僕らの休日と茶トラ猫ノン
明くる日、ミロクは昨日、物々交換した物を街に売りに
行くと言ってザボリタ王国へ向かった。僕とアバンは洞窟
でお留守番。
「ねえ。ミロクに消える魔法かけてもらっとけばよかった
ね。そうしたら空の散歩にいけたのにね」
とアバンが言った。
「そうだね。でも、行くならみんなで行った方がいいん
じゃない? ミロクが仲間外れだ〜!! って怒らない?」
と僕が言うと
「それもそうだね。あっ、でもミロクがザボリタ王国に
行ってる間空から見ててもよかったね」
とアバンはどうにかして空の散歩がしたいらしい。ここ
数日、小さいアバンで空を自由に飛んでいてもアバンの心
には、やはり空を飛ぶことでいっぱいなんだなぁと、
まやかしの森の13の扉の事を思い出して僕は笑いそうに
なった。しばらくするとミロクが帰ってきた。アバンは
ミロクに空の散歩に行こうと誘っている。ミロクはアバン
には弱いのでOKをしたらしい。
「ヤッターー!! みんなで空の散歩に行こう!!」
アバンの背中に僕とミロクが乗るとミロクは消える魔法
をかけ洞窟を出た。結界をはり、僕たちはアバン念願の
空の散歩へくりだした。
「どこに行くの?」
と僕はふたりに聞いた。
「このまま、ザボリタ王国へ向かおうと思う」
とミロクが言った。
「えっ!! それじゃあ、休日にならないよ」
と僕が言うと
「やっぱり、ミロクはあの光る木の茶白くんが気になる
んだよね」
とアバンが言った。
「うん。このまま行って、もう少しあの木を調べてみたい
んだ」
とミロクは言う。
「わかった。ミロクがそうしたいんだったら、僕は何も
言わないよ」
と僕は言った。そして僕たちはザボリタ王国へ向かった。
アバンは嬉しそうにそして楽しそうに自由に空を飛んで
いる。なのにゆっくりではない。それなりにスピードを
感じる。でも、急いでいる感じもなく、本当に楽しそうに
飛んでいた。以前乗せてもらった時とは何かが違うように
思った僕は
「アバン」
「うん? なに、ミヤ」
「以前乗せてもらった時と何かが違う感じがするんだ。
ゆったりとアバンは飛んでいるのにスピードが速いと
いうか。でも景色はとても綺麗に見えるというか。うまく
伝えれないんだけど…」
と僕が言うと
「うん。なんだかわからないけど、虹色の光を放った少し
後ぐらいから自分の飛ぶスピードがコントロール出来る
ようになってるんだ。瞬間移動はムリだけど、かなり速い
スピードで飛べるよ。景色を楽しむのは、このくらいまで
かな。これより速くなると景色が見えなくなってくる
んだ」
とアバンが言った。ミロクも話を聞きながら何か考え
込んでいる。そんな事があるんだとビックリした。
「アバンの体は大丈夫なの?何か今までと違ったりして
ない?」
と僕が聞くと
「うん。大丈夫だよ。ぼくは至って元気だよ」
とアバンが言った。
「なんだか、進化してるみたいだね」
と僕が言うと
「そう? ぼく進化してるのかな!!」
とアバンは嬉しそうに言った。ミロクは
「アバン、もしかしたら最近薬だの魔法だの、飲み過ぎや
かけすぎてるからかな? その影響じゃなければいいんだ
けど」
と言うと
「ミロクは心配しすぎだよ」
とアバンが言った。僕は
「じゃあ、アバンには薬を飲まずに消える魔法で洞窟から
ザボリタ王国まで空中移動してもらえば、しばらく薬を
飲まなくてもいいんじゃないの?」
と言うとミロクは
「そうしよう。薬より消える魔法の方が体への影響が、
少ないように思う。アバンの行き、帰りはボクが一緒に
移動する。で、洞窟から転移魔法でミヤのいる仮家へ戻る
よ」
と言った。
「でもサ。そうなるとぼくは大きいまま姿を消して飛ぶ
ことになる。それだとザボリタ王国の誰かに気づかれない
かな?」
とアバンが言った。
「今から行くんだらかリハーサルできるよ。
何も起きなければ明日からそうしよう」
とミロクが言った。僕は
「何か起きたらどうするの?」
と言うと
「ボクが一緒だからなんとかするよ」
とミロクは言う。僕は
「何かいい案でもあるの?」
「…………考えとく」
とミロクはボソッと言った。ないんだぁ〜けど、アバンの
体の事を考えるとそうした方がいいかもと思った。
「じゃあ、また楽しい空中散歩の再開だーー!!」
とアバンがその場の雰囲気を変えてくれた。そして僕たち
はアバンのお陰で思ったより早くザボリタ王国へ着くこと
になった。そして、気になっていたあの光る木の上空へ
僕たちは、たどり着いた。アバンは僕とミロクを地上へ
降ろすとまた、上空へ上がっていった。アバンは木の上
から様子を見とくと言ってくれた。僕とミロクは消えた
まま木の周りの様子を見てまわった。すると、ミロクが僕
に小声でこう言った。
「ミヤ、ここだ。ここに結界がある。これはとても古い
結界だ。とても高貴な三毛猫たちが使っていたものだ。
この方法を伝授した者がいる。伝授された者もかなり魔法
の能力が高くないとできないだろう」
「ミロクもできるの?」
と僕が言うと
「一番最初に習ったんだ。これができれば魔法の能力が
高いと認められる。テストみたいなもんだ」
とミロクは言う。
「この結界を解けたりするの?」
「うん。でもそうすると中にいる猫に気づかれる」
とミロクは言った。それはそうだ。何かお近づきになる
いい方法はないもんだろうか。
「そうだね。ゴメン。知り合ういい方法を考えないとね」
と言うと
「そうだな」
とミロクは言った。突然、気配を感じる。僕とミロクは
草むらに隠れた。隠れた草むらから大きな木の結界が
張られているという場所が見える。木の向こうから誰かが
こちらに向かって歩いてくる。15、6歳くらいの青年
だ。僕とミロクはピッタリと体を寄せて草むらに隠れて
いる。耳元でミロクが言った。
「あの青年は茶トラだ」
僕は咄嗟に
「ミロク、僕の魔法を解いて」
と言った。まだ青年からこちらへは距離がある。ここに人
がいたとしても不思議ではないだろう。ここで寝ていた
ことにして声をかけるキッカケにはなるだろうと僕は
思った。少々強引ではあるがそうしてみよう。
「えっ」
とミロクは驚いたがすんなりと魔法を解いてくれた。僕は
すでに横になっていたので今、目覚め程で
「うぅ〜ん」
と伸びをしながら起き上がった。青年はまだ僕に気づいて
いない。起き上がった僕はわざとらしく大きな欠伸を
した。僕は気づかれないように鞄から紙と書くものを
出した。絵を描こうとして寝てしまったことにしようと
したのだ。まだ、僕に青年は気がついていない。先手を
打つべく僕は声をかけた。
「あっ、こんにちは!!」
と言う声に青年は僕に気がついたが、一瞬ビックリして
ひるんだ。まさか、ここに人がいるとは思ってなかった
ようだ。
「こんにちは。そんな所で何してるんですか?」
と青年は声をかけてくれた。よし!! と僕は思った。
「いや、とても綺麗な景色だったから絵でも描こうと
思っていたら気持ち良くて眠ってしまって」
と僕は言った。
「そうなんだ。君はこの村の人じゃないね」
と言われた。僕はすかさず
「ああ。君はこの村の人かい?」
と聞いた。すると
「いや、オレはここには住んでいない。街に住んでる
んだ」
と言う
「ここにはどうしてきたの?」
と僕が聞くと
「この大きな木が好きなんだ。だからよく見に来るんだ」
と言う。
「そうなんだ。この木とても立派だよね。ところで君の
名前聞いていい?」
と僕が聞くと
「オレの名前はノンって言うんだ。君は?」
と聞かれた。やった!! この青年がノンか。
やっと見つけたと僕は心の中で思った。
「僕はミヤって言うんだ」
と僕は正直に答えた。相手が茶トラで(ミロク談)ノンと
正直に答えてくれているのに偽名を名乗る事は
出来なかった。僕はこのまま立ち入ったことを聞いて
みた。
「家族とかは?」
と言うと一瞬ためらった感じがしたが、ノンは
「両親とは幼い頃に生き別れたんだ。兄がいる。本当は
もう一人兄弟がいたような感じがするけどよく覚えて
いないんだ」
と正直に答えてくれた。この青年は間違えなく弥玖の
探している茶トラのノンだろう。
「お兄さんとは一緒に住んでるの?」
と言うと
「いや、一緒には住んでいない…」
と言い急に表情が曇った。
「ゴメン、聞いちゃいけなかったのかな」
と言うと
「いや、そんな事ない。兄貴とオレはつい最近まで一緒に
住んでいたんだ。でも、オレが街に出ようと言ったことで
考えが合わなくなってしまって今は別々に住んでいる」
と言った。案外、素直に本当の事を言ってくれることに
ビックリしていた。
「そうなんだ。ノンくんはきっと、色々考えてそう提案
したんだろう。お兄さんが君の気持ちを理解してくれる日
が来る事を祈ってるよ」
と言うとノンはビックリした顔をした。
「そんな風に言ってくれた人は初めてだよ」
といい、少し涙ぐんでいるように思った。




