僕のぶれぶれの思い
すると、しばらくしてドアをノックする音がする。
「はい。どうぞ」
とリラが言うとドアが開きそこにはジシが立っていた。
「どうしましたか?」
とラクリーレが聞いた。すると
「ルクさんにお花の事で聞きたいことがあるのですが…」
とジシが言った。すると、ルクがリラを見る。
「いいですよ。いってあげなさい。ゆっくりしてきていい
ですよ」
とリラが言うと
「ありがとうございます」
とルクとジシが揃って言い頭を下げた。すると
「リラ先生、私もノンに頼みたいことがあるのですが、
ノンを連れて席を外してよろしいですか?」
とラクリーレが言った。
「ええ。構いませんよ。みなさんもよろしいですか?」
と僕たちに聞く。
「はい。構いません」
とミロクが代表して答えてくれた。そして、
「ありがとうございます」
とラクリーレは言い、ノンを連れて部屋を出て行った。
そして、僕は今がチャンスとばかりに気になっていたこと
を話すことにした。
「あの、ここに来る途中に見た建物がとても珍しかったの
ですが」
と言うと、ミロクが、えっ、そこ?っていう顔をして
こっちを見ていた。わかってますよ。でも、ストレートに
聞くにはリラが異世界(僕の世界)を知っているっていう
確信が欲しかったんだ。すると
「あれですか。あれはこの世界の建物ではありません」
とあっさりを答えた。そして続けて
「あれは私のパートナーであるラクドラルの住んでいた
世界の建物です。あなたもご存知……」
とリラはそこで言葉を止めた。やはり、僕の世界の事を
知っていると確信が持てた僕はこう聞いてみた。
「癒しの棲家の方たちはラクドラルさんの住んでいた世界
の事はご存知なのですか? それともその事を知っている
のは一部の方だけなのですか?」
と僕が言うと
「そうですね。ラクドラルと接点のあったものは知って
いると思います。彼はかなり積極的にそんな話をして
いましたから」
と言った。そうなんだ。ラクドラルは僕のように何かの
キッカケでこちらにきたのか、それとも転生してこちらに
来たのだろうか。どこまで聞いていいのか、僕は迷った
が、少し冷静に考えてみた。僕が本来聞きたい事は、ルク
とノンに話すかどうかと言う事だった。すると
「ルクとノンはラクドラルさんの住んでいた世界の事は
知っていたのですか?」
とアバンがストレートにリラに聞いた。僕は何となく
聞ければいいかなと思っていたのだが。まあいいか。
とリラの答えを待った。
「そうですね。ふたりはラクドラルに可愛がられて
いましたから、話を聞いていたかもしれませんね。私が
一緒の時にその話をしていたのを聞いた事はありません
が」
とリラは言った。そして
「ただ、ラクドラルはよく自分がいた世界の猫たちはこの
世界の猫のように魔法を使ったりしゃべったりしていな
かったと。一部の人間には下等生物のようにみられていた
と。この世界の猫の方が人間とも種族の違いだけで生き
やすいよと言っていました」
とリラは付け加えて答えてくれた。確かにそうだ、僕の
世界では猫を自分たちと対等に扱い人は少ないだろう。
中には命を軽んじているものもいる。ラクドラルは僕の
世界でも猫だったのだろうか。でもそうだとしたらあんな
建物が建てれるだろうかと不思議に思った。じゃあ、もし
ラクドラルからそう聞いていたとしたら僕の事をルクと
ノンは良くは思ってくれないかもしれないと思った。
するとミロクが
「リラ様はミヤの事気づかれていますよね」
とアバンに続きまたまたストレートに聞いた。僕はあや
ふやにしたかったのに……多分、僕の意図を汲んでくれて
リラも言葉を飲んでくれたのに……ハァー。まあ、仕方
ないか、と僕はもう諦めた。リラは僕の顔を見てどう答え
ようかと考えているようだった。いやいや、もうハッキリ
と僕は異世界人だと言ってるようなものだけど。僕は覚悟
を決めて
「リラさん」
と言うと
「無理に言わなくていいです。あなたの気持ちはまだ
固まっていない。そんな状態では後悔するだけです。
どうしたいのか自分にしっかりと問いかけてみて下さい」
とリラは僕に言った。結局何も考えがまとまらないまま、
僕たちは帰宅する事になった。でも、ルクとノンはとても
楽しい時間を過ごしたらしくとてもイキイキとしていた。
そして僕は一旦、ミロクと共に僕の世界に戻る事にした。
さんにんで相談して今回はふたりで仕事の依頼されていた
ので結果を依頼者への報告する為に洞窟をしばらくあける
いう設定で僕の世界に戻る事にした。僕の中の奴の声は
何だったのかよくわからないままだった。リラのいう、
どうしたいのか自分に問いかける。僕の中で堂々巡りを
繰り返すだけだった。ルクとノンにしばらく留守にするの
でアバンを頼むというとふたりは任してくださいと心強い
言葉を言ってくれた。そう伝えた日の夜中に洞窟の僕の
世界につながるアーチから僕の世界へ戻った。
戻った日の夜、僕たちはおばあちゃん家の庭で
バーベキューをし、この前両親たちが買い物に行った時に
買ってきてくれていた花火をする事にした。ミロクは花火
を見て驚いて家のどこかに隠れてしまった。弥玖には、
両親やおばあちゃんに気づかれないようにルクとノンの
現状を報告した。まだ聞かれてないので、違っていたこと
も言っていないと伝えた。それを聞いた弥玖の表情が
ホッとする母親の顔に見えてびっくりした。
それから僕は1人で線香花火をしていた。それを
おばあちゃんが側に来てその様子をジッと見ていた。
「おばあちゃんもしようよ」
と言うと
「そうね」
と言い2人で線香花火をした。すると
「幹生が、この家を出ておじいちゃんと2人になって
から、おじいちゃんが毎年夏になると線香花火を買って
きてくれて一緒にしてたのを思い出すわ」
と言った。
「おじいちゃんっておばあちゃんのこと大好きだったんだ
ね」
と僕が言うと
「そうね。おじいちゃんはいつも私に自分の気持ちを
ストレートにぶつけてくれていたわ。良い事も悪い事も
包み隠さず。最初は戸惑ったりそんなことまで言わなくて
いいのにって思っていたけど、ある時おじいさんに
どうしてって聞いたの。そしたら、ワシはお前を信じて
る。どんなお前でもワシはお前を大切に大事に思うし
信じているんだ。そして、ワシがワシらしく、お前がお前
らしく一緒にいられたら良いと思っているって。お前が
わかってくれないかもと最初から決め付けたくもない。
お互いに受け入れ難い事もあるかもしれない。でもお互い
に歩み寄る姿勢があればお互いの着地点は見えてくる
だろう。それにどんな結果になろうとワシはお前と新しい
関係を築いていけると思っているって言ってくれたの」
とおばあちゃんはおじいちゃんの言葉を教えてくれた。
そうか、言わない方は相手を守ることと思っていたけど、
自分が傷つくことを恐れていたことでもあるのかも
しれないと思った。何が正解なのかは人それぞれなんだ。
僕には僕の。みんなにはみんなの。伝えることは今の関係
より新しい関係が築ける事にもなるんだ。正直に話す事は
相手を信頼していないとできないこともある。どんな結果
になろうが自分が自分に責任を持つ覚悟があるかどうかな
のかもしれないと僕は思った。
「おばあちゃん、ありがとう」
と僕は言った。
「どうしたの? ミヤの中で何かあったの?」
とおばあちゃんに聞かれた。
「うん。でも、おばあちゃんの話を聞いてなんとなく
どうしたいのかわかった気がした」
と僕が言うと
「それは良かったわ。でもこれはひとつの考え方よ。
これが全てでも答えでもないの。十人いれば十通りの答え
がある。その人の答えがあるのよ。それには腹を決める。
自分に覚悟が必要よ」
とおばあちゃんは言った。
「うん」
と僕は言った。そうかアイツが言っていた 〝年長者〟
とは、おばあちゃんのことだったのかもしれないと
思った。今日は両親が久々に2人きりで遅くまで花火を
楽しんでいた。僕たちは先に寝る事にした。
そして、明くる日僕とミロクは両親がまだ寝ている間に
アバンとルクとノンのいる異世界に出かける事にした。
弥玖はミロクにとても丁寧にお礼を言っていた。それから
これからもふたりを頼むと頭を下げていた。弥玖のその
態度にミロクは少し戸惑っていたが素直に
「わかった」
と言っていた。そして僕は弥玖に僕の事をルクとノンに
どうするか伝えた。そしたらお兄ちゃんの思うように
すればいいと言ってくれた。




