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ミロクの気がかり

【僕、夏休みにおばあちゃん家の三毛猫と異世界に行ってきました】の続編です。

楽しんでもらえたら嬉しいです。

 その姿を廊下の角を曲がるまで見送った後、僕は戸を


閉めた。和室にはミロクとふたり。僕は聞いた。



「ミロク、弥玖(みく)の事知ってる?」



「知らん!!」



とミロクは即答した。でも、弥玖はミロクが魔法を使える


ことを知っている。弥玖に詳しいことを聞きたいがあの


様子だと答えてくれそうにない。きっと、ミロクの人生に


関わっていてミロクが魔法使いだと知っている人物。


と思い



「ミロクが三毛猫で魔法使いだと村人とアバン以外では、


誰が知ってるの?」



と聞いた。すると



「ボクが生まれた国にいた時だけだと思う」



と言った。ミロクが言うには生まれた国を出てからは、


人間に変身して暮らしていたり、三毛猫だと見つからない


ように暮らしていたのだという。ミロクは昨年までは、誰


にもバレていないはずだという。だとしたらミロクの


生まれた国の者という事は、弥玖は猫が転生した者だと


なる。い、妹の前世が猫!! それにしても弥玖はミロク


並にしっかりしている。弥玖の事を今、ああだこうだと


言っても仕方ない。僕は気持ちを切り替えて



「ミロク、アバンは元気?」



と言うと



「ああ。相変わらずだ。でも最近は以前より活動的に


なってよくふたりで空の散歩をしている」



と言った。



「ミロクはあまり、嬉しそうじゃないね」



「ああ、アバンが前向きなのは嬉しいけど何かあったら


とヒヤヒヤする」



と言うミロクは、何か心配していそうな感じがした。



「何かあったの?」



と言うと



「実は、村人達からアバンのあの癒しの光


(ピンクゴールド)で病人を癒して欲しいと


頼まれたんだ。あれはアバンが姿を現さないとできない


んじゃないかと思って困ってるんだ」



と言い続けて



「ボクたちも一年経過して色々と村人たちには世話に


なったし、出来るなら叶えてやりたいと思うんだがあれを


する事でまた、周りの村や知らない奴らに気づかれるので


はないかと思ったらとてもわかったとすんなり承諾して


やれないでいる。でも、こうしている間に病人の症状が


悪化しないかと心配だし……」



と言うので



「回復薬は?」



「あれは体には効くけど精神的な事には効かないから」



と言った。そうか、精神的なのか。アバンのあの光の方が


効く。あの正気を失っていたドラゴンがすっかり穏やかに


なってアバンの指示をすんなり聞いていた。僕はミロクに



「アバンに聞いたの? 消えてもあの光を使えるか。それと


コントロールして少しの光でも癒されるか」



「それはまだ」



とミロクは言った。



「じゃあ、とりあえず弥玖の事は置いといてそれをアバン


に確認するのと、どうやって僕が時間を作って向こうに


行けるようにするかが目下の課題だね」



と言うとミロクはわかったと言った。そして、僕が和室の


戸を開けて出ようとすると



「ちょっと行ってくる」



と言い僕より先に飛び出て行ってしまった。その素早さに


僕は昨年からの疑問が聞けないまま取り残される事に


なった。




 僕はこのまま居間に行く。そこには両親と弥玖がいた。


弥玖は僕を見ると



「にいに〜〜」



と言ってたどたどしく走ってきた。



「危ないよ。気をつけて」



と、咄嗟に僕は手を差し伸べた。いつもの弥玖と同じで



「えへっ」



と言いながら僕に抱きつく。僕がさっき見た弥玖は


なんだったのだろう。幻だったのかと思う程いつも通りの


弥玖だった。僕は弥玖に



「弥玖、にいにと一緒にお外で遊ぶ?」



と聞いてみた。弥玖は迷わず



「うん!!」



と嬉しそうに言った。それを聞いていた父も



「おっ。いいな弥玖。にいににたくさん遊んでもらえ」



と言った。母は



「あまり、遠くへ行かないようにね」



「うん。わかった」



といい、僕は弥玖をつれて外に出ることにした。弥玖に


ゴム付きの麦わら帽子をかぶらせ、靴を履かせる。僕も


キャップをかぶって外に出た。畑ではおばあちゃんが作業


をしていた。僕は弥玖をつれて居間から見える位置にある


けど、少し距離のある、おじいちゃんが父の子供の頃に


手作りしたという鉄棒とブランコと砂場がある。その砂場


に弥玖を連れて行く。自宅にいる時もよく近所の公園の


砂場に弥玖をつれて行って遊んでいるのでそうした。



「弥玖、砂場で遊ぼうか?」



「うん。おしろ、つくる!!」



と言う。スコップとバケツは元々ここに置いてあるので


それを使う。かなり年季が入っている。僕が小さい時も


使っていた。弥玖は楽しそうにバケツに砂をつめている。


僕はうわの空だ。弥玖にミロクの話を切り出そうか考えて


いた。すると



「お兄ちゃん、作業しながらそのまま聞いて。周りには、


おばあちゃんもパパもママもいる」



と弥玖があの時と同じく流暢に話し始めた。僕は平静を


装い



「うん」



と小さく答えた。



「ミロクとお兄ちゃんがどうしてあんなに仲良くなった


のかは知らないけど、ミロクは異世界から来たのよね?」



僕は一瞬どう返事をしようか躊躇ったが、素直に



「うん」



と答えた。



「お兄ちゃんも異世界に行けるの?」



と聞かれ、これは素直に言っていいものか悪いのか、弥玖


まで行くと言い出したらと思うと黙ってしまった。



「……行けるのね」



と弥玖は言った。そして



「大丈夫。あたしまでつれてけなんて言わないわ。だって


あたしが一緒に行ったらパパとママ達が大騒ぎするもの」



と言う。なんで物分かりのいい妹なんだと思った。すると


弥玖が



「お兄ちゃんが向こうに行くの協力してあげるわ。でも


絶対に危ないことしないでね。パパもママもおばあちゃん


もみんな悲しむから」



と言った。



「もしかして、弥玖が駄々こねて母さんから離れなくして


くれるとか?」



「流石、その通りよ。で、友達のとこに行くとか言えば、


家出られるでしょ」



と言った。



「いや。それじゃあ、友達に連絡されたらすぐにバレる。


普通に虫捕りとか釣りに行くって言うよ」



と言うと弥玖は



「なるほど」



と感心している。なんか不思議な感じだ。見た目4歳の


弥玖と普通に会話できるなんて。



「ありがとな。弥玖」



と言うと



「いいえ。どういたしまして」



と言われた。僕は切り出してみた。



「ところで弥玖は転生者?」



「そうね。そうなるのかな? でも、さっきも言ったけど、


このまま大きくなって記憶が消えればただの輪廻転生?


って奴じゃないの」



「そっか。で、ミロクとの関係は?」



としれっと聞いてみた。するといともあっさり耳打ち


された。



「えっ――――」



と僕は大声を上げてしまった。おばあちゃんも両親も


口々に



「どうした?」



「どうしたの?」



と言ってきた。



「いや、なんでもない。虫がいるって弥玖か教えてくれて


びっくりしただけ」



と苦しい言い訳をした。すると



「なーんだ、気をつけなよ」



とみんな、あっさりと納得した。僕んちの大人達はとても


素直で助かるよ。そう思った。弥玖を見ると



「ミロクには内緒ね♡」



と言われた。



「わかったけど、どうして?」



「まあ、色々あるのよ。あたしにも」



と言った。僕としてはミロクに黙っていられるか心配


だったが、妹との約束も破る訳にはいかない。


そう思った。




 その日の夕方、ミロクは家に帰ってきた。僕はミロク


からアバンとの話を聞きたかったがミロクとふたりになる


ことは難しかった。僕はみんなとご飯を食べ、お風呂に


入り和室の一室で両親と弥玖と四人で寝た。

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