僕たちが見出した希望
この洞窟に一人きりになるのは、初めてのことだった。
僕はこれからミロクとアバンに託された本を読みふける
ことになる。その前に僕はアバンの国でもらった果実を
鞄からひとつ取り出してペロッと食べた。おばあちゃんの
お弁当を食べたのに、まだ入るんだと思った。
まずは、アバンの本を読んだ。ドラゴンの国の事だから
何か手がかりがあるかと思ったが僕が読む限りピンとくる
事はなかった。ひとつは童話のようなお話だった。
ドラゴン達にピンチが起こる。それはまだ、ドラゴンの国
というものがなかった頃、突如現れたドラゴンがその
ピンチを救って英雄になる。それが初代ドラゴンの国王
だという話。読んでいても僕にはピンとこなかった。
今回のことにつながっているような感じはしない。
僕は次の本を手にした。これはドラゴンの国の歴史の様な
もの。どんなことが起こったのか書いてある。
でも、ピンクゴールドのドラゴンもコウリンランの事も
それに近いことも、ヒントになることも僕には感じられ
なかった。2つの本を元の言語に戻すとミロクから
託された本を読み始める。気が遠くなる程の本の量を積み
上げられている。まずは全部を白い布で僕が読めるように
した。背表紙の題名を見て気になるものから読んでいこう
と思った。【各国の言い伝え・伝説】という本が目に
とまる。僕は読み始める。それは、ドラゴンの国、猫の
国、人間の国、森の事、本当にこの異世界に存在する
あらゆる種族と種属の言い伝え、伝説が書いてある。
が人間の国は少なく感じた。目次を見ているだけでも
満足するくらいたくさんある。目次をパラパラめくって
いると〔•森の植物(異変)〕と書いてある目次が気になり
僕はそのページを開いて読み始めた。そこに書かれていた
のはツボギとガルトリの発生した理由だった。生物が植物
を取り尽くした為、生態系が崩れ、森が全滅しかかった。
それに順応し怒りを持ったツボギとガルトリは変化し邪気
を出し正気を吸うことで生きるようになる。
しかし、その事が生物と森までもの破滅していくはじまり
となる。今度は、ツボギとガルトリ以外の生物や森やその他
の植物までもが危機に陥る。それを止めるために精霊や
妖精たち森の生物や植物たちの代表として森の神に頼む。
ドラゴンの国の神とその当時ドラゴンの国と交流のあった
猫の国の神が、森の神に依頼され助ける手立てを相談。
そして、ドラゴンの国の神は、癒しを与えるドラゴンを
森の神はその癒しを強力にする植物を、猫の国の神は
その助けになる者を創り出したと。それが三位一体となり
全てを解決する。という事しか書かれてなかった。が、
しかし、猫の国が関わっていたという真実。そして今、
偶然にもミロクも関わっている。何かヒントがあるのでは
と思うのだが、これだというものが浮かばない。そして
パラパラと本をめくり流し見をしているとコウリンランと
いう文字が飛び込んできた。それは、〔•植物たちの効能
(正・違は定かではない)〕という注意書き付きの所に
ほんの数行だけ書かれてある。それもあまりにも小さな字
で数行だった。他の植物は絵が描いてあったり、もっと
詳細にかかれてあるのに、コウリンランに対してはとても
情報が少なかった。でも、これは何かのヒントになるの
ではと思った。それから、気持ちを切り替え本格的に読み
始めた。託された本を半分くらい読み終えた。
「うぅ〜〜ん」
と僕は伸びをした。
どれくらいの時間が経ったのかわからない。急に眠気に
襲われ、僕はそのまま寝てしまっていた。
僕はフワフワと浮いた感覚がする。遠くで誰が呼んで
いる。
「ミヤ、ミヤ…………」
と僕はその声がする方へ歩いている。なのに歩いても
歩いても先が見えない。すると、
「こっちよ、早く!!」
と声がした。言われた通りに歩いていくと、急に明るい光
の中に入っていった。すると、そこには弥玖がいた。
「弥玖? 何してるの? ここどこ?」
と聞くと
「私は弥玖じゃないわ。私は……」
と言った。すると、ハッキリ弥玖の姿だったのに
白い美しい猫に変わってしまった。僕が驚いていると
その白い美しい猫が
「ひとつです」
と言った。ひとつ? 僕には何の事だかわからない。でも、
その白い美しい猫は
「いいですね。ひとつですよ」
と言いそのまま消えてしまった。と僕は目覚めた。
何だったんだ。ひとつって何だ? よくわかんないや。
そう思いながら僕はまた眠ってしまった。次、目が覚めた
時にはミロクとアバンが目の前にいた。ふたりに聞いた話
だとふたりが帰ってきて起こしても僕は起きることもなく
今まで寝ていたという。僕は、ごめんとふたりに謝った。
そしてアバンは話してくれた。長老に再び会いに行った
ら長老はアバンが帰った後色々調べてくれていた。
すると、いままでのドラゴンの事がわかった。
それを教えてくれたという。長老がわかったのはアバンの
前ともう一つ前のドラゴンの事。後は資料もないし、
知るものもいないのでわからないと言われた。
アバンの前も、もう一つ前のドラゴンも光を操ることしか
できなかったという。そして、アバンと同じ、平和を好む、
穏やかな性格だったと。そして二匹とも紫のエキス
(コウリンランの)を摂取して、邪気にあてられた動物や
植物、虫や人間を助け、二匹のドラゴンは邪気に蝕まれ
消滅してしまったのだと。アバンと性格は同じだけど、
操れるものが全然違う。アバンは全てを操れる。
そして僕は聞いた。
「ねえ。誰が抽出したかはわかった?」
と聞くと
「うん。どっちも猫の国の者だったと言ってた」
「誰かまで特定できる?」
と聞くと
「それは……無理だった」
「そっか、ありがとう」
と僕は言った。ミロクも抽出したのが、猫の国の者だと
聞いてどうにか国にいる誰かに連絡が取れないか試みたが
ダメだったと言った。今、猫の国は鎖国状態で連絡を取る
ことが難しいのだと言った。まだ、向こうからこっちへの
連絡は取りやすいが、こっちから国内へは皆無だと
言った。そして僕はミロクの本で見つけた箇所を開いて
見せた。するとふたりは食い入るように読んでいる。
ミロクは自分の生まれた国も関わっていたことにびっくり
していた。アバンから抽出したのが猫の国の者だと聞いた
時も驚いたが最初から関わっていたことにもビックリした
と言った。
もう一つコウリンランの花の説明も見せた。そこには七色
の効能と一つずつで使うようにと注意書きが書いて
あった。それから、僕は夢に見たことをふたりに話した。
白い美しい猫が出てきて
「ひとつです」
と言ったこと
「いいですね。ひとつですよ」
と念押ししていたのだと。すると、ミロクが口を開いた。
「ボクの生まれた国では白い猫は神の使いと
言われている。だから、それは何かのヒントだと思う」
と言った。僕は弥玖の事は伏せておいた。ミロクが純粋に
話を聞いてくれなかったら困ると思ったから。
「ひとつって、やっぱり紫のエキスだけってことかな?」
とアバンが言った。でも、それではアバンに先代達の
ドラゴンと同じ事が起きるのではと思った。すると、
《歴史とは、自分達の都合の良いように歪ませて
伝えられるものだ》
と僕の中の奴が言った。
〈えっ。じゃあ、何が違うってこと?〉
と聞くが、何も答えない。僕は
〈ケチ!!〉
と思わず毒づいた。僕は
「もしかしたら、七色でひとつってことじゃないかな?」
と言った。これは僕の意思とは関係なく口をついてでた。
やられたと僕は思った。その言葉に、ミロクが
「そうか、コウリンランはとても貴重な花だ。一色でも
貴重だけど七色に分ければそれぞれの効能で使うことが
できる。最初は誰かの為にやったことが、何人もの者を
介すと自分たちの欲が出てくる。それで、途中から邪気
祓いのある紫だけを使うようになったのかも」
と言った。
「そうだね。そうすれば自分たちは潤う。でもそれをした
ことでドラゴンたちに影響が出たのかも。でも、ピンク
ゴールドの光をあてた時アバンは邪気に蝕まれることは
なかったのにね」
と僕が言うと
「多分、紫のエキスを摂取すると紫のエキスで得た紫の光
になる。その光は自分本来のものではないから足りない力
を補ったことで蝕まれたんじゃないかな」
とアバンが言った。
「そっか、本当は虹色の七色の力を使えばいいのにひとつ
だけだから足りないんだ。で生命力まで使うことになった
のか」
と僕が言う。これで僕の引っかかっていた事が腑に落ちた
どうして虹色なのにどうして紫色だけなのか。
紫色コウリンランで良いのではないかと思っていた。
やはり虹色に意味があったのかと。すると、ミロクが
「じゃあ、抽出のし直しだ。残りを虹色の抽出にして
みるよ」
と言った。
「頼むね」
と僕とアバンはミロクに言った。やっと光が見えてきた。




