弥玖からの依頼
「探して欲しいの。私の子供達を」
と弥玖が言った。
「こども?!」
と僕は驚く。でも、少しだけ残っていた冷静さで大声を
出さずに済んだ。
「どういうことだ?」
とミロクが言う。僕たちはゆっくり話をする為に居間へ
いく。もちろん両親もおばあちゃんも寝ているから誰も
いない。僕たちはカーテンと窓を開けて縁側に腰を
下ろした。今夜の月は綺麗な満月だ。ボンヤリと明るい。
虫の音も聞こえている。そして、ミロクを真ん中にして
僕はミロクの頭を弥玖はミロクの尻尾の方を触りながら
思念で会話をする事にした。突然、両親やおばあちゃんが
入ってきても怪しまれないようにする対策だ。弥玖は
話しはじめた。
弥玖の前世はやはり猫だという。それもミロクの生まれ
た猫の国ニャータル王国に生まれたと。そして、兄弟と
両親に愛され育ったと。両親や兄弟が大好きだったと。
でも、ある日、高熱を出して寝込んでしまう。それはメス
猫にとっては残酷な病気で、後遺症として子供が産めなく
なる体になってしまう病気だった。その事を知っているの
は両親だけだったと。周りには伏せておいた。猫のメスの
仕事は子孫を残すことだとされていたからだ。とても
ショックだった。その事を誰にも言えず、悩んでいたのを
幼馴染のオス猫が気づいてくれた。話をすると、ぼくが
一生守っていくよと言ってくれ、救われた気がした。彼は
いつも一緒にいてくれた。そして、お互いに好意を持ち
はじめた。でも、自分は子孫を残せない。自分の気持ちは
押し殺した。そんな時、猫の国では、生後五年になると
人間の国を知る為に修行に出るという。人間で言う留学
みたいなものだと言った。一年間、自分たちで
(どうやってもいい)魔法を使っても、猫のままでも、
人間になっても、違う動物になってもいいので、人間の
世界を経験、体験して帰ってくる事をするのだという。
猫の弥玖も行くことになった。その彼と一緒に。ふたりは
人間になり、夫婦を装って暮らすことにした。状況に
応じて、猫になったり、動物になったりして。一緒に
暮らすうちにお互いの想いがおさえきれなくなり、一度
だけ関係をもってしまった。しかし、自分には子供が
出来ないと思っていたので安心していたら妊娠していた。
嬉しかった。大好きな相手の子供をもてることがこんな
に嬉しいことなのかと思った。そして、ふたりはひっそり
と他の猫たちにバレないように子供を産んだ。三匹の仔猫
を産んだ。一匹は白猫だった為、誰かに連れて行かれて
しまった。でも、その仔とは猫の国で再会できた。猫の国
では白猫は “神の使い” として大事にされる。もし、誰でも
白猫を見つけたら保護するようにと言われている。
そして、保護した家は栄えていくという言い伝えがある。
そして、後の二匹は、茶白と茶トラだった。白猫がいなく
なった後二匹を大事に育てていたが、たまたま、ふたりで
用事があり、(猫の国から来たメンバーでの定期会議で
その時はどうしても欠席の許されない回だった為)連れて
も行けず、家に二匹を残して行ってしまった。帰ってくる
と二匹はどこにもいなかった。周りを捜したが見つける
ことが出来ず、ふたりは途方に暮れた。その二匹を捜して
欲しいと。見つけて幸せにしているならそれでいい。
でも、そうじゃなかったら
「ミロク、その子たちをあなたに託したい」
と弥玖が言う。
「はぁ? なんでボクが?」
「だって、その子たちを猫の国に戻すことは無理でしょ。
それはあなたも知っているはず」
「だからと言ってなんでボクなんだ?」
「だって、ミロク以外猫の国の外で知っている猫、いない
もの」
と弥玖は言った。
「あんたは一方的にボクを知ってるかもしれないけど、
ボクをはあんたを知らない」
とミロクが言うと
「あたしは、ミロクの妹のカノンの事を知ってる。彼女は
何かあれば、ミロクに頼むといいと言っていたわ。きっと
なんとかしてくれるって」
「えっ、カノンを」
と言いミロクは黙った。そして
「……カノンはボクの妹だ。ボクが猫の国を出る時に
手助けしてくれた。ボクの大切な家族だ」
という。僕と弥玖は何も言えなかった。すると、
「わかった。その話引き受けよう。詳しく聞かせてくれ。
でも、引き取る事はすぐには返事は出来ない。少し待って
くれ」
とミロクが弥玖に言うと
「わかった。ありがとう」
と弥玖が言った。弥玖はその人間の国はザボリタ王国で、
二匹の猫の名前は、茶白がルク。茶トラがノンという共に
オス猫だと言い、15、6年前に生まれたという。
「わかった、調べてみるよ」
とミロクが言うと弥玖は
「お願いします」
と言った。
ちょ、ちょっと待って!! 15、6年って言えば、
もしかしたらもうと僕は思った。ミロクに聞くと
「こっちでの猫の歳のとり方と向こうは違う。それに猫
にも色々ルールがあってね。何も魔法が使えない子たちも
いる。その子たちは人間(異世界の)たちと同じように
歳をとっていく。でも、魔法や力がある子たちはその
スピードが遅くなる。一番力がある時期の自分でずっと
いられるんだ。まあ、これ以上詳しくは言わないけど、
魔法や力がもし、その子たちになくても15、6年と
言えばまだまだ若い。心配ないよ。こっちに来る訳じゃ
ないし、大丈夫だよ」
とミロクは言った。そうかこっちにくると作用するけど。
異世界にいれば大丈夫なんだ。それに異世界のルールと
いうか条件があるんだ。と納得した。ミロクは弥玖に人間
の国ザボリタ王国のどの辺にいたのか詳しく聞いていた。
一通り話終わると
「さあ、大人たちに気づかれないうちに早く寝ましょう」
と弥玖は言った。
「そうだね」
と僕は言いミロクはおばあちゃんの部屋へ戻った。
僕は弥玖を抱き上げた。そして両親のいる部屋へ
向かった。すると、耳元で
「ありがとう、お兄ちゃん。黙っていてくれて」
と言った。僕は
「うん」
と言った。本当はすごく気になるけど隠そうとするという
事はこの事実を知ることで何かまずい事になるのだと
思ったら、何も言えなかった。
「でも、本当に弥玖の子なの?」
と聞くと
「ええ、そうよ」
と弥玖はあっさりと答えた。兄としては前世のことであれ
少しショックだったことは僕の胸の内にしまった。部屋に
戻ると両親はスゥースゥーと寝息をたて夏だというのに
気持ち良さそうに寝ていた。僕は弥玖を布団に寝かせ、
タオルケットをかけてやる。そして僕も横になり目を
瞑った。
次、目が覚めると部屋には僕しかいなかった。布団の中
で伸びをして僕は起き洗面所に向かう。それから着替えに
また、和室に戻った。着替えてから居間にいくともう
みんないた。
「おはよう」
と僕が言うと
「よく寝てたなぁ」
と父が言った。
「なんか、起こすの可哀想でね、そのままこっちに
来ちゃった」
と母は言う。
「さあ、座ってご飯食べなさい」
とおばあちゃんが言った。ミロクはもう食べ終わった
らしくペロペロと毛づくろいをしている。優雅に後ろ右脚
を上げていた。僕は座って
「いただきます」
といい、朝ご飯を食べ始める。すると
「今日はお前、好きに遊んでいいぞ」
と父が言う。
「なんで?」
とご飯を食べながら言うと
「隣の家の人が車を貸してくれるってで、俺とママと弥玖
で買い物に行ってくる」
と言った。
「そうなんだ。でもどうやって。ここ車来れないんじゃ
ないの?」
と聞くと
「行きにきた道は無理だけど、隣家やお前がこっちで友達
が出来たって言ってだろう。その時通る道は車通れる
じゃん」
「あっそっか。じゃあどうして母ちゃんがそんな体なのに
クルマに乗ってこなかったの」
と父に言ったら
「うちのは大型車だろ。通れん。軽トラや軽ならギリ
通れるんだよ」
「レンタカーもあるじゃん」
と言うと
「ウッ」
と父が黙った。母が
「私が歩いて行きたいって言ったのよ」
と助け舟を出した。父は
「美緒〜〜」
と母にすがっている。ハァーー。子供の僕に言い負かされ
てどうする。すると
「バス停からここまでは普通は歩いて40分くらい。
でもね車でここに来ると1時間30分くらいかかるのよ」
とおばあちゃんが言った。
「どうして?」
と聞くと
「車道を作るときにいろんな民家も使えるようにして
作ったらクネクネした道になってね。それでじいちゃんが
バス停まで続く道を最短で切り拓いたのよ」
と言った。
「スゲェーなじいちゃん!!」
と僕は言った。父はまた凹んでいた。
「じゃあ、気をつけてね」
と僕が言うと
「行きたいって言わないんだな」
と父が言った。
「だって軽だとしても4人乗りでしょ。弥玖のチャイルド
シートつけたら後3人でも、買い物したら荷物のせなきゃ
だし、もしおばあちゃんも行くんなら1人は絶対無理で
しょ」
と言ったそして僕は続けて
「だから僕に好きに遊んでいいぞって言ったんじゃない
の?」
と言うと
「ハイ、ハイ、その通りです。母さん(ばあちゃん)も
連れていきます」
と父が参りましたという感じで僕に言った。すると
おばあちゃんが
「本当にいいの?ばあちゃん行かなくてもいいのよ。弥哉
が行っても」
と言ってくれた。
「大丈夫、気にしないで。あっ、そうだ弁当頼んでも
いい?」
と言うとおばあちゃんは
「そんなの容易い御用よ」
と言い台所へ向かった。僕は残りのご飯を食べ終わると
おばあちゃんから弁当を受け取り出かける準備をした。
そして、僕たちはみんな一緒に家を出た。そして4人は
ここから10分程歩いた所にある隣家へ。僕はミロクと
みんなを見送り見えなくなったのを確認して倉庫の二階へ
急ぐ。今日も帰る時間を夕方にセットして僕とミロクは
アバンの待つ異世界へと続くバラのアーチをくぐった。




