完…?
2010年7月1日午後8時00分
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ヒドい暑さで僕は目が覚めた。
何か白いモノで体が押さえつけられている。身動きがとれない…。
頭の痛さに気付いて、思い出した。
そうだ、フロントガラスにぶつかったんだっけ…。
という事は、この白いのはエアバッグか。体の節々もかなり痛むが、なんとかドアに手を延ばして無理やり車外に出た。
辺りはすっかり夜になっていた。夜なのに、この暑さときたら…。
タイタス号は横転していた。タイヤがカラカラ回っているところを見ると、そう長い間気絶してた訳じゃなさそうだ。車はどこも壊れていなかった。ガラスにヒビさえ入っていない。
凄え頑丈…。
車に触って、あまりの熱さに慌てて手を引っ込める。爆発の熱で焼かれた様だ。
ここは【削除済】寺の境内だった。
20mほど先にバラバラに壊れたトイレの残骸が見える。爆風で押し上げられて、あそこから飛び出してきたんだな。寺の中ほどに建っている五重の塔の最上階の屋根が大きく壊れていた。あれにぶつかって、ここまで落ちた様だ。
あんなトコまで飛んだのか…。
相当の威力だった様だが、周りは静かだった。
静かすぎる、ひとっこ一人いない…。
おかしい…地下深くとはいえ、核爆弾が爆発したんだぞ。なのにこの静けさ…。
そうだ!地上でインスマス化してた人達はどこいったんだ?
誰もいない!かなりの騒ぎになってた筈なのに。
立ち上がろうとして、胸に赤い光が当たっているのに気が付いた。
なんだこれ?
見ると、胸だけではない。腕にも足にも、体中に赤い点が当たっている。
【レーザーサイト 直進する性質を持つレーザー光を直接目標に当てて狙う照準機。他の物とは違い肩つけ以外の姿勢でも狙いを付けられるのが利点であるが、必中は期待できないため連射可能なアサルトライフルやサブマシンガンに組み合わされることが多い。】
銃で狙われてる?!
その時初めて気が付いた。大柄な人物が僕の目の前に立っていた事に。
「初めまして、ミスターピンク。『C』と『N』を同時に倒したヒーロー!全て見させてもらったよ。いや実に見事な活躍ぶりだった!」
真っ黒なスーツ。エッジの効いたサングラス。服装は僕と同じだが、明らかに違うのは彼が外国人だという事だった。がっしりした体つきに短く刈り込んだ金髪の出で立ちは、どことなく軍人を思わせた。流暢な日本語で気さくに話しかけてはいるが、高圧的な態度は隠しきれていない。
「我々は君を受け入れる準備ができている。来たまえ!君の力が必要なのだ!アカシックレコードという驚異の力が!」
「だ…誰?」
「おっと!いや実にこれは失礼した。我々は『ウィルマース財団』。C対策班とは、兄弟の様なモンだ。私の名は…グリーンでイイかな?」
ごつい手を差し出してきた。彼の指にもドクロのリングがあった。
ウィルマース財団…?確かクトゥルーに対抗するために漂流者で作られた初めての組織…。だけどそれって教授自身が眷属に転んだ事でレッドさんのお祖父さんが倉庫に火をつけて焼失したって話じゃなかったっけ…?
物陰に隠れていた黒ずくめの兵士達が、銃を構えたまま音もなく現れた。完全に取り囲まれている…。
「この地域一体は我々が包囲している。インスマス化した住民達も確保済みだ。外部に情報が漏れる事はない。安心したまえ。警察も、自衛隊もここには来ない。もっとも、彼らは今それどころではないんだがな。」
「?」
「他の地域でインスマス化が起こっているんだ。」
「…そんな!クトゥルーは封印したんだ!もうインスマス化は起こらない筈…!」
「起こっているんだよ、それも世界各地で。だから我々は君の力が必要なんだ!さあ!」
ごつい手を更に伸ばす。たくさんの銃が僕を狙ったままだった…。
こ、断れないんだろうなぁ…。
僕は途方に暮れていたー。
ー続くー




