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作戦会議は最大戦力と共に

 白い布と簡単な骨組みで作られたテントに、人が集まっている。地面が常に小さく揺れているのはあの動いている山のせいだろうか。


「人も集まってきたね」

「うん、これが本当の最後の戦いだろうし、気を引き締めていかないと」


 王様が連れてきた遺跡にいる探索班が拠点に到着する。

 アカネさん達と軽く話をし、すぐさま作戦会議用のテントに入る。人数を考慮して一番大きなテントを使っているので狭くはない。昨日の作戦会議は狭かった……。


「今から作戦を言う! よく聞くがいい!」


 ゴクリ、とその場にいる全員が喉を鳴らす。少しのミスで沢山の人が死ぬかもしれない、大切な作戦だ。聞き逃すことの無いように、テントが静まり返る。沈黙の中、王様の言葉を待つ。


「途中で確かめてみたが、奴は目の前の敵にエネルギー光線を放つことが確認されている。しかし背後の敵には全く反応しない」

「つ、つまり?」

「調査隊は後ろから調べ、戦闘班は正面から移動を食い止める!! 以上だ!」

「えっ? それだけですか?」


 まさかの作戦の短さにテント内がざわつく。


「それ以外に何がある。あれだけの山が動いているのだ、動力部がどこかにあるに決まっている。それに、少しずつスピードも上がってきているのだ。やはり早期決着が理想であろう?」

「まあ、このままスピードが上がったら間に合わないかもしれないですしね……」


 スピードが上がっている。どこまで速くなるかわからないのだ。もしかしたら、明日には到着してしまうかもしれない。もっと言えば、今日中に到着する可能性も。なるほど、急がないと間に合わないね。

 しかしこの場合私は何をするべきなのだろうか。やはり正面から足止め?


「で、でもあんなに大きな身体を止めることができるんでありますか!?」

「その点については問題ない。攻撃中は加速が遅れるのだ。耐えるだけでも時間稼ぎになるのだから、難しい仕事ではあるまい」

「そうなんだー」


 攻撃中に加速しなくなる、ね。でも攻撃で止めるのはやっぱり無理かな。

 猶予は決まっている。もう王国に残された時間はほとんどないのだ。


「それではこれより班を決める。攻撃班は正面で動き回り加速を抑える役割と、巨大な足を破壊する二班に分かれよ。魔術師は数名の攻撃班を連れて内部の探索だ。動き始めたことにより隠された遺跡の通路が発見されたからな」

「そうなると……ポコと隊長が内部の探索かな。私は動き回れるし正面だろうし」


 エネルギー光線ってどんな感じなんだろうか。動き回れるとは言ったが飛び回るのは難しそうだ。

 そうなると足の破壊かな? 実際正面は守ったり避けたりするだけだろうし、正面が休憩なのでは。


「ふむ……そうか、お前達三人が分かれるのか。それは良くないな。よしエファ、貴様は後から来い」

「は、はい? 後からですか」

「ああそうだ。しばらく正面で戦った後、内部に入り込むのだ」

「しばらくって、どのくらいですか」

「しばらくはしばらくだろう。ふむ……そうだな、ギンに合図を出そう。時間になったら迎えにいかせる」

「分かりました」


 私にだけそんな指示をした意味が分からないが、とりあえず従っておこう。全員できることは限られているのだ。深く考えるだけ無駄だ。


「王様! 僕は何をすればいいですかね! やっぱり魔術でドカーーンとやっちゃった方が楽に勝てるんじゃないでしょうか!」

「落ち着けポルカー。貴様は当然内部だ」

「ええーーー」


 それにしても本当に自由だなこの人。大人とは思えない。

 子供の心を忘れないのはいいことなのだが、まあ、うん。


「今回は私も戦おう」

「え、王様って戦えるんですか!?」


 王様のまさかの言葉に思わず口に出してしまった。


「おいエファ! 失礼だぞ!」

「だってダルク、王様が戦ってるところ想像できないし」

「王様はこの国一の大剣使いだぞ? 知らないのか」

「ええ!?」


 なんでこの人王様なんてやってるの? って思ったけど生まれた時から王様になるのは決まってたのか。強いけど王様やってるからあんまり戦えないと。何それ凄いかっこいいじゃん。


「うるさいぞ貴様ら! 黙って準備を進めよ!」

「は、はい!」

「すみません!」


 怒られながら外に出る。準備といってもやれることはない。外に出て揺れから距離を把握するくらいだ。


「本当に今から戦うんだー」

「ね、なんかそんな感じしないよ」

「吾輩たちにできることをするだけでありますなー」


 私たちはそれぞれの感想を言い合った。全員戦うことはできるのだが、不安が大きく慰めあっているのだ。大丈夫、自分ならできると。

 人の命がかかる、しかも大人数、そんな状況で落ち着いていられるわけがない。全員内心ビックビクだ。


「不安になってる場合じゃないぜ? この戦いはあんたらに掛かってるんだ。たった三人であの戦力、弱気になられたら困る」

「アカネさん……」


 アカネさんだって戦力ではないか。一撃の威力の安定性ならば私以上だろうし、戦力として見るならアカネさんの方が大きいような気がする。


「後悔ってのはさ、後からしかできないんだ。戦う前から後悔なんてできねーし、今出せる全力を出せばそれでいいだろ?」

「アカネ様の言う通りだ。気を引き締めろ。弱気になったら勝てるものも勝てないぞ」

「ハックの癖に生意気だっ! でもま、ありがとね」

「なっ!?」

「……………………ハックが照れてる」

「珍しいですねぇ」


 こういう風に他の人と会話をして、不安を忘れればよいのだ。

 移動中はそうやって会話を続け、不安を紛らわせた。最後の戦い、まさか相手が山だとは思わなかったが、これが終わればすべてが終わりなんだ。終わったら、旅に出よう。別の国に行って、いろんな場所に行って、魔獣を倒すんだ。


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