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ここは、不思議なダンジョンだぁ!

 竜車は元が荷物運び用の荷台兼馬車だったため、スペースが広い。なのでちょっとした作業もできるのだ。ポコは相変わらず錬金術を、私は武器の手入れをして時間を潰した。

 そうして時間が過ぎ、やがて巨大な山が見えてくる。山には所々に石材で作られた建物らしきものが見える。建物の壊れ方からして、あれが遺跡かな?

 意外と距離が近いのか、それともギンが速いのかはわからないが、とにかく到着だ。ギンがゆっくり地上に降りる。


「ほら、隊長ついたよー。アバンちゃーん?」


 吐きそうな顔の隊長。一回吐かせとけばよかったかもしれない。


「も、もう飛んでないの……?」


 誰だお前。


「おうさ、降りるよ」

「よ、よし! いざ遺跡探索であります!」

「こいつ……」


 崩壊した建物がいくつか山の上に残っている。おそらく大昔にここに人が住んでいたのだろう。

 建物すべてが崩壊しているため、探索は簡単そうだ。なんて思っていたら、地下に続く階段を見つけた。ああ、この下で探索してるのか。どおりで人がいないと思った。


「ん? 嬢ちゃんたち、ここの探索に来たのか?」


 さてどうしたものかと立っていると、兵士らしき男が階段を上ってきた。どちらかというと騎士だろうか。騎士らしい騎士は王国にいなかったが、ここにいたとは。


「はい、王様に頼まれまして」

「王様に! そりゃ凄い、ならせいぜい気を付けるんだな。遺跡の中は魔力が多い。魔物だって強いのがわんさかいるぞ。遺跡の探索は人が多くて動きにくくなる、ってのを防ぐために大人数では入れない。お嬢さんたちは三人だろ? なら大丈夫だ、行ってこい」

「はい! よし、二人共覚悟できてる?」

「もちろん! でも地下でも使える矢の出番だね!」


 そんな矢があるのか、私、気になります! 地下で戦うって聞いたときに不安だったんだよね、だって矢に当たるかもしれないんだもん。


「吾輩も準備できてるでありますよ!」

「おおそっか、偉いねー。頭撫でたげる」

「な、何をするでありますか!?」

「ほれほれほれほれ」

「うばばばばばばっばばば」


 うへへ取り乱してやがるぜ、普段あんなに自信満々なのに。あー楽しい、何度も言うが弟はこんな反応してくれなかったんだよねー。


「さ、行こうか。と、ギンはお留守番ね」

「クォ……」

「またすぐに帰ってくるからね」


 ギンがお留守番なのは悲しい。仕方ないので山の日向で遊ばせておこう。

 幸い、この山は資源が豊富だ。ちょっと見ただけでも薬草やキノコなどが生えているのがわかる。ギンは肉も草も食べるので、この山は最高の遊び場と言える。


「そいつが仲間なのか。珍しいもんだな」

「ええ、間違って倒さないでくださいね」

「ったりめぇだろ、首輪ついてんだから」


 あ、やっぱり首輪は効果あるんだ。よかった。

 竜車から離れたギンは、日向に移動すると、横になって寝てしまった。マイペースな奴め。

 なんて思ったけど、夜行性では? そら眠いわ。ゆっくりお休み。


「いざ、遺跡探索!」


 こうして、私たちは遺跡に入り、探索をすることにした。


* * *


 遺跡の中は薄暗いが、既に明かりは所々にあり、調べつくされているといった印象。ゴーレムの魔物が多く、進むのが大変だ。一発で砕けるから倒すのは簡単なのだが。


「何かっ! あった!?」


 ドカッバキッと魔物を崩していく。ボロボロと石ころに変わり、そのまま魔力として消える。キラーラビットよりも肉体として強くないのだろう。


「怖いよ倒しながら話さないで」

「ごめんごめん。んで、どうよ」

「何もないかなー。流石にずっと前から調べてるっぽいからこの先も通路があるだけだと思うよ」

「だよねー」


 壁は洞窟とは違い石レンガで固められている。そのおかげで洞窟のような怖さが無いのだが、景色が変わらないのはいただけない。だって景色変わらないんだよ? 今前から来たのか後ろから来たのかわからなくなるんだよ? 洞窟なら壁の形で分かるのに。


「お、部屋があるでありますよ」

「この先も探索されてるっぽいなぁ」


 奥に進むと、大きな四角い部屋があった。休憩所になっているのだろうか、数人の騎士や狩人が休んでいる。

 せっかくなので話を聞いてみよう、挨拶しないのも失礼だし。


「ど」

「どーも!」


 私が声を掛ける前にポコが声を掛けた。くっそ、負けた! 何にだ。

 だが、ポコは会話をしようとせずに、ニコニコしながら私に話す権利を譲ってきた。え、先に挨拶したんだからポコが話すんじゃないの?

 話す権利要らないんだけど。王様と握手できる権利と交換してくれない?


「どーも。新しい狩人さん?」

「そうです。当然初めてなんですけど、この先はどうなっているんですか?」


 どうせ意味のない場所へ行くくらいならヒントを貰おうと思い、聞いてみた。


「この先は分かれ道だよ。いくつも通路があるでしょ? そのいくつかは探索し終わったんだけど、この一つはまだなんだよね」


 部屋からは五つの通路が伸びている。四つは松明が建てられているが、一つは何も建てられていない。

 おそらく何も建てられていないあの通路が未探索の通路だろう。


「探索した通路って何かありました?」

「行き止まりまでは行ったんだけどね。大部屋に石像とかがあるだけだった。最後の通路が難しいから今は探索した通路を細かく調べてるよ。それこそ石像とかね」


 石像……古代の人が作ったとみて間違いない。だとしたら何故こんな地下深くに作るのだろう。宗教とかが関係しているのだろうか。


「石像ですか。えっと、最後の通路が難しいっていうのは?」

「罠が多いんだ。俺達じゃあどうにもできない。一応罠を見つけるのが得意な奴はいたんだけど、辿り着く前に怪我しちゃってね。罠が得意な奴が来るまで後回しだ」


 罠か……罠のための人はいたけど怪我をしてしまい探索ができない。なら、私たちが行くべきはあの罠の通路だろう。隊長はこの前罠は得意と言っていたのだ、きっと大丈夫。


「じゃあ、私たちが行ってきていいですか? 罠が得意な子がいるので」

「任せるであります!」

「…………うん、頼むね」


 大丈夫かな。竜車の時の隊長思い出してちょっと不安になってきたぞい。


「いいけど、気を付けなよ。これまでもこの先の通路からゴーレムが強くなってたから、あの通路も同じだろうし」

「大丈夫ですよ。ここまで余裕でしたし」


 あまりにも簡単に倒せるものだから、実は誰でも探索できるのではとか思っちゃったし。

 でも囲まれたら危ないかも、ゆっくり進めば大丈夫でしょ。


「一旦休憩にして、休んだら出発ね」

「おー!」

「了解であります!!」


 二人にも了解は取った。少し休むとはいってもほんの少しだ。水分補給と、体をほぐす時間程度だね。

 本格的に敵が強くなるであろうこの先、気合を入れて進もう。

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