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リバイバル映画を、もう一度

作者: 奈那美

”おひさしぶり”

”まだ、おれのこと、憶えてる?” 

”えーと、何年ぶりになるかな?そういえば憶えてる?”

”ガッコ、さぼって一緒に観に行ったあの映画”

”すげー懐かしい、あの映画がリバイバル上映するんだって” 

”昨日、聞いたんだけどさ。あれ観てた時、ユミ泣いてたよなって思いだしたよ”

”また、一緒に観に行きたいかも、なんてさ。けど、元カレとなんて行きたくないよな”

”ただ、懐かしいって気持ちを共有くらいは、してくれるよな?” 

”つまらない話題だったかな?” 

”嫌いには、ならないでほしいな” 

”あー、ひさびさのメールなのに、内容がないようww”

”つまらないギャグで、ごめん” 

”てなわけで。なんか懐かしくて、思い出しちゃったからさ。それだけ”

 

********************

 

「これ、どう思う?」

私は友達のミユキにメールの画面を見せた。

「誰?知ってる人?」

文面をひと通り読んだミユキが問い返してくる。

ミユキは職場の同期で、一番の仲良しだ。

「うん。元カレ?大学の時につきあってた」

「ふうん。卒業してからもつきあってたの?」

「ううん。私、こっちに就職で、あいつは地元で就職。そのまま自然消滅な感じかな」

「へえ。それにしても、卒業して何年経つ?連絡とかしてたの?」

「就職してすぐはね。あいつからたまにメール来て返事して。けど新人研修でめっちゃ忙しい時期、あったじゃない?その時に返信しなかったら、来なくなってたっぽい」

「ふうん。映画に誘ってるようで誘ってない変なメール。この映画って憶えてる?」

「たぶんあの映画だろうなっていうのはあるんだけど。私、映画で泣いたおぼえってないんだよね」

「他の子と勘違いしてるとか?」

「あー。それはないない」

「即答?」

「そんな器用なタイプじゃなかったもん。今は知らないけど、要領悪いというか、不器用というか」

「フタマタとか、ありえないと」

「そういうこと。あ、もしかしたらあれを勘違いしてたのかも」

「あれって?」

「私、花粉症ひどいの知ってるでしょ?」

「うん」

「映画観に行った時って、春だったんだよね」

「あ、そりゃ勘違いだわ。でも、久しぶりにメールよこす元カレもだけど、ユミもメアド変えてないとか珍しいんじゃない?」

「メアド変えるの面倒。大学の時の友達とかサイトとか、いろいろ」

「まあ、それはわからないでもないか。嫌な相手は拒否ればいいだけだもんね」

「そういうこと」

 

ミユキはしばらくメールの画面を見ながら言った。

「なんか、文脈がヘン。統一性がないというか、とってつけたような言葉が入ってる感じ」

「でしょ?言葉づかいとかは、あいつなんだけど。なんかしっくりこないんだよね。含みがあるっていうの?言いたいことがあるけど言わないみたいな」

「ああ、そんな感じ。このタイミングで、それを言う?みたいな」

ミユキは、メールの文面をぶつぶつとつぶやきながら読んでいった。

そして(あ!)という顔をして、私を見た。

「ユミ、この元カレくんのこと、まだ好き?」

「へ?いきなりどうしたの?好きかと聞かれたら、嫌いじゃないと答えるレベルかな」

ミユキはメールの画面を私にむけて言った。

「元カレくんのメール。各文のいちばんあたまの文字を縦に読んでみて」

「縦に?お・ま・え・ガ・す・・ま・た・つ・・あ・つ・てって、なにこれ」

「コクられてるよ、ユミ」

「いや、イヤじゃないけどさ。何をいまさらって感じだし」

「マサくんもいるしね。というかつきあってた頃の映画もちだすとか未練たらたらって感じ」

「だよなあ。返事、スルーしちゃだめかな?」

「そこはユミの自由だけど。またこんな未練メールきてもいい?」

「よくない。けどどうやって断ろう」

「まねっこしたメール返せば?」

「まねっこ。それならありかな。きづけばだけど」

そうして、私は元カレへのメールを打った。

 

********************

 

”ごぶさた~”

”めずらしい人からのメールで、びっくりしたよ”

”ん~。何年ぶりだろう?”

”帰省も、このところできてなくて。そっちもだいぶ変わっただろうな”

”安い!がウリだった、あの映画館まだやってるんだね”

”つまらないギャグには慣れてるから、大丈夫”

”変わってなくて、安心したよ。じゃあね”

 


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― 新着の感想 ―
[一言] よくある手口なのに、言われるまで気付きませんでした。 悔しい。 元カレ君、ファイト。
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