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【同じ空の下で生きている】

いつかこの日々を愛おしく思うでしょう

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/08/04

 

 その日、僕は求婚された。

 見目麗しい少女に。

 夜の月明りに照らされた古城の上で。


「お願い。私と結婚して」


 微かな震え声。

 だけど、有無を言わさない雰囲気。

 ――まったく、自分勝手なんだから。


「ごめん。結婚する気はない」


 だからあっさりと断る。

 すると少女は目に涙を浮かべて問う。


「どうして!? どうして……あなた、私のこと好きなんでしょう!?」

「うん。大好きさ。君と結婚したいくらいに」

「ならなんで……!」


 僕は首を振る。

 少女が耐え切れずに泣き出した。

 そんな小さな体を僕はそっと抱きしめる。


「私には……! 私にはもう時間がないのに……」

「僕はまだまだ生きるよ」

「短すぎるよ――! 私に比べたら」


 分かっているよ。

 吸血鬼である君は死ぬことも出来ずに永劫を生きる。

 対する僕は限られた時間しか生きられない。


「お願い……愛しているのなら、その形を……少しでも長くその形が欲しいの」

「今は答えられない」

「なんで……どうしてなの……?」


 君の言葉に僕は首を振る。

 ――言っていただろう?

 君は永劫を生きた故に生物の感覚を失いつつあるって。


 だから、きっと。

 その焦燥も失望も――絶望さえも。

 君は久方振りに感じるものなんだ。


 ならば、今。

 僕は君にそれを存分に楽しんでほしい。


 僕は知っているよ。

 吸血鬼である君は僕をいつでも眷属に出来るって。

 望むなら永遠を共に生きることだって出来るって。


 だけど、君はそれをしない。

 それは僕を愛しているが故だ。

 ……そして、今感じているその苦しみも。


 僕は心に決めていた。

 今際の際に君の眷属になることを。

 君に眷属にしてもらうことを。


 これはハッピーエンドが確定してる物語なんだ。

 だから、君は道中の苦しみを存分に楽しんでほしい。

 だって、いつか君は――いや、僕らはこの日々さえも懐かしむことが出来るだろうから。

 共に永遠を生きる中で。

 きっと。




 ――数十年後。

 君と同じく不老不死となった僕は『ネタばらし』の末、死なないことを良い事にボコボコにされることになるのだが、それはまた別の話だ。


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