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ポコノトリガー

 ポコについての話を聞く前に、セルコンさんはお茶を出してくれた。

 このお茶はなんのお茶なのだろうか。薬品みたいなのがたくさん置いてある棚から取り出していたので怖くて聞けなかった。でも美味しいからいいや。


「まずはそうね、驚いたことから。ポコはあなたといる時に、親である私にさえ見せなかった表情をしていたの。初めて見たわ、あの子のあんな幸せそうな顔」

「え、そうだったんですか?」


 驚きだ。そんなに楽しそうにしていたのか、ポコ。

 私といると楽しいのかな。嬉しいな、なんか。


「ええ。あの子は友達を作らなかったから。いつもいつも、15歳になったら魔術師として働くんだと言って同じ年の子と遊ぶのを我慢していたのよ。だから、私が働くことを止めた時にショックを受けたのでしょうね……」


 それはそうだ。子供と言えば遊ぶのが仕事。それを我慢して勉強をしていたのだから、嘘をつかれた時の反動はより大きくなる。


「本当に、残酷なことをしていたのね。私、ポコが危険な目にあったらどうしようって思って、本人のことを考えてなかった。魔術師としてではなく、母親としてあの子が心配だという気持ちが勝っちゃったの」

「その気持ち、わかります。危なっかしいですよね、ポコ」


 ポコの天然が炸裂するシーンが脳内で蘇る。すぐそこにある道を見失ったり、毒草を間違って採取したり……戦闘中にうっかりが発動しなくて本当に良かった。

 一人だと心配という気持ち、今なら物凄く共感できる。


「うふふ、でもこれからはあなたがそれをカバーしてくれるんでしょう?」

「はい、もちろんです。……少しくらいは直してほしいですけどね」

「そうね、私としても困っちゃうわ。外面だけじゃなく、内面の成長も見たいもの」

「きっと驚くほど強くなりますよ。だって、私の目的は世界を旅することですから」


 時間がかかるのもそうだが、世界中を旅することで様々な経験を得ることができる。

 私の知らないことは山ほどあるのだ。王国だったか、そこさえ行ったことのない田舎者だからね。


「次はそうですね、普段のポコについて教えてください」

「普段のポコ? 今のポコより少し落ち着いてて、まっすぐだったわ」

「落ち着いてるポコ……?」


 止まれば死ぬマグロみたいなやつなのに、落ち着く……? ちらっと顔を見たら目を輝かせている犬っころが落ち着く……?


「あんな感じになったのはあなたと出会ってからよ。もうこの先のことが楽しみでしかたないって顔に書いてあったもの。もしかしたら、あなたが旅に誘わなくても勝手に旅に出ていたかもしれないくらいにね」

「まあ、私が旅について話したらすごい興味津々でしたから、ありえますね」


 ド田舎の村に閉じこもっていた私と、魔術師としての勉強のせいで人との関わりが少ないポコ。

 やばいな、これは何から何まで経験したことないぜってペアだ。この旅、情報が大事になってくるぜ。


「それで、さっきも言った友達付き合いだけど……本当に仲のいい友達はいなかったの。話をする程度の相手ならいたけれど、遊ぶ相手なんていない。友達を作ろうとしても、魔術の勉強があるせいで付き合いが悪いと言われてすぐに離れてしまう。ポコはそれを受け入れて、魔術の勉強に専念することにしたの。受け入れた、というよりも諦めたという方が正しいかしら」

「諦めた……」


 試してダメだったから、親のために、自分のために後悔しないよう魔術に専念したのか。

 それと、友達が離れるという経験をして嫌になった。その二つだろう。私も経験がある。近所の男の子と喧嘩をして、敬遠になったりした。だから多少は気持ちはわかる。

 私は、魔術のように熱中できるものがなかったな。あったら、多分旅に出ないでそれを夢にしていたかもしれない。


「だから、その反動であんな感じになっちゃったのかもしれないわね。仲良くしてあげてね、エファちゃん」

「はい。でもまだポコは変化しますよ、この先で出会う人々がポコと関わって、変わっていきます。私もそうです」

「そうよね、旅ってそういうものだものね」


 旅が私を作る、人が人を作る。

 私がこうしている間にも、私は関わっている人を形成している。


「お母さん! 空き瓶ってここになかったっけ!?」

「」

「ポコ!? って、それどころじゃない! 空き瓶!」


 セルコンさんのポコ呼びに驚くポコだったが、準備に必死だったようでさらりと流した。

 空き瓶……薬でも作るのかな。


「嵐のような奴だ……」

「楽しそうねー」

「あれ楽しそうですかね」


 王国まで歩くのに、そんなに荷物が多くて大丈夫なのだろうか。なにあの釜、小さいけど絶対重いよ。

 まだまだ準備には時間がかかりそうだ。ん、なんかお腹空いてきたな。


「あ、そういえば干し肉があった」

「干し肉?」

「ええ、豚肉とキラーラビットの肉の二種類を……あれっ」


 昨日の豚肉もこっそり干し肉にしていたのだが、なんだか量が少ない。

 というか、豚肉しかなくない? え、食べたっけ? おやつ感覚で帰り道食べてたっけ?

 いやそんなはずはない。流石のポコとはいえ瞬時に干し肉を食べるなんて曲芸はできないはずだ。


「お腹空いたあああ!」


 なんて思っていたら、私よりも肉を食べていたはずのポコが部屋に戻ってきた。

 なぜだ、私もポコもお腹いっぱいになったはずなのに。こんなに早くお腹が空くだろうか。

 あまりにも不自然すぎる。私は状況を整理することにした。

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