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アバンとコウリンラン

「紫のエキスのことなんだけど」


とミロクは言い、研究室に来て欲しいと言う。アバンは


そのままではいけないので小さくなる様に、薬を飲み


解除薬を飲んだ。すると可愛いアバンが現れる。そして僕


たちはミロクについてミロクの研究室に向かった。初めて


入る研究室にびっくりする。とても、きれいに整理整頓


されていて、木箱を、上手に使って本棚ぽくしてあったり


作業台とかも岩を削って作っている。これをミロクが自分


で全て作ったのだとしたら凄すぎるんだけどと思う程


だった。僕は思わず聞いていた。



「ねえ、ミロクこの部屋にある物は全部、自分で作った


の?」



と言うと



「まさか。実験道具は国を出る時に持ってきた。まあ、


古い物さ」



という。どう考えても持ち運びできそうにない程デカイ。


やはり気になって聞いた。



「これ、どうやって運んできたの?」



と言うと、ミロクはいつも持っている鞄を見せて



「これさ」



と言った。



「この中にある程度のものならしまえれる。で、好きな時


に取り出せばいい。まあ、無限って訳ではないから容量に


応じてにはなる。でも、今この洞窟にある物全てくらい


なら充分入ると思う」



といった。えっーー、本当にあるんだ。よく異世界漫画で


みる収納ボックスみたいなのが。僕は感動していた。


すると



「これをみて欲しい」



とミロクは抽出したという紫のエキスを見せた。とても


綺麗でキラキラ光っている。でも極端に量が少ない。



「他の色も全部、抽出してみたんだけど、紫は貴重なの


かな。とても量が少ないんだ。他と比べても、ほら」



とミロクは言い、七つの試験管のようなものに、七色の


エキスが、入っている。右から、赤・オレンジ・黄・緑・


青・藍・紫と並んであるが確かに他の色より少ない。



「やっぱり、それだけ貴重な物なのかな」



と僕が言うと



「そうかもな。これは持って帰ってきた半分くらいでこの


量なんだ」



とミロクは言う。あと半分とったとしても単純にその倍


だとしても、ドラゴンがペロッと舐めたら、もう無いと


いうか舐めたことすらわからないのではと思う。それで


効力があるのか。例えば、赤色が200mlのコップに


ナミナミだとしたら、紫色は御猪口(おちょこ)の半分くらい程度かな。


でも、例えだらから実際はもっと微々たるものである。


でも、どれもキラキラ光って凄く綺麗だ。ミロクは



「ボクのやり方がよくないのかな。もしかしたら、もっと


効率の良いやり方があって大量に取れたりするのかな?」



と言っている。すると、今まで黙っていたアバンが



「大丈夫だと思うよ。ほんの僅かでも効力はあるって長老


が言ってたの思い出したよ」



と言うとミロクは



「よかった。じゃあ後のも抽出してしまうよ」



と言った。僕とアバンは広間へ戻る。そして僕はアバンに


言った。



「ねえ。アバン、長老はどのドラゴンか本当にわからない


って言ってたの?」



というと



「…………」



と何も答えない。この様子を見て、何か只事ではないと


思った。僕はミロクを呼びに研究室に戻った。作業を


止めたことを謝り、アバンの様子がおかしい事を告げ一緒


に広間にきてもらう。アバンは何か考え込んでいる様子


だった。



「アバン、本当の事、話してくれないか? ひとりで


かかえこむより、みんなで考えよう」



と僕は言った。



「何をひとりで悩んでいるんだ!! ボクたちは、親友で


仲間だろ!! お前が悩んでる時に聞いてやれないなんて、


ボクは嫌だ」



とミロクが言った。すると、アバンは、意を決した様子


で、実はと語り始めた。


あの日、ドラゴンの国の長老に会った日、真実を聞いた


のだという。長老の話は、一万年に一匹、ドラゴンの国に


平和を好む、穏やかな性格のドラゴンが生まれるという。


そのドラゴンは覚醒するとピンクゴールドの光を放つ


ようになると。そのドラゴンは目的があって生まれてくる


のだと、その目的とは、一万年に一度、森にツボギや


ガルトリという邪気で正気を吸い取る植物が芽を出す。


その邪気にあてられるとだんだん正気を失いいずれは死に


至ると。それを阻止する為に一万年の周期でコウリンラン


の開花とドラゴンの誕生があるのだと。それには問題が


ある。そのドラゴンがコウリンランの紫のエキスを摂取


する事で紫の光を放ち邪気を取り除いたり、そのツボギや


ガルトリの駆除が出来るが、そのドラゴンは邪気に蝕まれ


消滅する可能性があるのだという。そして、その消滅する


可能性を阻止する方法は今のところないと言われたと。


言い伝えはそこまでで詳しい詳細がわからないのだと


いう。僕たちは何も言えなくなった。どう言っていいのか


わからないのだ。こんな時こそもう一人の僕という奴が


出てきて何か解決しないのかよ!! と思ったが出てくる


気配がない。するとアバンが口を開いた。



「ぼく、覚悟したつもりだったんだ。ふたりに言わず、


最後まで全うしようと。だって、ぼくには生まれてくる


目的がちゃんとあったんだから。それをしない訳には


いかないでしょ。それでみんなが救われるなら……」



と言い黙り込んでしまう。



「そんなのおかしいよ!! アバンが消滅する必要なんて


どこにもないじゃないか。紫のエキスはあるんだ。他の


方法を考えよう!!」



とミロクが言った。僕はまやかしの森での最後の


〝自己責任〟という言葉が思い浮かんでいた。なんで、


あんな時にそんな言葉を言うのか。紫のエキスを摂取する


事で生じる諸々(もろもろ)の事〝自己責任〟って事だったんだと


思った。僕は言いづらい事を口にした。



「たぶん、それは無理だと思う。邪気をはらうには


コウリンランとピンクゴールドの光を放つドラゴンが


セットなんだよ。だとしたら、紫のエキスだけでは村人を


助ける事は出来ない」



と言うとミロクが僕に掴みかかってきた。



「何言ってるんだ、お前!! アバンが消滅してもいいの


かよ!!」



「僕だって嫌だよ!! なんで助けてあげるものが助けた後


に死ななきゃいけないんだよ。そんなの絶対おかしい


だろ!!」



と言うとミロクは



「そうだよ、そうなんだよ、なんでアバンがこんな目に


あわなきゃいけないんだよ……」



と泣きながらそう言った。



「何か、方法があるはずだよ!!」



と僕は言い、続けて



「一つ、ずっと、引っかかってるんだけど……」



と言い、ミロクとアバンに僕の疑問をぶつけた。すると、


アバンが



「ぼく、もう一度、長老の所に行ってくる」



と言った。ミロクも



「僕も色々調べてみるよ」



と言った。



「でも、時間はない村人の事もあるから…………」



と僕が言うと



「…………うん」



とふたりは答えた。そして、ミロクに聞いた。



「ねえ。僕だけ一旦戻ると時間軸、おかしな事になる?」



と聞いたら



「どうして戻るんだ?」



「いや、弥玖が何か知ってないかなと思って」



「あいつに話すのか!?」



「いや、詳しくは話さないよでも、何かヒントになる


ような事、知ってないかなと思って…」



「そうだな。もし、あいつが猫の国の誰かだとしたら。


猫の国の奴らは情報だけは人一倍集めるのが得意な奴らが


多いから何か知ってるかもな」



とミロクは言い続けて



「でも、お前が帰るのは少し待て。アバンが長老の所に


行って帰ってくるまでこっちにいろ。今帰るとこっちが


少し先に進む。今、こっちの時間をあまり進めたくない。


それにお前でもこっちで出来ることがあるから、それを


しててくれ」



「うん、わかった」



「とりあえず、ボクはアバンと一緒にドラゴンの国まで


行ってくるから、ここで待っててくれないか? その時に


頼みたい事がある。ちょっと待ってろ」



と言いミロクは広間から出ていった。アバンは自分の部屋


で何かしている。すると、しばらくして帰って来たミロク




「これを使って調べモノをして欲しい」



と白いハンカチより大判の布を渡された。そして、ミロク


は鞄の中から大量の本を取り出した。



「これはボクが生まれた国を出る時に持ってきた本なん


だけど、色々な言い伝えや歴史的なものが書いてある。


その中から今回に関連したり、お前が見て気になる事を


見つけて欲しいんだ。で、この布が役立つ。こっちの白い


布を本にあたるとお前の言葉になる。この布を反対にして


茶色の方を本にあてると元に戻る」



と言いミロクは試しに1冊白い布を本にあててみた。


すると表紙に書かれている意味がわかる。ページをめくる


と僕の世界の言葉に、なっていてスラスラ読める。凄い、


こんな便利な物があるんだと感心した。



「頼んでいいか?」



とミロクは言った。



「うん、もちろん。ありがとう。向こうに帰りたかった


のはこっちにいても自分にできる事がないのが嫌で……


だから、ありがとう。僕にする事を言ってくれて」



「そっか、それで帰るって言ってたんだな」



とミロクは言った。



「うん。本当にありがとう」



と僕は言った。すると、自分の部屋にいたアバンが出て


きた。



「これ」



と僕に2冊の本を渡す。僕はビックリした。ドラゴンも


本を読むのかと思った。どうやって読んでるんだろう。


相当不思議そうな顔を僕はしていたのだろう。アバンは



「風を操って読んでたんだ」



と言い風を操り、器用に1枚1枚めくってみせた。



「凄い!!」



僕は感心して言った。



「ねえ、ミロク。このアバンの本もこの布で僕に読める


ようになる?」



と聞くと



「たぶん。やってみな」



と言われ1冊の本に白い布の方をあてた。すると、確かに


読めるし意味がわかる。僕はどんどん楽しくなって


いった。



「ミヤ、これに何かヒントがないか見て欲しい。頼んでも


いい?」



「うん。わかった」



「じゃあ、行ってくるよ」



とアバンが言った。



「ふたりとも気をつけてね」



と言うとミロクが



「ああ、お前もムリするな。ボチボチでいいぞ」



と言った。



「うん。ありがとう。わかった。いってらっしゃい」



と僕は言った。

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