去りゆき消えた我が王よ
戦場。
転がり連なる人の骸……
「はぁ…はぁ……っ! 」
痛みに耐えて重い体を引き摺りながらあの人の影を追う。
どこ……?どこにいるのですか…?
ガランッ
!?
何処から出てきたのか目の前に敵の兵士と思しき者が剣を片手に出てきた。
「まだ残っていたのか!?…去ね!」
「くっ…!」
振りかざされた剣をとっさに身構える事が
出来ずに思わず目を瞑った。
ザシュッ
肉を斬る音が聞こえたがいつまで経っても
痛みは来ない。
むしろ何も起きなくて恐る恐る閉じていた目を開けると…
ポタッ ボタタタタッ
地面に赤い液体が広がるように水溜まりを作っていく。
それが血だと、すぐに気がつくと目の前の人物に目を見張った。
「よかった……最期に、お前だ…けでも、守れ…た]
そう言って目の前の人物は……
いや、自分が探していた人は安堵するかのような微笑みを浮かべ崩れ落ちるように倒れた。
「あ…?あぁ……ああああああああああああ!!]
脳裏にはいつしかの会話が蘇る。
『これが終わったら皆で茶でも飲もう! ん?酒? おいおい。 酒は飲めないって言ってるじゃないか。 そうだな…祝いの席だ 少し飲もう』
赤い夕暮れからなりゆっくりと日が落ちるように暗く夜に変わる。
目の前にスゥと白い影が映る………
○○よ……どこにいるのだ?
せっかくのお茶が冷めてしまうぞ
あれは誰…?
思い出せない……
ああ… そこにいたのか。
早く、皆が待っているぞ。
それはきっと、大切な人……
涙が止まらない。
どうして………
気が付いて、目を覚ますと木の天井が見える。
身体を起こせば激痛が走ったが現状がどうなってるか知るには起きなければ………
見渡せば、少し汚れた白い服を着た人達が走り回っている。
むせ返る程の薬品の臭い…
医療施設……?いや違うか…
「あ、目が覚めた?」
室内を歩いていた少女がこちらに向かってくる。
「良かった!あなたが1番長い時間眠ったままだったから、もうダメかと思っていたの。 まだ花を添えなくて良かったわ」
縁起でもないことを言う子だ。
私は生きているのか?
あの人は? 私をかばってくれたあの人は……
「大丈夫?…ねぇ……」
少女の声が聞こえなくなっていく。
あぁ……ああああああああぁぁぁ!!
声にならない声がその部屋に響く。
もう、わからない…
あの人の為に 私は何ができるの?
もう……
遠い昔の記憶………
「生きて……生きて幸せになって欲しい。 戦を、わたしを忘れて、君には生きてほしい 」
「はぁ? 何を言っているんですか。絶対イヤです。 まず死なせません!というより忘れて欲しいのなら最初から私に構わないでいれば良かったんですよ。人が消えても記憶や思い出が残るんですよ? まったく、はた迷惑な話です」
あの時、あの人は笑っていた。
まったく……最後まで迷惑な人だ。
数日後、その小屋に敗戦の知らせが届いたが読む者は誰もいなかった。