猫の神隠しとミロクの薬売り
ミロクの報告は流石だった。ミロクはこの村の猫の中
での長老に会ってきたという。興味深いことを聞いたと
言う。この村が3つの村の中で一番猫が多いらしい。
15匹程いるが、人間に飼われている猫たちはみんな年齢
が様々だという。生まれたてから高齢まで。しかし、
野良猫となると話は別。15年以上のものしかいなく
なる。長老は人に飼われている猫の為詳しくは知らないと
言った。で、ミロクは野良猫のボスに会いに行ったのだと
いう。野良猫の子供たちは親離れすると神隠しにあうか
のようにいなくなる。で、15、6年になると戻って
くる。それは、20年程前からだという。野良猫のボスが
15年くらいの時の話らしい。戻ってきた者たちはとても
高いスキルをもっているらしい。それがどういうスキル
なのかは詳しく教えてもらえない。と言ったので、その
戻ってきたものに会わせて欲しいと言ったらしい。
すると、連絡先は教えるが会ってくれるかどうかは
わからないと言われた。ミロクはある猫の居場所を聞き
会いにいった。すると、そこは人間の家があった。ミロク
は人に変身して呼び鈴を鳴らした。すると人が出てきた。
でも、ミロクの目には明らかに猫が変身しているのだと
わかったという。
「どちらさまですか?」
「あっ。突然すみません」
と言い、教えてくれた野良猫のボスの名前を言った。すると
「こちらへどうぞ」
と中に通され、リビングに連れて行かれた。
「ちょっと待っててください」
というとしばらくして猫が2匹現れた。そして
「あなた方は……」
とミロクが言うと
「私はユキです」
「私はユリです」
という双子のようにそっくりな白地に黒のブチのある猫
だった。そして
「あなたは?」
と聞かれたのでミロクは
「私は人、いや猫を探しています」
と言った。
「どうして?」
と言ってきたので
「その子たちの母親に依頼されて」
と言うと
「なんていう名の子ですか?」
という。知っているかなと思いつつも
「ノンとルクという兄弟です」
「ノン?」
「ルク?」
と思い出そうとしてくれていると思ったという。
「一匹は茶トラでもう一匹は茶白のオスの兄弟です」
と言うと
「ああ」
とふたりは声を揃えた。知ってるんだとミロクは心の中で
ガッツポーズをしたのだと。でも
「あれ?そんな名前だったかな?」
「やっぱりわかんないや」
「ゴメン、やっぱり違うかも」
と二匹は言った。えっー。ミロクは一気に奈落の底に突き
落とされた気分になったと。ミロクは聞いた
「あなたがたがここに戻ってくるまでどこにいたんです
か?」
「うーん。どこだっけ?」
「どこにいたんだったっけ?」
と二匹は口々に言う。ミロクはある事に気がついた。この
二匹には、記憶の書き換えがされている。肝心な事を思い
出そうとするとわからないように。こんな高等な事が
出来るのは三毛猫しかいないとミロクは思った。これ以上
は何も聞けないと思い、ミロクはその家を後にした。
「たぶん、この一連の事には三毛猫が絡んでる。しかも
並の三毛猫じゃないと思う」
とミロクは言った。そして、記憶の書き換えは余程の魔法
の使い手でないとできないし、やらないと。それは色々と
記憶を歪ませる分、自分の体にも影響が出るからだ。
よく精神的にショックな事を一時的に落ち着かせる為に
使う事はあったが、こんな風に書き換えを行われているの
は初めて見たという。あくまで、ミロクが知っているのは
治療の一環だと。でも、これがもし、三毛猫がしていて、
故意にやっている事ならその三毛猫はもういない
(消されていて)だろうと、でもあの二匹の猫にしっかり
記憶の書き換えが作用していてその魔法が機能していると
いう事は人助けならぬ猫助けでやっているのだろう。
それ程までにあの二匹には精神を病む程の辛い過去がある
のだろうと推測されるとミロクは言った。
弥玖の子供たちが連れていかれたとして、15年程で
戻ってくるのだとしたら、二匹はもうこの村に戻ってきて
いるかもしれない。裏に何があるのかは置いといて
とりあえず、二匹の行方を探すのが先だと思った。二匹は
野良猫ではなかったが、間違えて連れて行かれた可能性も
ある。でも、この一連に巻き込まれていなかったら、
誰かにさらわれたか。それとも親を探して家を
出てしまったか。親を探して出て行ったのだとしたら
やっぱりこの一連に巻き込まれた可能性は高い。しかし、
たださらわれたとしたら探しようがない。まずは、戻って
きていると仮定して探す事にした。だとしたら戻って素直
にこの村に住むとも限らない。あの二匹のように人間に
変身できるとしたら街の中心部でも他の村でも住めれる
し、二匹だけで森の中ででも住める。範囲は広くなる。
変身もどれくらいの魔法を身につけたかにより年齢と同じ
くらいから若くも、年輩にもなれるとミロクは言った。
ただミロクは猫の変身は見破れるのだから偶然にでも
ミロクに会えば猫だとわかるけど。それにしても広域
すぎる。何かいい方法はないものか。僕はミロクに聞いて
みた。
「ねえ。この村の人たちに全員会える方法何かないかな?
みんなに会わないと猫なのか人間なのかわからないよね。
みんなに会える方法……」
するとアバンが
「ミヤがみんなの家まわって絵を描いてあげればいいじゃ
ないか」
という。
「うっーん、それもいいと思うけど、時間がかかりすぎ
ない?それに僕はミロクのように猫が変身してるか
わからないし…」
と言うと
「そうか」
とアバンが納得する。
「あっ、じゃあミロクは薬作るの得意だよね。その薬を
みんなの家に売ってまわれば?」
とアバンが言った。
薬売りってやつだ。そうすれば一軒ずつまわれる。
家族全員に会うことは難しくても上手くやれば家族構成も
確認できる。ミロクを見ると何か悩んでいる。そして
「そうだな。それでやってみるか」
とミロクが言った。僕たちは一旦、洞窟に戻る事にした。
僕とアバンはバラのアーチで洞窟に戻った後ミロクが
バラのアーチを回収して転移魔法で洞窟に戻ってきた。
そして、ミロクは研究室にこもり、薬を作っている。
どんな症状でも対応できるように出来るだけ多くの種類を
作っているようだ。そして効きすぎると後で大変なので
回復薬も少し効き目を弱くする。人間が作るくらいか少し
だけ効き目良くしたらしい。やはり、ミロクとしては少し
でも良いものを売りたいのだろう。でも、自分で作った
のではなく、仕入れた事にして僕たちはあの村に戻った。
僕もミロクと一緒にまわることにした。アバンも消えて、
小さくなってついてくる事になった。まずは、街で商売
するの許可を得た。そして、村に売ってまわれる許可も
もらった。売ってまわる許可は街だと、色々と面倒らしい
が、村だと簡単に許可が得られるのだと言っていた。
そして、村の長に話をすると
「ありがとう、それは助かります」
と言ってもらった。そして一軒ずつまわる許しももらう。
早速、僕たちは薬売りを始める。
「すみませーん」
と庭で作業をしている人を見つけて声をかけた。その人は
年配のお爺さんだった。ミロクはジッとお爺さんを見る。
だけど猫ではないと言った。薬の話をする。すると、家の
中にいたお婆さんを呼んだ。話を聞くと二人暮らしだと
言う。二人はお金がなく物々交換をして欲しいという。
自分たちの作った野菜と交換して欲しいと言った。ミロク
は悩んだのち他の方には言わないように念押しする。
知られてしまうともう、売ることができなくなりますから
と言った。何か細かい取り決めがあるのだろう。僕は
ミロクに耳元でサンプルみたいなのはダメなの?
と聞いた。するとミロクはお爺さんとお婆さんに量を
少なくする形でいかがですか?と言った。それだと
物々交換でも充分見合う価値になり、ちゃんとした
売買成立になる。お爺さんとお婆さんもそれで承諾して
くれた。そして、僕たちは野菜をもらって次の家は行く。
何軒かまわったがみんな人だった。初めての事もあり薬は
あまり売れないが今、どうしてもという家にあたると
買ってもらえた。やっと僕たちは半分くらいまわり
終えた。初めての事もあり説明したりするので少し思った
より時間がかかった。今のところ猫が変身している人も
茶トラと茶白の猫もいない。あと半分、今日中にまわれた
らいいのだけれど。とりあえず昼休憩をとれる場所を
探した。すると丘の上に大きな木を発見した。僕たちは
その下で昼休憩することにした。




