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脱出

********************************************



僕はキョトンとしていた…。


「何ですって?」


「シェルターに。設置されている。自爆用。核爆弾の。タイマーが。作動している。だ!」青ざめてたのが今度は、真っ赤になって怒鳴る参事官。


「え?なんで?どゆこと?」慌てふためくブルー。


「これかしら?」レッドさんがニトクリスの鏡の裏から何か取り出した。それはスマホだった。真っ黒なカバーケースに金色の縁取りが施してある。


「それは!」参事官が目を見張る。


「ええ。官房長官のモノですね。テーブルの上に置いてありました。」


「見せろっ!」ひったくる様にスマホを取り画面を見た参事官は「オイオイオイオイ…!」またしても青ざめた。


「官房長官が承認している…このシェルターは、今から8分後に自爆するぞ!」スマホの画面にメッセージが残っていた。


「まだ終わった訳ではない」


「ええっ!とと止められないんですかっ!」


「自爆に関する決定権は全て官房長官にある。実行も、中止も、我々にはどうしようも出来ない。」


「いつ操作してた訳?!」


「いやそれよりも早く逃げないと!」


「ダメだ。カウントダウンが始まったら、シェルター内の電源は全て落ちる様になっている。」


「唯一の出入口であるエレベーターは電動なのよ。私達はここに閉じ込められたって訳ね。」


「そそそそんな…!」


「そもそもこのシェルターは、外からの攻撃を防ぐ為に作られたモノではない。中のモノを外に出さないように設計されているんだ。私達も含めてな。」


「クトゥルーを閉じ込める為に作られたからね。この事は皆承知の上なのよ。あんたも死ぬ事に同意したでしょ?」


「いや僕あれは聞いてなかったですって!」


「ともかく、こうなった以上は足掻いても始まらん。皆覚悟を決めろ。私達は世界を救った。それだけで十分じゃないか。」遠くを見る参事官。


「てか膝がガクガクしてますよ参事官。」足元を見るブルーさん。


「うるさーい!小さい事は気にするな!」キレる参事官。


「いえ、まだ手はあるわ。」そう言ってレッドさんは自分のスマホを操作し始めた。両手で横向きに持って、左右に忙しなく傾ける。何事かと後ろから覗き込む男性陣3人。画面には何やら車が映っていた。右に傾ければ右に、左に傾ければ左に曲がって、階段やら広場やら、道なき道を走っている…


「ゲ、ゲームですか?!」僕は度肝を抜かれた。こんな時にこの人ってヒトは!


「黙って見てろ!」応えたのはブルーさんだった。


車はどこかの敷地内を走っている。前方に小屋の様なモノが見えてきた。このまま行くとぶつかりそう…と、思っていたら、車からミサイルが発射された!


吹っ飛ぶ小屋!地面にポッカリ穴が空いた。車は速度を緩める事なく穴の中へダイブ!!真っ逆さまに落ちて行く…いや、落ちない、走ってる!穴の壁に吸い付く様にして、真下に向かって走ってるよこの車!


何なんだ!何やってんだこのヒト!


「もう時間がないぞ!」焦る参事官。


「大丈夫。間に合います。」ひっきりなしにスマホを傾けつつ、レッドさんは返事した。僕は自分のスマホのタイマーを見た。後6分!6分でできる事って何?!


「耳塞いで!」レッドさんが叫ぶ。スマホをタップ!またしても車からミサイル!突然、プラクティスフロアにあるエレベーターの扉が轟音と共に粉々に破壊された!火柱と黒煙が吹き荒れる!

と、凄まじい激突音がしてエレベーターの中から何か転がり出してきた!



…それは、あの白い軽トラだった。




********************************************




空いた口が塞がらない…コレ今どーゆー状況?


「さ、乗って!」僕に促すレッドさん。


途端に参事官がダッシュ!後に続くブルーさん。「早く乗れ!」僕は途方に暮れていた。


いやこれ、二人乗りでしょ?


「ああ!これ二人乗りだっ!」乗ってから気付くブルーさん。


「後の事は後で考えろ!」ハンドルを握る参事官。「もう時間がないぞ!」僕らにも呼びかけるが、どう見ても乗れそうにない。


「ちょっと!4人は無理ですよ!」


「じゃあお前降りろ!」


「無茶苦茶だ!さっきの達観した参事官はどこ行ったんすか!」


「うるさーい!小さい事は気にするな!」


無益な言い争いを諌める様に、レッドさんが静かに言った。


「二人とも降りて。乗るのは一人だけよ。」


「は?な、何を言ってるんだレッ…」


「Shut F××k Up!!!」


ッビクゥ!Σ(゜д゜lll)Σ(゜д゜lll)Σ(゜д゜lll)


「いくらタイタス号でも、あのエレベーターシャフトを垂直に登るには、一人が精一杯。行きなさいピンク。地上に出るのはあなただけよ。あなたには大事な使命がある。アカシックの力で人々を救うという大事な使命が…」


「レ、レッドさんはどうするんですかっ!」


「心配いらない。何も死ぬつもりはないから。ただ私達には行かなければならない所があるの。」


「今ですか?!ど、どこへ…」


レッドさんが指をさした。ニトクリスの鏡を。


「あなた、ドリームランドに行った時、私達に似た様な化け物に出会わなかった?」


! あの時の記憶が脳裡に甦る。竹輪のオバケ、大いなる者ども、ノーデンスにハスター。皆、この人達とよく似た言葉使いをしていた。…いや、ブルーさんは違ったっけ?


「アレはね、本当に私達なのよ。私達の一部。私達の欠片。


あなたももう知ってると思うけど、私達はみんな、ドリームランドに一度は行った事があるの。アカシックにつながる為に。でも誰も成功しなかった。それどころか自力で戻ってくる事さえできなかったの。あなたと違って…。


数秘術的に最強の名前を持つ者を失う事は、漂流者の敗北を意味する。だから対策班はサルベージ作戦を決行した。外部から呼びかけて、彷徨う私達を引き上げようとしたのよ。


作戦は成功した。でも、タダでは戻れなかった。みんな何かを失くしていたの。人格、記憶、クセ…何か一部が欠けていた。だれがチャレンジしてもそう、結果は同じだった。数秘術とは何の関係もない参事官が挑んだ時なんかホント、狂気の沙汰だったんだから。」


いつの間にやら車から降りてきていた参事官とブルーさん。見た事ないくらいのショボーン状態…。


「だからね、私達はいつかあそこに戻らなければいけないの。失くしたモノを取り戻す為に。そしてそのいつかとは、今なのよ。」


「レッドさん…。」


「勘違いしないでよ。さっきも言ったけど、死ぬつもりはない。やり残した事をやりに行くの。でも自分達の力では戻れない…あなたの力がなければ…あなたが私達をサルベージするのよ。出来る?」


「…行きます!必ず迎えに行きます!」


「Good!」ニッコリ笑った。


そんな顔するんだ…。


と思ってたら、いきなり参事官とブルーさんの胸ぐらを掴んだ!


「わ!ちょっと待ってレッドさん!心の準備系が…!」レッドさんは笑顔のまま、ブルーさんをぶん投げた!悲鳴を残してニトクリスの鏡に吸い込まれるブルーさん。


「わ、私は行かんぞ…か、核爆弾が…核爆弾がなんだっ!そんなもん怖くないぞっ!私は艦と運命を共にするっ!」


「見ないふりは出来ないんですよ参事官。」依然、笑顔のまま参事官をぶん投げるレッドさん。「オイオイオイオイオイオイオイオイ…」参事官も悲鳴を上げながら消えていった。


後には二人だけ…「じゃあ私も行くわね。タイタス号は自動運転にしてあるから、あなたは何もしなくていいわ。壁を登って行くから、シートベルトだけはキッチリしてよ。」


「必ず…必ず…!」言葉が出ない。


「待ってるわ。迎えに来てくれたら、その時に、私の一芸を教えてあげるわね。」それだけ言ってレッドは鏡に飛び込んだ。




********************************************




ニトクリスの鏡を手に取る。


必ず迎えに行きます。


もう一度、僕は誓った。僕は使命感に燃えていた「爆破30秒前デス」


そう、爆破30秒前なんだ!………………………え?!(◎_◎;)


スマホを見る。30秒切ってる!


慌ててタイタス号に乗り込む!アクセルベタ踏み!ハンドルきって反転!扉が吹っ飛んだエレベーターに突っ込む!すぐ壁!ぶつかるっ!…らないっ!タイヤが膨らむ!壁にくっつく!そのまま上昇!仕組み判らんっ!いやそれはどーでもイイッ!登れっ!とにかく今は登れっ!あ!シートベルトしてないっ!





【ゼロアワー】




********************************************




その時、鈍い衝撃が走った!続けて凄まじい地鳴り!シャフト全体が揺れている!だが、走り続けるタイタス号!


シェルターの最下層部に設置された核爆弾が爆発した。フロアが下から順番に消滅していく。円錐形の建造物内が、焦熱地獄と化す。そして逃げ場を失った衝撃波が、エレベーターシャフトを駆け抜ける!


まだ出口は見えない。時間の流れがヒドくゆっくりに感じる。と、突然後方から何かに追突された様な衝撃が!


爆風…!


シートベルトをしていなかった僕は、凄まじい勢いでフロントガラスに激突してしまった。




そして、僕は気絶したー。






ー続くー

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