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後編

パパママの夫婦喧嘩勃発。

真澄ちゃんをこれ以上不安にさせないでぇ!


「俺がなにをしようと勝手だろう! お前にとやかく言われる筋合いはない!」

「でも、それは貴方の物ではないでしょう? お義兄さんの会社の株を勝手に売り飛ばすなんて、ドロボウと同じだわ」

「なんだとぉ? お前が俺の給料で、勝手に他所の病院に真澄を通わせるのと同じじゃないか?!黒川の病院に行ってないだろって、母さんから叱られたんだぞ!どうしてくれるんだ!」」


 パパは手当たり次第に回りにあるものをママに投げつけながら叫んでる。目が血走って、ムキになって、なんだか駄々っ子みたいだ。


「だけど、真澄は少しずつ元気になってきてるじゃないですか」

「そんな事知るか! お前が勝手に産んだ子どもじゃないか。どうでもいいんだよ!」

「…ひどい。」


 階段の影に隠れて聞いていたら、急にバシッと物凄い音が聞こえてびっくりした。そっと覗いてみると、パパがほっぺを押さえてソファに倒れこんで、ママを睨んでた。


「もうお前なんか用なしなんだよ。俺を敵に回したらどうなるかわかってんのか?」

「分かりません!分かりたくもありません! 貴方は真澄の父親なんですよ。もっと真剣にあの子のことを考えてあげてください」

「あーっ!うるさいうるさい! どけ!!」


 ママを突き飛ばして、そのままパパは家を飛び出して行っちゃった。


 どうして?どうしてパパはあんなひどい事言うの? 私、知ってるよ。本能寺のおばあちゃまがおじちゃまと話していたもん。

パパがママのことを好きになって、無理やり結婚させたんだって。おばあちゃまはお金持ち同士で結婚しなきゃダメだって怒ってたけど、私がお腹の中にいたからしょうがなかったんだって。


それなのに、あんな言い方するなんて、ひどい!パパはもう、ママや私のこと、キライになっちゃったの?


 私、そのまま息が苦しくなって、そうしたら急に咳が止まらなくなって、そのまま階段で倒れてしまったみたい。

 ママがすぐに気が付いて貼り薬を貼ってくれたけど、きつい発作はなかなか止まらなかった。


 次の日、ママは私を山野診療所に連れて行ってくれた。電車を乗り継いでどんどん山奥に進んでいくの。暖かくなってきて、ハイキングに出かける人たちがたくさん電車になってる。だからかな。今まではこんなに辛く感じなかったのに、今日は電車に乗っているだけで胸が苦しい。

 診療所まであと少しっていうところで、電車が急ブレーキをかけた。ものすごい音で電車がガガガーっとゆれて、まるで電車ごとでんぐり返りをしたみたいになった。


 私はママと二人でボックス席に座っていたんだけど、電車が横倒しになった拍子にガラス窓でめいっぱい頭をぶつけちゃった。ママは一生懸命私の盾になっていてくれたみたい。

 そっと目を開けると、目の前にハイキング姿のおじさんが倒れていて、耳から血を流してうなっていたの。

 

 怖い! 私達、どうなっちゃったの?


 ママは私が無事なのがわかると、ほっとした顔つきになって無理して笑ってくれた。だけど、周りはほこりがもうもうと立ちこめて息が苦しい。


 いやだ。今、発作が起きちゃったらどうすることも出来ないのに。。。のどがヒューっと小さな音を立てた。怖い、この音が出始めると発作が起こってしまう。


 ママはすぐに私の気持ちに気付いて、上着のポケットからハンカチを取り出してくれたの。それを口に当ててしばらくはがまんしなくちゃ。

 よく見ると、ママも怪我したみたい。時々つらそうな顔をしてる。


 ほこりがおさまってくると、だんだん周りが見えてきて、あまりにひどいことになっていて息がつまりそうになった。

 くるしいという声、うーんとうなっている声が、山の中の小川の音に混じってあちらこちらから聞こえてくる。


「大丈夫ですか?」

「こっちのドアが開いたぞ!動ける人はいったん電車から出よう。」

「早くどいてくれ。苦しい。。。」


 だれかが横になった電車のドアを開けてよじ登ってる。みんなが動き出すと、ぎしぎしって聞き慣れない音がしてこわい。


「ママ、大丈夫?動ける?」

「真澄、ごめんね。だれかがママの背中に乗っているみたいで動けないの」


 ママは苦しそうに言う。周りでは、じわじわと動ける人たちが外に出たり、他の人を助けたりし始めてる。



「大丈夫ですか? しっかりしてください! …だめだな、脈がない。。」


 お兄さんの声がして、ママの上にいた人をどかしてくれた。


「大丈夫ですか?」

「はい、ありがとうございます。真澄、大丈夫?」

「うん、たぶん。。。」


 お兄さんが私のことを抱っこしてくれて、ママと私は山の斜面に出ることができたの。ママは何度も何度もお兄さんにお礼を言ってた。でも、私、声が出せない。苦しくて。


 ヒュー、コンコン。。。


 とうとうガマンしていた咳が出始めちゃった。咳が続くと余計苦しくなるのに。


「真澄! 大丈夫? ちょっとここで待っててね。カバンを探してくるわ。カバンさえ見つかれば、お薬が入ってるの!」


 ママはそういって、せっかく出てきた電車によじ登って入っていった。


コンコン、コンコン。咳は続いている。どんどん体が熱くなって、息を吸うことができなくなってくる。

 

『ママ、早く戻ってきて!』


 叫びたいのに、声を上げる事もできない。咳は次々出てきて頭がくらくらして、私は線路の際の木の根元によりかかって座ったの。それでも咳は止まらない。


苦しい、苦しいよ。ママ、早く戻ってきて。


「真澄!しっかりして!」


 急に近くでママの声がして顔を上げるとそこらじゅう擦り傷だらけになったママがカバンから薬を出してるところだった。だけど、もう時間がないよ。


 ママ、今までありがとう。


 それだけは自分の口で言いたかったけど、声を出そうとすると、咳がひどくなって、それなのに空気が全然吸えなくて、ただママの腕にしがみつく事しかできなくて。



 気がつくと、とても体が楽になっていて、ふわふわと空の上を飛んでいるの。下を見下ろすと、ママが私の体を抱きしめて泣いてる。だけど私はどんどん上へと流されていくの。


 上から見ると、電車が脱線しているのがよくわかる。電車の先頭の方にはバラバラになった男の人と女の人が散らばっている。

 そこからすうっと立ち上っていく男の人は、一緒に空に上っていく女の人を大事そうに抱きしめてるけど、女の人はなんだかご機嫌斜めみたい。


 あ、あれは美優お姉さんだ。美優お姉さんはパパの妹なの。だから本当はおばさんなんだけど、お姉さんってよびなさいっておばあちゃまに言われていたの。


 びっくりして、ママに伝えたくて、下を見下ろしたけど、もうとても高いところまできてしまって、ママには届きそうもなかった。

 

 ママ、今までありがとう。私がいなくなったら寂しいだろうけど、もうパパと一緒にいなくてもよくなるね。私、知ってるの。ママが私のためにパパと離婚しないでがんばっていてくれてたこと。本能寺のお家から離れて、幸せになってね。


 私、お空の上からママのことずっと見てるから。


おしまい


喘息は時間をかけて治していく感じですよね?

喘息の症状を持つ方に不快でないといいなぁと願っています。

次はシーズン3に続きます。どなたが語るのでしょう。

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