リンモーゼと猫の国ニャータル王国
「どうして、ボクが一つ目の崖の横穴をやめたほうがいい
って言ったかといえば、みんな察しはついているだろう
が、アイツは今も猫の国ニャータル王国に住んでいて幹部
である職についているからだ」
とミロクが言った。そして
「アイツ自身は、いい奴だとボクは今でも思っている。
以前はそんな事はしてなかったが、今は国外で活動する時
にはどんなに幹部であっても偵察部隊がついているんだ。
だからあの時もアイツの意思とは別に偵察部隊がいた。
それも本当に気づかれないように蚊やハエ、蜂などの
小さなものに変化してついてきている」
とミロクが言った。
「じゃあどうして、消える魔法を解いたの? それに僕たち
の存在も明かしてしまったら後々大変な事になって
しまったりしないの? それに」
と僕が言うと
「ミヤ……」
とアバンが僕をたしなめた。ミロクは俯いて黙っていた。
「本当にすまない。その件については本当に申し訳ないと
思ってる。あの横穴の奥でアイツを見つけた時、アイツの
助かる確率が本当に低かったんだ。全身骨折している上に
出血も酷かった。ボクはアイツを助けたい一心で元の姿に
なり治療を施した。それで、アイツが意識を取り戻して
嬉しくて色々話してしまった。でも、話をしているうちに
アイツの様子がおかしい事に気がついた時には、みんなの
事も話してしまっていたんだ。友達達と一緒にここに
来たんだって。お前はどうしてここにいるんだって」
とミロクは言った。そしてミロクはまた続けた。
「ボクとリンモーゼは昔から何か内緒の話をする時は思念
を送って話をしていた。その時も普通に話しながら思念で
彼から偵察部隊の事を教えられた。その偵察部隊は声だけ
が聞こえるのか、それとも映像もみれるのかはわからない
と言われたから、急に何も喋らなくなるのも言ってたこと
を見せないのも偵察部隊にこちらが気づいていることが
バレてしまうと思いみんなの魔法を解いた」
とミロクは言った。
「それでその偵察部隊に僕たち事を知られてしまうと今後
どうなるの?」
と僕は言った。すると
「たぶん、ボクたちの事を調べ始めるだろう。何かの時の
為に情報として定期的に調べにくる」
とミロクは言った。それは困るし大変だ。
「じゃあ、これからどうするの?」
と僕は言う。ルクやノンも不安そうだ。アバンも少し不安
そうに感じた。
「ボクだってそれは困る。リンモーゼにだけなら悪用は
しないし国への報告も伏せてくれるだろう。しかしその
偵察部隊はそうはいかない。それでボクとリンモーゼは
考えたんだ。どうしたらいいか」
「で、どうしたの?」
とアバンが言った。ミロクは横穴の奥でリンモーゼに
話した辻褄を合わせる為に消える魔法を解いて僕たちを
見せた。その時点ではどこに偵察部隊がいるのかわからな
かった。なので、リンモーゼに横穴をついてまわることを
促した。すると、偵察部隊が姿を現した。僕たちを一人
一人記録に残そうとしたのか調べたかったのか小さな虫が
みんなの周りをクルクルとまわっているのにミロクは気が
ついた。そして、見終わった後、ミロクはリンモーゼと
かなり近い距離で話をしたするとその話を聞こうと小さな
虫がミロクの前にやってきた所を捕まえたのだ。
「凄い、ミロクそれでどうしたの?」
とアバンが興奮気味で聞いた。
「すぐに魔法で眠らしたんだ。それから記憶の書き換えを
した。この間、癒しの棲家でリラ様の詳しいやり方も
聞いていたし、自分が知っているやり方もあったから、
合わせて使ってみた。リンモーゼが怪我をしてからあの
横穴を飛び立つまでの記憶を消して新たな記憶に差し替え
た。そして、リンモーゼの背中に乗っけて一緒に飛んで
いったんだ。途中で目が覚めてると思う。だからボクたち
の事を知っているのはリンモーゼだけだ。それでも、
ボクにはリンモーゼは友人だから信じれるけど、みんなに
とっては猫の国の幹部に過ぎない。本当に申し訳なかった」
とミロクは僕たちに頭を下げた。すると
「ぼくはミロクの事を信じてるからそのミロクが信じて
いる友人ならぼくも信じるよ」
とアバンが言った。
「はい。私たちの事を守るべきものから守ってくれている
って事ですよね。私もミロクさんを信じます」
とルクが言うと
「オレも」
とノンが言った。そして、みんなが僕の方を見る。僕は
みんなの視線が痛かったけど、厳しい事を聞かずには
いられなかった。
「前にミロクが教えてくれたよね。記憶の書き換えを悪用
したら使った者は消されるってミロクは消されたりしない
の? だって書き換えをした偵察部隊の者にとっては精神的
に辛い経験ではないでしょう」
とミロクに疑問をぶつけた。すると
「確かに、ミヤの言う通りだ。でもボクはあの時自分が
消される事になったとしてもみんなの事は守りたかった
んだ。結果ボクは消えていない。どう作用しているのかは
わからないけどボクのした事が違っていたのだとしたら
今後のボクに異変が起こってくるのかもしれない」
とミロクは言った。僕はそんな覚悟をしていた事に
ビックリした。
「悪かったよ。ちゃんと話を聞かないうちに責めるような
事言って。でも、ごめん。僕はもう少し様子見だな」
と言うと
「ミヤ〜〜」
「ミヤさん〜〜」
とみんなが僕の名前を呼んだ。僕だって、信じたい。それ
にミロクのこれからも心配だ。でも僕はリンモーゼが
そんな危険をおかしてまで国外で何かをさぐっているよう
に感じた。それがミロクを探すこととかだったら、これ
だけでは終わらないような気がして。それに同じ国の者
同士で偵察部隊をつけるということは国内でも何が
起こっている可能性が高い気がした。ミロクがこのまま
巻き込まれなければそれでいいと僕は思った。それが
はっきりするまでは安心できない。その後、ミロクは
リンモーゼが幼馴染で転移魔法の実験を一緒にやって失敗
した奴だと教えてくれた。大概、魔法の実験をする時は
リンモーゼが実験台だったのだとも言っていた。本当に
仲が良かった事はよくわかった。僕が、じゃあ、何故
そんなに仲が良かったのに連絡を取らなくなったのかと
聞いたら、猫の国ニャータル王国は国外逃亡を手助けした
者がバレると処罰があるのだと言う。重いと死刑。軽くて
も生涯、牢屋で暮らすことになる。だから、国外に出て
まで連絡をとっていたらバレた時の事を考えると連絡を
一切たったのだとミロクは教えてくれた。でも、今日
会えて安心したとミロクは言った。まだ、国の幹部として
働いていると言う事は手助けしたことはバレていないと
思ったからだと。そんな危険をおかしてまでリンモーゼは
ミロクの国外逃亡を手助けしてあげていたのかと思ったら
少し心が揺れた。
そして、この日はルクとノンはミロクとアバンの洞窟で
一緒に泊まることになった。いつのまにかミロクはルクと
ノンが泊まれる部屋を作っていた。アバンはルクに自分の
部屋を空にして欲しいと頼んでいたが、ルクはミロク手前
アバンに丁重お断りしていた。その横でミロクが凹んで
いるのをノンが元気出して下さいと元気づけていた。
とても穏やかな時間が過ぎていった。
そして、明くる日、ふたりは自分たちの横穴にミロクと
共にバラのアーチを使って帰って行った。ミロクは結界の
事をふたりに教える為に一緒に行った。
アバンは朝からふてくされていた。
「アバン、どうしたの?」
とわかってはいるけど聞いてみた。
「ルクがぼくの部屋を、ぼくの想像する空にしてくれ
なかったんだ」
と言った。アバンの空への想いの強さには頭が下がる。
「ねえ。どうしてルクがアバンの希望を叶えなかったのか
わからない?」
と僕が聞くと
「わからないよ。なんでなのさ!!」
とキレ気味でアバンが答えた。
「ねえ。ここはミロクがアバンとミロクの住まいとして
整えた洞窟でしょう?」
「うん、そうだよ。ミロクが一生懸命考えてくれてぼくが
使いやすいように、この広間も僕の部屋も……あっ」
と言ってアバンは黙った。
「ミヤ。どうしよう、ぼくミロクにずっとひどいことして
たんだね」
と言った。そして
「自分の事しか考えてなかったよ。変えてもらうなら
ミロクに言うべきだったんだね。それにぼく、思い出した
よ。ミロクがぼくの部屋を整える時、アバンの希望は
ない?って聞いてくれたんだ。でも、その時のぼくはこれ
でいいよって言ったんだ」
とアバンは少し凹んでいる。
「大丈夫。長く住んでいれば、気分を変えたくなるもの
だよ。僕の世界でも模様替えって言って部屋の中の雰囲気
を変える事があるんだ。だから、ミロクに頼んでみると
いいよ」
と僕が言うと
「えっ。言えないよ。ミロク、ぼくのこと嫌いになってる
んじゃないかなぁ」
とアバンは弱々しい声でそう言った。
「そんな訳ないだろう。ミロクがそんな事でアバンを嫌い
になる訳がないさ」
「そうかなぁ」
とアバンが言った。すると
「ただいま」
とミロクの声がした。ミロクを見たアバンは、申し訳
なさそうにしている。その異変に気がついたミロクが
「アバン? どうしたの?」
と聞いた。
「ううん。ミロクお帰り」
とアバンが言うと
「あっ。そうだ。アバン、部屋の模様替えをしよう。ルク
に教えてもらったよ。アバンの希望の部屋にする方法を」
とミロクが言うと、アバンはたちまち元気になって
「ミロク。ごめんね。本当にありがとう」
ととても嬉しそうに答えた。ふたりはアバンの部屋に行き、
しばらくすると戻ってきた。
「ミヤ!! 凄いよ。ぼくの部屋、空だよ!! それもぼくが
想像していた空間になってるんだよ。見てよ!!」
と興奮気味にアバンが言う。その後ろで嬉しそうにその
様子を見ているミロクがいた。僕はアバンに促されて
アバンの部屋に入った。凄い!! 本当に空にいるようだ。
寝床は崖の途中にある感じになっていて、その崖面に他の
荷物も置かれている。あとの空間は本当に空にいる感じ
だ。アバンでなくても興奮する。
「ミロク、凄いね!!」
と僕が言うと
「ボクはアバンの想像を部屋に転写しただけだよ」
と言っているがミロクも嬉しそうだった。
「やっぱり、ミロクは凄いよ!!」
とアバンはしきりに言ってた。もちろんミロクのご機嫌が
良いのは言うまでもなかった。




