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アバンとの再会

 明くる日、僕は早速、弥玖(みく)に助けられた。


弥玖は朝からグズリ、母にベッタリついて離れない。


父と母に甘えている。僕はチャンスだと思い一人で遊びに


行ってくると言った。すると、おばあちゃんがお弁当と


飲み物を持たせてくれた。おばあちゃんが畑に行く


タイミングでミロクと共に家を出た。


弥玖はそのタイミングで、わぁーわぁーとグズっていた


為、両親が2人がかりでなだめていた。


ありがとう、弥玖。僕は心の中でそう思い家を後にし、


ミロクの後をついて行った。




 今日のミロクはおばあちゃんの周りをウロウロすること


なくすんなりと森へ入っていく。でも、すぐに横道に


それる。昨年とは道が違う。僕は不思議に思いながら


ミロクの後を追いかけていた。すると、おばあちゃん家の


母屋の横にある倉庫へ辿り着いたのだ。


ここは、小さな倉庫と大きな倉庫がくっついている。


小さな倉庫にはおばあちゃんが外で使う物や頻繁に使う


ような物をすぐ使える様においている。大きな倉庫には、


おじいちゃんが生きていた頃に使っていた物や農機具など


今はもう使わないような物がしまわれている。


その大きな倉庫にミロクは入っていった。その倉庫は広い


一階の上に二階がある。その二階には父が幼い頃に使って


いた物や学校で作った作品や昔、生活で使っていたような


ものや凄い古そうな木の箱に入った物とかもおいて、


あった。その一角にあのバラのアーチがある。


それはミロクにしか見えないというアーチ。アバンがいる


異世界につながっている装置である。これはミロクが


作ったものだと昨年教えてくれた。僕は小声で



「ねぇ、どうしてここにあるの?」



とミロクに聞いた。すると手を頭にのっけてなかったので


ミロクは



「ニャー」



と鳴いた。あっ、そうだった。僕はミロクの頭に手を


のせて思念で話してみた。すると



「まあ、とりあえず向こうに行こう。アバンも待ってる」



といい、ミロクはアーチへ入っていった。昨年より5cm


ぐらい身長は伸びているし少し体も大きくなったので、


あの棘に、チクチクされるのを思い出し入るのに抵抗を


感じた。でも、意を決して入った。あれ? なんでだろう、


痛くない。僕は、気にせずスイスイとミロクの後をついて


行った。凄い!! ミロク改良してるじゃんと思った。


なので、あっという間に、あの懐かしの洞窟の一室へ


着いた。僕はリュックを下ろしたつもりだったが、


リュックがこちらの世界の仕様になっている。白っぽい


布のたすき掛けの鞄に変化している。鞄から折りたたみの


長方形の鏡を出して自分を見た。すると、昨年より少し


成長しているように見える。服装も靴もこちら仕様に


なっている。辺りを見回した。昨年と変わらないが、


木の箱のような収納が増えている。荷物が増えたんだなぁ


と思った。そして、ミロクがいないのに気がつく。



「あっ。アバンの所に行ったんだなぁ」



と声に出して言った。その声は、聞き覚えのある異世界


での僕の声だった。僕はミロクとアバンのいる一室へ


行った。久しぶりだなぁと思いながらそこに行くも広い


その空間には、ミロクもアバンもいない。すると、ミロク


がスッーと現れた。消えていたんだと思った。



「ミヤ、おかえり。ボクたちの世界へ」



と言うと、姿が見えないのに



「ミヤ!! おかえり。また来てくれて嬉しいよ!!」



とアバンが言うとスゥーと姿が現れた。



「あっ、アバン、小さい!! またあの薬飲んだの?」



と聞くと



「うん。でもね、消えたままでも声が出せるように


なったんだよ。ミロクが改良してくれたの。小さいのは


そのままにしてって、ぼくが頼んだんだ」



と嬉しそうに言った。


自慢気なミロクと嬉しそうなアバン。ふたりの姿を見て


嬉しくなった。



「あっ、思い出した。昨年、僕の世界にアバンいたよね。


どうして?」



と言うと



「これのお陰だよ。この薬で小さくなれたことであの


アーチをくぐれるようになったんだ。何故だかわからない


けど、あっちにいる間は小さいままなんだ」



続けて



「でも、こっちに帰ってきたら、大きく戻る。だから、


こっちで8時間待たなくてもあっちに行ってこっちに


帰ってきたらすぐに大きく戻れることが、わかったの。


それにぼくの体に何の異変もなかった。()()()


いったのに」



とアバンは言った。



「へぇ、そうなんだ。でもよかったね。じゃあ、姿消した


まま僕の世界に行けば、ずっとミロクと一緒にいられる


ってこと?」



「うん、そうだよ。それにこっちで勇者や魔法使いが、


来た時には()()()に避難できるんだよ」



と言った。なるほど、そうすれば事がおさまるまで避難


できるってことか。でも、昨年のあの時、アバンは姿を


現していた。人に見つからずにどうやって帰ったのか。


その疑問をぶつけてみた。



「昨年、見送りに来てくれた時、アバンは姿見えてた


でしょ。あの後どうやって帰ったの?」



「それはこれだよ」



とミロクが常に携帯している鞄からバラのアーチを見せて


くれた。そして



「携帯できるってこと?」



僕が言うと



「うん」



「じゃあ、今さっき、通ってきたのも携帯ならすれば


いいんじゃないの?」



といったら



「うん、いずれはそうしたいけどやっぱり、1つか2つは


固定したものがあると何かあった時に助かるからね」




と言う。



「えっ、じゃあ、今さっき、通ってきた所は新たに設置


したの?」



「うん。前の所もあるよ。でも、こっちは1ヵ所。


あの一室にあるだけだよ。こっちから、あっちへ行くのは


通ってきた所に出るだけだから。帰りはさっきの倉庫の


二階に戻るんだ。でも、これには秘密があって、以前のは


夕方に向こうに戻る。でもさっきのはある程度時間を設定


できる。今日は夕方にしてきたけど、昼でもOKになった。


朝とか夜中でも大丈夫だと、思うけどそれはさすがに


おばあちゃん達に心配させることになるからしないけど」



と言った。



「昼にあっちに帰るにしても、こっちでは何日も過ごせる


の?」



「うん、大丈夫。いろいろ試してみた」



「でも、どうしてそんな事が出来るようになったの?」



と言うとミロクが



「ボクの実力」



とドヤ顔で言った。



「イヤイヤ、そう言うのはいいから」



と言うと、ミロクはふくれ気味で答えくれた。



「こっちの植物でトキジソウって花があるんだ。とても


綺麗な半透明の植物なんだけどそれをバラのアーチと融合


させてみた。そしたら戻った時、夕方じゃなかったんだ。


それで何度も行き来してみて、気がついたのが、バラの


アーチの花の開花の数で、(7じ)(12じ)(17じ)(22じ)夜中(2〜3じ)と言う感じ


で移動できることがわかったんだ」



「凄いね。そのトキジソウって花はすぐに手に入るの?」



「いや、とても珍しい花で、ある一部の場所でしか群生


しないんだ。ボクらで頑張ってとってきたんだよ」



「ぼくも一緒に行ったんだよ」



と嬉しそうにアバンも答えた。



「それはどうしてわかったの?」



と僕はミロクに聞いた。すると



「それはボクが生まれた国を出る時に持ってきた、三毛猫


に代々伝わる秘伝の書を書き写していた本があるんだ。


それにトキジソウの事が書いてあって試してみたんだ」



と言う。僕は



「代々伝わる秘伝の書を書き写していいの? それって、


持ち出し禁止とかじゃないの?」



と聞いたら



「それは、三毛猫のオスに生まれた者に、与えられている


特権らしい。だから、自分で書き写せば自分の物になる。


でも、それを自分の為や他者の為に、と言っても純粋な


気持ちで使うなら、国を出る時に持って出ても、国を出た


後に使っても構わないんだ。そして、それに自分で研究


して見つけた事を書き足していく。研究ノートにもなる。


そして、その者が亡くなった後はそのノートの研究は


元の書に自然と書き写されるらしい。そうして、代々の


三毛猫のオス達は魔法の力を上げていっていたんだ」



と言った。そして



「ただ、人を騙したり、悪いことに使うとそのノートに


書かれている事は消えてしまう。もう二度と使えなく


なる」



「三毛猫って大変だね。いろんなことに制限がある


じゃない」



と言うと



「正しく学んで、正しく使えば、何の問題もない。ボクに


とって研究は純粋なものだから」



とミロクは言った。根っからの研究好きなんだなぁと僕は


思った。


すると、今度は、アバンがその “トキジソウ” を取りに


行った時の話を僕に聞かせてくれた。とても嬉しそうに、


楽しそうにアバンは僕に語った。そしてその話が終わると


僕は本題に移った。

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