第1話 序章
「そういえばさ、大学入ってから彼女出来たんだ!今度、ユリちゃんにも紹介するね!」送信。
大学に向かうバスの中、僕はユリちゃんにRAINを送信した。
僕には、高校生の時にネットゲームで知り合ったオンライン友達が居る。ハンドルネームは、ユリ。彼女とはRAINで定期的にやり取りをする仲だ。
RAINに既読の文字が出る。
「ほんまに?よかったなぁ、今度写メ送ってなぁ!」
ユリちゃんは、京都に住んでいる。年齢は、非公開。僕よりは歳上、かな。実際に数回会ったことがあり、それ以来の友達だ。
僕は東京の大学に通っている。大学は首席で入学。ただ大学生活は、あまり馴染めていない・・・。
何故、馴染めていないのか、疎外感を感じているのか・・・僕自身の事なのだが、分からなかった。
高校生の頃は、友達とキチガイの様に騒いでいた。
大人になった?いや、違うな・・・。
大学の少し手前で停車したバスを降りる。
ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐり、顔を上げると藤の花が咲いていた。リュックからゴソゴソと、最近購入したばかりのワイヤレスイヤホンを取り出し、耳に付ける。
沈むように〜堕ちるように〜最近流行りの曲を聴きながら大学の門をくぐった。