はものの三十分であっさりとリリーシアが圧勝した。


 「さすがリリーシア様ですわ」

 「見てくださいませ。リリーシア様に勝負を挑んだ殿方、全員気絶してますわ」

 「まぁまぁ、リリーシア様の食べっぷりにかなうわけがございませんわ」


 リリーシアとの大食い勝負に負けた屍達を見て失笑する令嬢もいて、パーティーは盛大に盛り上がった。

 

 

 パーティーを終盤に差し掛かったところで、アルバートは執事にあるものを用意させた。初老の執事がクロッシュ付きの大きなお皿を運んでくる。リリーシアの前に皿を置くと、執事がクロッシュを開けた。中にはこんがり焼けた黒豚の丸焼きが入っていた。


 「これは君のために用意したんだ、リリーシア。この料理が、君を慕うきっかけになったんだ」

 「私を?」

 

 リリーシアには全く覚えがなかったが、アルバートは続けて話す。


 「私は未来の伴侶を探すため幾多のパーティーに参加をしたが、なかなか良い相手が見つからなかった。しかし、とあるパーティーで君を見つけたんだ。君はこの黒豚の丸焼きを見て、とても感動していたんだ。その時の目はどんな宝石よりも輝いていた」


 ここでやっとリリーシアは思い出した。

 ジルドから婚約破棄されたあのパーティー。リリーシアは前世で食べられなかった黒豚の丸焼きに、驚きと感動の表情をしていた。


 「その時私は今まで感じたことのない感情が芽生えた。君は今まで出会った女性にはない特別な魅了を感じた。私の伴侶の相手は君しかいないと思った。改めてリリーシア嬢、どうか私と―――」

 「リリーシア!!」


 感動のクライマックスのところで、思わぬ事態が発生した。アルバートと言葉を遮ったのは、このパーティーには招かれざる客だった。


 「ジルド…?」



 



 

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回最終回でございます。

婚前パーティーもクライマックスに差し掛かったところで突然現れたジルド。その時リリーシアは―――

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