22.サキュバス討伐隊
「久しぶりだ、マーガレット」
「よお、レスター」
通称『マーガレット宮殿』と呼ばれるマーガレットが自身の為に建てた城の様な建物。そこに働く者は全て女とし、そのほとんどが下着のような格好でマーガレットに仕えている。そこへ第一王子であるレスター王子が尋ねて来た。
応接室のソファに座るマーガレット。両脇に艶やかな美女を抱きながらやって来たレスターに言う。
「どうした? 何かあったか?」
レスター王子はマーガレットの所謂『悪友』と言う存在。このふたりが集まると必ず何かが起こる。レスターが答える。
「いや、別にない。ただ暇だからやって来た」
ソファに座ったレスターの隣にも美女がやって来て寄り添う。給仕がワインとグラスを持って現れる。マーガレットが言う。
「何か面白いことはないかね」
レスターが答える。
「どうだ、久しぶりに『令嬢狩り』にでも行くか?」
「おお、いいねえ。しばらく行ってねえ。どこだ? また地方令嬢か?」
マーガレットが興味深そうに言う。レスターが答える。
「そうだな、ちょっと調べておくよ。楽しみにしていてくれ」
王子と言う立場上、レスターにとって国中の貴族の情報を得ることは造作もないことだった。
レスターは笑いながらグラスのワインを一気に飲み干し、テーブルに置いた。それに気付いた給仕がすぐにワインを注ぎ始める。しかし緊張した給仕が、誤って服の上にワインをこぼしてしまう。顔が青ざめる給仕。直ぐに謝罪した。
「も、申し訳ございません。申し訳ございません」
何度も謝りすぐに持っていたハンカチでレスターのワインを拭く。しかし、少しの間無言だったレスターが急に立ち上がって給仕の女に言った。
「舐めろ」
「え?」
そう言うとレスターは来ていた服を全て脱ぎ始める。
「な、何をされるので……」
体が震える給仕。マーガレットはにやにやしてそれを見つめる。
服を全て脱ぐ終えたレスター。彼は魔導士であるマーガレットとは違い、生粋の剣士。長身であり鍛えられた筋肉は絵になるような美しさであった。レスターが言う。
「舐めよ。お前が穢した俺の体を、その舌を使って全てきれいにしろ」
「え、え、そ、そんなこと……」
給仕の体が震える。後ろからマーガレットが笑いながら言った。
「早くやれよ。そいつあだ名は『短気な王子様』だぞ。首が繋がっているうちに早くした方がいいぜ~」
それを聞いた給仕は目に涙を溜めながら仁王立ちになるレスターの前に跪き、舌を出した。
「ああ……、あ、ああ……、いいぞ……」
レスターが恍惚の表情を浮かべる。涙を流しながら言われるがままに奉仕する給仕。マーガレットはにやにやしながらワインを飲んだ。
ラホール村郊外の森。サキュバスの集落があると知りやって来た国王軍と村の自衛団。国王兵が叫ぶ。
「行くぞおおお!! 殲滅だああああ!!!」
先にやって来た国王軍は斥候隊の役目を持った小隊で攻撃能力はあまり高くない。村の自衛団も斧やくわを持った男達と、少し魔法をかじった程度の女達。
平和な世になり魔物自体あまり目に触れることすらなくなったとは言え、彼らはサキュバスを攻撃能力が低い魔物だと完全に侮っていた。
「襲撃、襲撃よ!!!! 子供は避難、戦える者は前に出よ!!!」
サキュバスの集落ではヒト族の襲撃の報を受け慌ただしくなる。
「アーニャ、あなたは森の奥へ逃げなさい!」
「でも、ママ……」
泣きそうな顔のアーニャが母親の顔を見る。
「大丈夫、私達も魔族。簡単にはやられないわ」
「うん」
アーニャの母親はそう言って娘の頭を撫でると、避難を誘導する者に娘を託した。
「いい? 全力で叩くわよ」
集落の前に立つ数名のサキュバス。すべて女性。サキュバスの集落に男はいない。
「争いは嫌いだけど、降りかかる火の粉は払うわよ」
「はい!」
集落でも屈指の魔力を持つ選ばれたサキュバスが有象無象の侵略者達を迎え撃つ。集落に向かって走る兵士達がその色っぽいサキュバスの女達を見て立ち止まり、舐め回すように見つめ始める。
頭には猫のような耳、お尻からは短い尻尾。そして着ている服はほぼ下着と言ってもいい色っぽいもの。ムッチリとしたお尻や豊満な胸に兵士達の視線が集まる。そして興奮気味に叫ぶ。
「きゃはははっ!! なんだよ、あれ? 魔族だと思って構えていたけど、いやらしい姉ちゃんばかりじゃねえか!! 犯っちまうか??」
あまり経験がない魔族退治。出撃前から襲う不安を無理やりカラ元気で鼓舞して来た兵士達は、そのあまりにも戦闘に相応しくない敵の姿を見て興奮し始める。
一方サキュバス達は、相手の多くがいきり立った男だと分かって安心する。興奮し、我を忘れた男達の相手はサキュバス達にとって最も組みやすい相手であった。サキュバスのリーダーが言う。
「全力で、行くわよ!!」
「はい!!」
サキュバス達は一斉に魔法の詠唱を始める。
森に棲む精霊に話しかけ、同調、強力。そして宙に文字を刻んで言った。
「快の旋律・魅了」
サキュバスから一斉に放たれる魅了の魔法。
それは目に見えぬ速さで波紋のように広がり、そして興奮して走って来ていた男達を優しく甘く包み込んだ。
「えっ?、え、う、うう……」
男達の足がゆっくりと止まる。後方にいて魅了が届かなかった村の男達へも、サキュバスの立て続けに放たれる魔法の餌食となり足が止まる。魔法や回復担当で来ていた女達が驚いて言う。
「え、ええ? ど、どうしたの? みんな!?」
返事がない。
それを見たサキュバス達が一斉に『魅了した男達』へ指示を出した。
(殺せ。目の前にいる奴らを殺せ)
兵士や自衛団は持っていた武器を振り上げ、目の前にいた仲間に振り下ろした。
ズン!!
「きゃああああ!!!」
支援に来ていた女達の叫び声が響く。
男達は同士討ちを始め、目も虚ろに躊躇なくどんどん斬り合う。
「なんで、なんで、こんなこと……」
信じられぬ光景に驚き動けなくなる女達。
特に村の自衛団の男はまともな防具もつけておらず、斬られるがままとなり次々と倒れて行く。声ひとつ上げずにひたすら殺し合う光景は、まさに常識など通用しない魔族との戦いそのものであった。サキュバスが言う。
「ああ、いい男もいるのに勿体ないわね……」
「馬鹿言ってんじゃないよ! 次、残った女共をやるよ!!」
そう言うと数名のサキュバスが新たな指示を男に送る。
(犯れ。心ゆくまで犯せ……)
指示を受けた男達はすぐに武器を捨てて鎧を脱ぎ、そして恐怖で動けなくなっている数名の女を囲んだ。女達は体を振るわせて涙を流し始める。
「いや、やめて……、どうしたの……、一体どうしたのよ……」
しかし目も虚ろな男達はそんな女の声に耳を貸すことなく次々と牙を剥いて襲い始めた。
「ああ、いい図だねえ」
それを離れた場所から楽しそうに見るサキュバスのリーダー。
「平穏に暮らす私達を邪魔しようとするからこうなるんだよ」
「アーズラ様、大変です!! 斥候隊がお互い殺し合いを始め全滅間近との報告が入りました!!」
「何だって!?」
ゆっくり進軍していた討伐隊本体にいたアーズラが、少し先に様子見に出かけた兵士の報告を受けて驚きの声を上げた。
「何があったと言うのだ? まさか無闇に攻撃を仕掛けたのか?」
「恐らく……」
「くっ……」
魔族、特に魔法を使う相手には慎重に対処しなければならない。平和な世になって以来、兵士にとは言え魔族との戦闘経験が圧倒的に少なくなっている。
アーズラは斥候隊の小隊長の未熟さを悔やんだ。そして皆に言う。
「全軍このまま突き進め!! 恐れることはない、我々は負けない!!」
「はっ!!」
アーズラは自信を持って皆にそう言った。
「あれか……、何と言うことだ……」
サキュバスの集落手前に来たアーズラは、その目に入った悲惨な光景を目にして言った。
多くの男達が剣や槍、斧などで切り刻まれて死んでおり、村の女達もほぼすべてが衣服をはがされ凌辱され殺されていた。
死体はすべて兵士と村人のヒト族。その遺体から流れ出る流血で辺り一帯は文字通り血の海となっており、それを見た実戦経験の少ない兵士達は木々に走り嘔吐を始める。
ザン!!!
バタン……
そして最後に残った裸の兵士がお互いを剣で斬りつけ合い、そしてそのまま倒れ息絶えた。中隊長のアーズラが言う。
「……これは酷い。だが覚えておけ、これが魔族との戦い。舐めてかかるとこのような事になる。俺は負けない。そしてこの倍以上のお礼をあいつらにくれてやる!!!」
アーズラは集落の入り口で立つ複数のサキュバス達を見て言う。同じくそのサキュバス達を見たアーズラの側近が横でつぶやく。
「アーズラ様、あいつら相当高く売れますぜ。見事な肢体、見事な肉付き。ああ、全身舐めまわしたい……」
アーズラの側近が隣で顔を赤くして興奮している。アーズラが言う。
「慌てるな。お楽しみはあいつらを狩ってからだ。完膚なきまでに叩きのめす。第三部隊を前へ!」
「ははっ」
側近はそう返事すると後方に控える数十名の部隊を前に呼び出した。隊が揃ったところでアーズラが言う。
「先程殺し合っていた奴らは恐らく魅了による洗脳だ。魔法を弾く手段を持たぬ奴らが見た目に騙されて突入した結果だ!!」
アーズラは第三部隊の隊員に続けて言う。
「だが我々は違う。国王軍騎士団の実力を見せてやろう。いざ、前へ!!!」
「はっ!!!」
アーズラ率いる第三部隊が大きな声を上げて集落入り口に立つサキュバス達に対峙した。それを見たサキュバス達が言う。
「また来たかい。あれが本体なのか? 愚か者達め。目の前の血の海を見て何も思わないのかい? まあいい。また男ばかり。魔族の恐ろしさ、とくと知らしめてやる!!」
サキュバス達は既に勝ち誇った顔をしてアーズラ達を侮蔑した顔で見た。
しかしこの時点でアーズラ以下、第三部隊の隊員達が装備している『特殊な刻印』が入った鎧に気付くことはなかった。
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