決ーその1ー
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「………へ?」一度、後ろを振り返り、そこに誰もいない事を確認してから自分を指差した。「………僕ですか?」
猛烈に間抜けな表情をしているであろう事は自分でも判っていたが、話がもう政権交代並みに飛躍するので、まるっきりついて行けない。これはもう仕方のない事ですよね?という思いでレッドの顔を伺う。
「いちいちコッチ見んじゃないわよ!」
怒られた…。
「実を言うと、これも初めから計画していた訳ではないのだ。」理解してようがしてまいが、あくまで自分のペースで話を進めるナイアルラトホテプ。
「我が主はもっと具体的に、攻撃の手段として利用されるつもりだった様だ。ああ見えて敵の多いお方だからな、我が主は。特にそこのタコ頭とは因縁浅からぬ関係…おっと、お前には余計な情報だな。話を戻そう。
ともかく、私も我が主の意に沿う様な人間を育てていたつもりだった。そして人間の意識力は存在し得ないモノまで実体化させる程、強大になっていった。計画は順調に進んでいたのだ。ところがここで問題が起こった。対消滅だ。
確かに並行宇宙に於いては、同一の存在が同一の世界を共有すると、パラドックスが生じる。主観的思考が働くからな。矛盾を回避する為にもう一つ別の、言わば『言い訳の世界』が生み出されるのだ。
しかし、君達はその言い訳の世界に住みながら、更に言い訳を作った。対消滅という力技でもって矛盾を回避しようとしたのだ。全く…君達のこじつけには恐れ入るよ。
だが、皮肉な事に、我々が求めた力はこの対消滅にも作用してしまった。二つの意識体が実体化すれば、対消滅も現実のモノとなってしまう…。
今までの私なら、宇宙の一つや二つ、消し飛んだところで何とも思わなかったろうが、この『閉じた宇宙』は特別だった。失うにはあまりにも惜しい世界だった。そこで計画の変更を余儀なくされた訳だ。
この世界を対消滅の危機から救う。当初の思惑とは違う、しかし、なるべく我が主の意に反さない形…3つ目の要素を組み込む事で、中和を目指した。そう、お前だよピンク。
お前が二つの意識と融合する事により、新たなマルチハイブリッド邪神としてこの世界に君臨するのだ。何故そう思ったのか自分でも判らない。我が主の思し召しとしか言いようがないのだが、このアイデアは実に合理的だった。
矛盾をはらんだ世界に安定をもたらす訳だ。恒久的な安定。『閉じた宇宙』なんだからな、ここは。外野の影響を受ける事は一切ない。完璧な温室だ。
この世界を得る事により、我々は外宇宙に対して様々な戦略を練る事ができる様になる。潤沢な資源、人間を使って。なに、心配はいらんさ。何しろ君達人間は何にでもなれるのだ。
ピンク!お前が率先してそれを執り行うのだ!恐怖を生み出せ!恐怖こそ無尽蔵のエネルギー、究極の永久機関!それを全宇宙に知らしめるのだ!」
あぁもうワケ判んない!銀河を越えてイスカンダルへ行くくらい途方もなさ過ぎて理解出来ません!
しかし、レッドだけは相変わらず話に喰らい付いていた。半笑いのまま。
「お言葉を返す様だけど、あんたこいつの事買いかぶり過ぎよ。確かに、言えばなんでもやりそうなタイプではあるけどね。でもそれだけ。1時間以上、炎天下の中でボーッと突っ立ってる様な奴よ。恐怖を生み出す?ないない!こいつは天然でドMなのよ。恐怖を感じる事はあっても、与える事なんて絶っっっ対にないわ!」
えぇぇ~( ̄◇ ̄;)
全力で僕の存在が否定されたが、ナイアルラトホテプはと言えば、全く涼しい顔をしていた。「そうか?私はそうは思わんがな。」
レッドの後ろを見る。
視線の先で悲鳴が起こった。
職員の集団がざわついている。
誰か一人を取り囲む様な形になっていた。
その人物は皆と同じく黒いスーツを着込んでいたので、C対策班の職員である筈なのだが、明らかに違うところがあった。
顔が魚の様になっていたのだ。
ー続くー




