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欠ーその1ー

********************************************



僕は途方に暮れていたー。



見渡す限り生命の気配が感じられない荒れ果てた荒野。低く垂れ込めた雲に覆われた空は、何とも言えない圧迫感があった。身を切る様な冷たさの風が吹きすさび、孤独感が否応なしに高まる。名状し難い形の枯れ木がポツポツと立ち並び、それが更に寂しさを増長させる。


遥か彼方に目眩がするほどの巨大な山脈が連なっているが、何か人を寄せ付けようとしないオーラみたいなモノを放っている。いや、今の僕の状態では行く気にもなれない。


山の頂上に城らしき建造物が見えているのだが、例えあそこが出口だと言われても行ってみようという気が湧いてこない。


ただただ、途方に暮れるばかりであった。


そもそもココはどこなんだ?


カタカナ書きの標識があるにも関わらず、とても日本とは思えなかった。どっか…ヨーロッパ?的な寒々しさ…って、ヨーロッパの人が聞いたら怒るかな?などとどうでも良い考えしか浮かんでこない。


ひとまずこの標識に従って、「レン高原」若しくは「ウルタール」という所に行ってみるか。幸い道があるようだ。道があるという事は、その先に村なり集落なりあるのだろう。


…集落って…。


この雰囲気のせいで、そんな発想をしてしまう自分のネガティブさが嫌になる。


ブルーさんだったら、なんかガーッと行くんだろうなぁ、よく知らないけど…。


トボトボ標識の側まで歩き出しながら、何故かそんな事を思った。


「えーっと、どっち行こうかな…。」寂しさを紛らわす為にワザと声に出して言ってみた。


「レン高原ってのはないな~、高原だもんな~、行っても何もなさそうだもんな~、て事はウルタールか~、どの辺にあるのかな~、遠いのかな~………。」


ダメだっ!寂しいっ!


虚しく響く自分の声がより寂しさを際立たせる結果に終わった…。


頼れる者は誰もいない。何度も言われたけど…。


いやコレはイキナリ難易度高過ぎだって!


「ピンク?!ピンクじゃないかっ!」突然大声で呼び掛けられて、飛び上がる程驚いた!いや実際飛び上がった!慌てて辺りをキョロキョロ見回したが誰もいない。


「こっちこっち!」上空から虫の羽音の様な音と共に呼びかけてくる声が聞こえた。ハッと空を振り仰ぐと何やら名状し難い形の何かが舞い降りてくる最中だった。


それは、竹輪のオバケであった。


全長2~3m程の巨体に小さな羽が付いている。例のコウモリの様な羽だ。それを残像が残る位の素早さで羽ばたかせ、下半身から無数に伸びている触手をクッションの様に弛ませてゆっくり縦に着地した。


竹輪の頭頂部(?)に2本の触覚が生えているのだが、その触覚の先に目玉が付いていた。丸い形を包むまぶたをパチクリさせて、その目玉がグッと僕に近づいてきた。


「やっぱりピンクだ。お前こんなトコで何してる訳?」その異形ぶりよりも地獄の底から響いてくる様な声に僕は卒倒してしまった。




********************************************




「…おい!しっかりしろ!」ペトペトしたモノで頬を叩かれていた。あの忌まわしい声をフイに聞かされて気を失ってしまったみたいだ。相手もビックリした様子で心配そうに覗き込んでいる。


うわ…近づかないで!


何をコンセプトにしたら、こんなグロテスクなデザインが出来上がるのか?そんな生理的嫌悪感の塊で出来た的な生き物が僕に話しかけている。


気付けのつもりで足下の触手で頬を叩いているのだろうが、それよりもこの生き物が放つ強烈な生臭ささで目が覚めていた。ガバッと起きて即座に後ずさる。


「だ、誰?!だ…何だ!!!」何と言っていいのか判らず噛みまくった。


「は?俺だよ、ブルーだよ!もう忘れた系か?」


ブルーっ!………さん?


判る訳がない。目の前にいるのは怪物なんだから!しかし、こいつは僕の事を「ピンク」と呼んだ。この呼び名はほんの3~4時間前につけられたモノだ。あの場にいたのは参事官、レッド、ブルー、イエローだけ。参事官とレッドさんはまだプラクティスフロアにいる筈。イエローさんは…なんか思い出したくないハプニングがあって、い、い、いなくなった…ブルーさんは………!


「ブルーさん、ネクロノミコン読んでるんじゃなかったでしたっけ?」そうだ!どこにいるのかは知らないが、ブルーさんだって、まだシェルター内にいる筈だ!やっぱりこいつは…。


「あ、そうか!それも説明されてないんだな。本を読んでる時って、精神系の方はコッチに来てんだよ。」軽い感じで、しかし響きは地獄の底から聞こえてくる様な声で怪物が言った。


「はい?」


「言ったろ?子守唄を聞かせてるって。で、Cがちゃんと寝てるかどうか夢の中を見回るってのが、俺達の仕事な訳よ」触手をビチビチ動かしながら説明をする。「てかなんでそんなビビってんだ?」にじり寄って聞いてくる。


「そそそその姿はどういう事なんですかっ!」震える手で怪物を指差した。


怪物はキョトンとした後、両目をグネグネ動かして、自分の体をくまなく見ていたが、やがてこちらに向き直ると一言「何が?」とだけ言った。


「何がって…僕の知ってるブルーさんとは、あまりにもかけ離れた姿ですよ!」


「俺に言わせりゃ、お前のがよっぽどヒドイ系になってるぜ?」


「…僕?!」


「ああ、なんて言うのかなぁ…竹輪のオバケ?」それアンタでしょ!!!


「僕にはあなたがそう見えますよ!」


「ああ、そうなんだ。」そうなんだって…。


「ま、ココはドリームランドだからな。主観しかない世界じゃどんな事が起こってもおかしくない訳よ。一種の特異点?みたいな。」


もう限界…頭がパンク状態だ。何を言ってるのかサッパリ判らない。でも取り敢えず、こんな所で知ってる人?に出会えたのは良かった事として受け止めよう。少なくとも自分だけで何かをしなければならないという事は避けられそうだ。


『自分で決められない奴は、死あるのみ。』


またレッドさんの言葉が浮かんできたが、無理矢理押しのけた。今はその事は考えたくない。考えられない。


「取り敢えずコッチ来たんなら案内するよ。」声の響きは空恐ろしいモノがあるが、言い方はあくまで軽くブルーが先に歩き始めた。


この人、こんな感じだったかな~…。


「あ!てゆうか僕の姿が竹輪のオバケに見えるんなら、なんで僕だって判ったんですか?」


「え?だって、めっちゃキョドってる奴がいて、なんかピンクっぽいな~って思ったからカマかけてみたんだ。当たりだったろ?」


ーあぁ………(´・ω・`;)




ー続くー

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