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ご注文はキラーラビットですか?

 残りのキラーラビットが逃げたことにより、ラビト山に静寂が訪れた。

 土と草に飛び散った肉片や血しぶき。辺りに散らばる死体、まさに地獄であった。流石にこれを放置するわけにはいかない。


「ポコ、燃やそう」

「え、埋めるんじゃないの?」

「これだけ量があったら埋めるだけでも大変だし、死体に魔物が集まるかもだし燃やしちゃった方がいいかなって。とにかく、燃やすから一か所に集めよっか」


 キラーラビットを拾っては、掘った穴に入れる。枯葉や枝も投げ入れたので火を付ければ燃えるだろう。


「あれ、何匹か残ってるけど」

「これ? 食べてみようかなって」

「嘘でしょ!? ま。魔物だよ?」

「うん。でもお肉じゃん。解毒草も解毒魔術もあるし何かあっても大丈夫大丈夫」


 なるべく内臓が潰れていない個体を選んだ。血抜きもすでにできているだろう。

 お腹は空いた、勝負は勝った。ならば次は食べるだけの事!

 簡単に解体し、肉にする。毛皮は……状態が良くない。突進ばかりするから、身体をよくぶつけるのだろう、傷が多いためお金にはならなそうだ。


「はい、焼いてみて」


 ポコが準備していた焚火に肉を置く。焼けるまでにこのボスを解体してみようか。


「はー綺麗な毛皮……これなら売れそう」


 戦闘中は一心不乱だったためしっかり観察することはできなかったが、改めて見ると綺麗な獣だ。

 真っ白な毛皮に透き通った青い角。聖獣と言われたら納得するくらいには綺麗だ。これが凶暴じゃなかったらなぁ。


「かったい!?」


 毛皮を剥がしているときになんとなく気付いていたが、肉が固い。おかげで皮を剥がすのが楽だったが、食べられるかなぁこれ。


「おっ?」


 少し柔らかい部位がある。これは……私が殴ったところかな? 肩肉に近い部分、ここを食べよう。


「いやぁ、魔術は便利だぁ」

「魔術をそんな風に使う人初めて見た……」


 私が余った肉を使い風魔術で干し肉を作っていると、ポコが話しかけてきた。

 魔術は基本的に誰でも使える。もちろん魔力を使うので使える範囲は人によるが、私からしたら初級の魔術が使えれば十分だ。生活に便利すぎる。特に火とかね。


「そろそろ焼けたし食べよう。いただきます」

「見た目は普通のお肉だ……」


 串に刺さったうさぎの肉を頬張る。

 食感は……鶏肉かな、でも噛み応えがある。うん、まずくはない。全然食べられる。特に後ろ足の肉、ここはちょっとだけ美味しいかな? 硬いけどね、まああの突進をする筋肉だし当然か。


「焼けば食えるよこれ!」

「うぇぇ……」


 でも魔物だしなぁと嫌がるポコ。しかしお腹が空いているのだろう、嫌々食べる。

 二回三回噛むと、あれっ? と首をかしげてもう一度肉を口に入れる。そうだろうそうだろう、まずくはないのだ。反応に困る奴だ。


「魔物って食べられるんだねー」

「動物がベースの肉なら食べられるんじゃないかな? 今回は食べられるけど、すごく美味しいわけじゃないし、魔獣の方が安全かも」


 魔獣と魔物、似ているようで違う。魔物は魔力から生まれる生き物。魔獣は特殊な獣や突然変異した獣。

 昨日倒した豚は野生化しているだけで突然変異ではなかった。ただの動物だ。

 魔獣は凶暴で、魔力を使った攻撃もしてくる。そこが魔獣と動物の大きな違いだ。魔物は量産型魔獣みたいなものとでも思えばいい。


「お待ちかね、ボスのお肉ですよ」


 焼きあがったボスの肉を同じように頬張る。


「んぐっ!?」


 こ、これは! うーまーいーぞー。

 先程のキラーラビットとは完全に別物だ、だって肉に味があるんだもの。

 さっきの肉が塩味のなにかだと思えてしまうほど、味がついていた。この感覚は……昔食べた謎肉に似ている。脂がくどくない、飲めそうなくらいにさらさらしている。


「すっごいよこれ!? じゅわぁって言った!」

「うん……これは感動しちゃうね……ねえ、このボスは本当に魔物なの?」

「どうだろう……キラーラビットと同じ形だけど、角とかも全然違うし、毛皮も綺麗……お母さんに聞いてみたらわかるかも」

「じゃあ角を切り取っておこうかな」


 毛皮だけじゃなく、角も持ち帰ることに。綺麗な物ってなんか持ち帰りたくなるよね、子供の頃に綺麗な石を持ち帰って怒られたこととか、みんなあるよね。

 と、お母さんで思い出した。セルコンさんにレンキン草を届けなくてはいけないのだ。

 ボスのお肉は食べられる量が少なかったので、すぐに食べ終わった。美味しかったなぁ、もっと食べたかった。


「フレイム!」


 ポコが魔術を使い穴に火を入れる。中に入っていた木の枝や枯葉が燃えて、やがてキラーラビットも燃えていく。流石魔術の火力、普通の炎じゃもっと時間がかかるところだぜ。

 燃料が灰になり、キラーラビットが骨になっても燃え続ける炎。死体から出た魔力が燃料になっているのだ。少ししたら消えるので今のうちに土をかぶせて埋める。


「ふいー終わった。キラーラビットは倒したし、レンキン草を採取しちゃおっか」

「そうだねー、ここから先はわたしにまっかせてよ!」

「はいはい、頼りにしてますぜー隊長」


 道を逸れて森の中に入っていく。この中で襲われてたら危なかったなーと思いつつ、奥に入っていく。

 途中で薬草や食べられる草を探しながら歩くため、飽きたりはしない。小さい鍋も持っているから、スープを作るのもありだな。食べられる草と一緒に煮込めば肉に付いた獣の臭いも消えるし。


「見つけたー!!」

「あっ、もう……待ってよー」


 レンキン草を見つけたのかポコが走り出す。私はその元気さにあきれながらも、条件を達成したことによる嬉しさからか無意識にスキップをしていた。

 これで一緒に旅ができる、そう思いながら、レンキン草やその他の草も採取したのだった。

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