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3、爆食令嬢爆誕!


 リリーシア・アルケミスはアルケミス伯爵の一人娘。伯爵貴族の中では比較的裕福で、経済発展のために同じく伯爵貴族のクラウディア家次男ジルド・クラウディアと政略結婚するという形で絶賛婚約中。

 しかし、ある日ジルドから「デブ」と言われたことがショックで、リリーシアはダイエットすることを決意。食事制限に加え、ジョギングや運動を毎日欠かさず行った。さすがに辛かったが、リリーシアはジルドに「痩せたね」と言われたいために無理しても頑張った。

 しかし、過剰なダイエットのし過ぎでついに倒れてしまう。ほとんど食事を摂らなかったせいでリリーシアの体はガリガリに痩せ、肌はガサガサのボロボロになって両親や侍女達は心配していた。


 ……というところで、リリーシアは目が覚め、自分の前世が大食いYouTuberだったことを思い出したのだ。

 侍女のナティの話によれば、リリーシアは過度なダイエットに栄養失調による貧血から倒れたと思われ、医師からはしばらく自宅療養が必要と言われたのことだった。


 

 一頻り眠った後、ナティが食事を用意した。食事と言っても過度な食事制限をしていたリリーシアの胃がびっくりしないように、具なしのシンプルなスープを持ってきてくれたのだ。


 リリーシアはスープを一口飲んだ。あっさりしたスープが、リリーシアの体を温めてくれる。


 「…美味しい」

 

 リリーシアのその一言にナティは安堵する。

 今までリリーシアの異常な痩せ方に心配したナティは少しでも栄養のある食事を無理にでも食べさせようとしたが、その度にリリーシアに怒鳴られていたのだ。

 リリーシアはスープを完食すると、また再び眠りについた。ナティはリリーシアの寝顔に安心し、食器を片づけて部屋を出た。



 それから三日後。リリーシアは少し体調が良くなったのか、ナティに普通の食事を要求した。ナティはミネストローネとサンドイッチプレートを用意すると、リリーシアはあっという間に完食してしまった。すると、リリーシアはいつもと違う感覚に違和感を覚える。


 (全然足りないわ…)


 前世の記憶の影響からか、今まで食べていた量では食欲が満たされなくなっていたのだ。


 「ナティ、もっと食事を持ってきて」

 「えっ!?お嬢様、いつもこの量のお食事で充分とおっしゃってましたが…」

 「まだまだ足りないわ。ダイエットなんて、不健康になって倒れるまでする必要なんてないもの」

 「…そ、そうですよね。お嬢様は充分細身です」

 

 そういうとナティは急いで追加の食事を用意しに部屋を出た。その足取りはどことなく軽やかだった。

 侍女の中で一番リリーシアの世話をしていたナティにとって、リリーシアは娘か妹のような存在であった。そんなリリーシアが婚約者のために無理なダイエットで苦しむ姿を心配したりと何かと気に掛けていたのだ。



 リリーシアがちゃんと食事を摂ると宣言したのが嬉しかったのか、ナティは色んな料理を用意した。パスタ、白身魚のソテー、子牛肉のシチュー、サラダ、赤身肉入りサンドイッチ、トマトジュース、アップルパイなど。

 さすがにちょっと用意し過ぎたと焦るナティだが、そんな心配をよそにリリーシアは黙々と食べる。食事ペースはやや早めだが、幼少期から身につけたテーブルマナーを意識し、ひとつひとつの料理を味わっている。

 今まで見たことのないリリーシアの食べっぷりに両親やナティは目を丸くして固まるが、それでもしっかり食事を摂って少しずつ元気になっていくリリーシアに皆安心して見守っていた。




 「ねぇ、リリーシア。貴方お腹大丈夫なの?」


 自宅療養を始めて二週間経った頃、母親が心配そうにリリーシアに聞く。リリーシアは今両親と一緒に夕食を摂っていた。


 「何がですか?」

 「だってこんなに沢山食べているのに、貴方全然体型が変わらないからびっくりしちゃって。まぁ、なんともないなら別にいいんだけどね…」


 母親に言われ、リリーシアもふと気づいた。

 確かにここ一週間以上大量に食事を摂っているが、体型に変化が見られない。今着ているドレスはウェスト部分を緩めにした特注品だが、それでもお腹周りは細いままだった。

 その時、リリーシアはあることに気づいた。


 (もしかして、リリーシアも食べても太らない体質なのかしら?)


 前世のリリーシアも食べても太らない体質であったように、今のリリーシアも同じ体質の可能性のようだった。今は療養中であり以前より体を動かさなくなったが、食べる量が明らかに増えたのに体型が変わらないのが何よりの証拠だった。


 (よし、決めた。今世も大食いに生きる!)


 こうしてリリーシアは前世同様、食べることに専念して生きると決めたのだった。


 

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