ルクとノンの想い
「ごめんね。さっきから聞いててぼくが、一番気になった
のはルクとノンが、どうしたいのかっていうことなんだ。
それに、ふたりが今自分の人生をどう思っているのか。
だって、この話はふたりの話でしょう。ふたりの気持ちを
大切にしないと」
とアバンは言った。その言葉を僕は、さんにんに伝えた。
するとルクとノンは目を潤ませている。
「そうですね。アバンさんの言う通りです。私たちが勝手
に決めていいことではありませんね」
とリラは言った。そして、僕は
「ほら、ふたりの本当の気持ちを言ってみなよ。正直に
言って大丈夫だから」
と言うとルクが自分たちの一番古い記憶から話し始めた。
時折、リラとラクリーレが話の補助をする。ルクとノンは
両親の記憶が曖昧なのだという。ふたりにはもうひとり
兄弟がいたはずだが、そのことも記憶が定かではないのだ
という。ルクとノンはとても両親に大事にされていたこと
だけはハッキリと覚えているという。そしてあの日、
ふたりが両親と離れ離れになった日、その日は珍しく両親
がふたり共出かけることになった。母親にすぐに帰って
くるからお家でおとなしくしていてね。と言われ両親は
出かけた。その後、両親がいなくなったさみしさから
ふたりは大泣きしてしまったのだというで泣き疲れふたり
とも寝てしまった。次に気がついた時には見たことのない
人達に囲まれていた。でも、不思議なもので日にちが経つと
気持ちが落ち着きはじめる。そして、魔力測定を行った。
ふたり共、茶白にしては、茶トラにしては、魔力がある方
だと判定された。と同時に辛い思い出のある子たちは、
精神を安定させる為にリラ自ら、ひとりひとりと面談を
するのだという。その時、ふたりが王家の血筋であること
が判明した。王家の血筋の者には、精神を安定させる為に
行う魔法が効かない。それは記憶を改ざんされないように
する昔からの措置だという。王家の血筋だと知ったリラは
すぐに詳しくルクとノンに話を聞いた。そして親元で
暮らしていたことが判明し返しに行ったのだという。
でも、ここに連れてこられてもう二週間以上経っていた。
村に行き、ルクとノンを連れてきた場所まで行ったが家が
跡形も無くなっていた。近所の者に聞いてみると若い男女
の夫婦が子猫二匹がいなくなったと大騒ぎして毎日、探し
回っていたという。村の人たちも協力して探したが
見つかることはなかったという。で、夫婦は期間限定で
ここに滞在していた旅商人だった為、ここに滞在できる
期限を過ぎてしまった為この村を出て行くことになったの
だという。その話を聞いたリラは、猫の国の一年間人間の
国を知る為の修行だと思った。生まれたばかりの子たちは
変身はできない。もしこのふたりが人間の子供に変身して
いたとしたら、癒しの棲家の者たちは連れてくることは
なかっただろう。でも、まだ5年程の若い猫では、余程の
能力である者でしか消える魔法を使う事も出来ない。
だから、子どもたちをそのままの姿で置いて行かざるおえ
ないのだと。しかし、それは魔法を教える時期が猫の国
では生後3年になってからだからと。本当に素質のある者
は生後1年も経たない内から魔法を操れるようになると
リラは付け加えた。そして、ルクとノンはそのままこの
癒しの棲家で暮していく事になったのだと言った。
そこからは、ふたり共魔法の勉強と同時にこれから自分達
で生きていく術を必死で学んだという。早く学びを終え村
に帰り、もしかしたら探しにきてくれるかもしれない両親
に会いたい一心で。そして、この時点では、ふたりには
まだ王家の血筋であることは伏せられていた。しかし、
ふたりは1年、2年と経つにつれこんなに時が経てば両親
はもう自分達を、探すことはないのではないかと思い
はじめる。それでも、ルクは諦めきれずにいた。誰にも
言わなかったが、絶対に両親は自分たちを探してくれて
いるはずだと信じたかった。しかし、ノンは日に日に自分
たちで出来ることが増えていくにつれ自信がでてきて、
兄弟2人で生きていこうと思うようになってきたのだと
言った。両親に会えれればそれはとても嬉しいけど、そこ
にとらえられすぎて自分たちの人生を無駄にはしたくない
とも思っていたのだといった。ふたりはそれぞれの想いを
抱えながら15、6年の日々を送ってきたのだ。この
癒しの棲家では、15、6年で全てを教えきる。後は
どうするかは本人達に決めさせるのだという。中にはここ
にとどまる者もいる。リラやラクリーレたちの手伝いを
しながら暮らしていく者、自分の生まれた土地に帰って
いく者、また、別の地に自分の居場所を求めていく者、
世界を旅する者、旅商人として生きていく者、様々な選択
を自分たちで決めてここを旅立っていく。しかし、リラが
どうしても心配のある者には定期的に会いに行くことも
あるのだという。それは記憶を改ざんする程の辛い思いを
した者だ。そして、ルクとノンにもその時が来た。ふたり
は話し合い生まれた土地に帰って住む事にした。その時
リラから自分たちが王家の血筋であると聞いたのだと
いう。それと同時にミロクの事も教えたもらったと言った。
「ボクのこと? ってどういうこと?」
とミロクはふたりに聞いた。
「リラ先生から聞いたのは、僕たちと同じ王家の血筋で
ある三毛猫のオスであるミロクさんという者が猫の国を
でてこちらの世界で暮らしている。リラ先生たちが
できないような事もされているとても優秀な者だと。
何かあれば彼を頼るといい、きっと力になってくれるはず
だと。それ程に懐もは深い者であると」
とルクは言った。そして
「そのミロクさんがあなただと確信は出会った時点では
持てなかった。僕たちには猫が変身しているかどうかの
見極めはできないから。もしかしたら同じ名前の人間なの
かもと思っていました。しかし、ラクリーレ先生から
ミロクさんが、あのミロクさんだと教えてもらった時
この提案もされたのです。本当は心苦しかった。助けて
くれた恩人にこんな事をするのが、今そんな事を言っても
ただの言い訳にしかなりませんが」
と言った。
「でも、本当に嬉しかった。あなた方と会えたことが」
とノンも言った。ミロクはかなり照れながらその言葉を
聞いていた。
「どうしてミロクの事を知っていたのですか?」
と僕はリラに聞いた。
「私たちは、猫の国を出たからといって全てから解放され
る訳ではありません。猫の国からしてみれば、国を出た者
達が自分たちに何かを仕掛けてくるかもという不安や恐れ
があるのでしょう。それは私たちも同じです。猫の国には
情報屋といっていろんな情報を収集する者たちがいます。
一般の猫の中にもその情報を得て買い取ってもらう者も
いるらしいのです。私たちもいつ何時、何が起こるか
わからないので情報だけは収集してきました。そんな時、
ミロクさんあなたが猫の国を出たと知った。あなたとは
一度お会いしてみたいと思っていました」
「ボクもです。あなたのことは小さい頃からよく聞かされ
てきました。とても素晴らしい三毛猫がいたと。オスの
三毛猫に匹敵する程、いや、それ以上の才能の持ち主だと」
とミロクが言うと
「私の事は今は」
とリラがミロクの話を遮った。
「で、ルクとノンは今、幸せなの?」
とアバンが聞いた。その言葉を僕はラクリーレとルクと
ノンに通訳した。
「オレは幸せだよ。そりゃあ、両親やもうひとりの兄弟の
事は気になるけど、兄がいるし、街の生活にも慣れてきた
ところだったし、さらにミヤやミロクさん、それにアバン
さんとも知り合えたしね」
とノンは言った。僕はルクを見た。ルクはとても複雑そう
な顔をしている。そして
「私は、微妙かな。私は両親と兄弟と共に暮らしたいと
思って生きてきた。それ以外の事は考えられなかった。
他の者たちと接することも私は苦手だし、だからあの木の
中にこもって暮らしているのが何より幸せだと思って
いた。ノンがもう、自分たちの事を考えて生きていこうと
言った時、どうしてそんなことが言えるんだと思った。
だから、ノンが街に行くと言ったけど私は一緒に行く気
にはなれなかった。でも、初めてノンと離れてみて
さみしくて仕方なかった。だから、毎日あの木の上へ
登ってノンのいる街に向かってノンが今日も無事で幸せで
ありますようにと祈ることしかできなかった。でも、
あの日、意を決して街へ行ってみた。ノンが住んでいる家
にも行ってみたんだ。とても活気があって、この癒しの
棲家にいた頃の楽しかった日々を少し思い出した。あの頃
ほんの少しだけど自分も大きくなったらどんな事をしよう
と思ってた日々があった事を思い出したんだ。そして目が
覚めた時ノンの顔を見て本当に安心した。やっぱり私は
ノンと一緒に居たかったんだと」
とルクは自分の心の内を僕たちには話してくれた。
「じゃあ、ふたりはこれからどうしたい?」
とアバンが言う。僕はその言葉をを通訳した。




