第9話 ショッピングモール
「ホストになったって言ったじゃない?先月のお給料大台乗った!3桁!」
ユズからのRAINに返信する。
「おぉ!頑張ってるんやね」送信
「でもダメ、スーツ買ったからお金もう無いし」
「そんなに高いスーツ買ったの?」送信
「そう。お客さんから貰ったオメガの腕時計に似合うスーツにした。仕事で必要な物買い揃えてたら、正直お金は常に無いね」
「ホストも大変なんやなぁ」送信
「まあね」
「今、買い物してるからまた後でな」送信
今日は、ショッピングモールに来て買い物をしている。
普段履いているスニーカーがそろそろ限界なので買いに来た。そう言えば、ボールペンが無かったなと思い、文具売り場に行きボールペンを探す。
すると、文具売り場のレジを終えた佐藤ゆりさんらしき人を見つける。手には今、買ったばかりであろう袋を持っていた。
「佐藤さん!」
思わず声をかける。
佐藤さんともう1人横にいる初老の方・・・お母さんだろうか、2人が頭を下げた。
「偶然ですね」と声をかけると、細身の優しそうな女性が、佐藤さんにどちらさま?と聞いている。
「私、佐藤さんの施設にパンを卸している、パン屋の職員の吉田貞子です」と自己紹介をする。
すると、ふわりと笑顔になり
「まあ、お世話になってます。ゆりの母です。いつも、食べてますよ。美味しいですよね」と挨拶をしてくださった。
「佐藤さんは今日はお買い物ですか?」と聞くと「はい」と答えてお母さんの方を見る。
「この子、折り紙が大好きで、お給料を貰うと必ず折り紙を買いに来るんですよ」と話す。
「折り紙が好きなんですか?」と聞くと
「はい!施設から帰ると、毎日折り紙をしています」と話す。
お母さんが「お給料の五千円全部使って折り紙を買っちゃうのよね」と笑った。
それではと、軽く挨拶をして見送る。2人は仲良さそうに帰って行った。
1ヶ月働いて、お給料が五千円・・・
そんなに安いんだ・・・
私の中で何とも言えない、理不尽と言って良いのか、とにかくごちゃ混ぜの感情が動いていた。
今日、私が買ったスニーカーは約五千円。佐藤さんのお給料の1ヶ分・・・。
私が悪い事をしている訳では無いのだが、何故か人として、恥ずかしくなる思いがした。