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ちょうこだいいせきちょくぜん

 私たちは三人揃って宿屋から出た。なぜ実家がこの街にある隊長が一緒に宿屋に泊まったのかというと、一足先に旅気分を味わいたかったかららしい。

 まあ山小屋は宿屋じゃないから別の街に行くって感じじゃないよね。


「おはようございます」


 魔獣牧場のお姉さんに挨拶し、ギンに会いにいく。お姉さんの情報では、もう既に竜車の準備は出来ているらしい。外に行けばあるとかなんとか。


「おお、何度見てもでかい」


 首輪のついたギンを連れ、街の外に出る。壁沿いに見覚えのある竜車が置かれていた。違和感がすごい。


「乗り心地も抜群でありますな」

「移動に特化した造りだね。空飛べるのかぁ、楽しみだな」


 竜車に乗り込むと、そこにはイスが設置されていた。飛ばされないようにストッパーもついている。至れり尽くせりだ。


「ギン! 飛べー!」

「クォォォォォォ!」


 咆哮と共にギンが翼をはためかせる。バッサバッサとギンの身体が浮く。それと同時に私たちの乗っている竜車も浮き出した。

 最初はグラグラしていたが、さすが魔術。揺れは次第に少なくなる。


「お、おおお……! 浮いてる! 私たち浮いてるよ!」

「た、たっかい!!」

「落ちない? これ落ちないよね?」


 ちょっと怖いがこれくらいなら大丈夫だ。

 ギンは遺跡の方向に向かって飛ぶ。ものすごい速さだが、竜車の魔術のおかげか風は少ない。


「あれ、隊長どしたの」


 ふと隣を見ると、隊長が小さくなって震えていた。

 ちなみにだが、この竜車は六人乗りだ。前の席に私と隊長が、景色を見たいと言っていたポコが真ん中の席に座っている。

 後ろの席は誰も乗っていない。乗ってたら怖い。


「こここ、これは大丈夫なのでありますか!?!?」

「大丈夫でしょ。え、なに。怖い?」

「怖いでありますよ!!! 逆に怖くないんでありますか!?」

「そりゃ少しは怖いけどさぁ……ワクワクしない? こういうの」


 私はてっきり、ポコと隊長は冒険の楽しさの方が恐怖に勝つと思っていたのだが……。そうか、隊長は高いところがダメなのか。

 それとも空がダメなのかな? 空の移動は冒険に含まれないとか、そういうの?


「ただの移動であります! こんなに危険な移動は初めてでありますよ……」

「その危機感を冒険中にも持って欲しいね」


 冒険中にそれだけの危機を感じれば紅の女狩猟団にもいられただろうに。いや、そもそも隊長のやりたいことと紅の女狩猟団のやりたいことが合わなかったんだっけ。じゃあ結局抜けてるか。


「しっかし魔術ってのはすごいね。これ商売にできるんじゃない? めっちゃ速いよ竜車」


 六人乗りだから、ギンに指示を出す一人が乗って、残りの五人を運ぶことが出来る。きっとお金をガッポガッポだ。

 でも馬車で稼いでる人の仕事がなくなりそうな気がする。現実的じゃないね。


「遺跡……えっと、ちょうこだいいせきだっけ? 古代の生き物ってなんだろうねー」

「街を滅ぼすんでしょ? すっごく強いか、すっごくでかいかの二択でしょ。それか両方」


 両方だった場合倒せる気がしない。いやすっごく強くても倒せる気はしないのだけれど。

 調査となると、手当り次第に遺跡を探索するとかかな? 罠とかありそうだなぁ、あ、でもお宝があったりして。テンション上がってきた。


「強いだろうねー。でも、止めるってどうやるんだろうね」

「ね。いやもうさっぱりわからん。なんか壊すとか、仕掛けを解くとかかな」


 遺跡、遺跡か。私は村出身だから色々なことが初めてだらけなんだけど、こういう特定の場所っていうのは憧れるんだよね。遺跡、海、城、塔。冒険の匂いがプンプンするぜ。


「それにしても……フォルテシアってこんなだったんだね」


 空から見たフォルテシアは、とても広い。高いところから見ることで遠くまで見ることができるのだが、国の端が見えないのだ。世界は私が思っているよりも何倍も広いのだと実感する。

 無限に広がる森、雲を突く抜ける山脈、あの山の奥には何があるのだろう。あの森には何が隠されているのだろう。そして、どのような魔獣がいるのだろうか。もしかしたら、一生かかってもこの世界を冒険することができないかもしれない。

 少なくとも、私は一生を掛けても満足することはできないだろう。だって、まだまだ知りたいことはたくさんあるのだから。


「広いよねー」

「フォルテシアを合わせて、同じ大陸に国が三つあるんだよね。ひとまずはそれを目標にしようか」


 フォルテシアのほかに二国ある。フォルテシアが森の国だとすると、その二つは海の国と、砂の国だ。

 海、やはり魚だろうか。それも楽しみだ。


「いいねー、大陸制覇だっ!」

「制覇って……まあ、魔獣はたくさん倒したいね」


 ドラゴンの肉も、あの日旅人が持ってきた肉とは違った。あの肉はいったい何の肉なのだろうか。魔獣を食べて美味しい肉を探すというのも目標だが、あの肉が何の肉だったのかも目標の一つだ。あれのおかげで私は旅をすると決めたのだから。

 旅の目標を再確認し、気合を入れると、それと同時に緊張も解けて空腹に気づいた。


「お腹空かない?」

「お、何々?」


 私は小腹が空いたときのために干し肉を袋に入れて持ち歩いている。

 そして、私が今回干し肉にした肉は……。


「じゃん、ドラゴン干し肉」

「わお、やっちゃったか」

「やっちゃいましたよ。ドラゴンを、干し肉にしてやりましたよ」


 そう、ドラゴンの干し肉だ。やってやりました。

 ハイパー干し肉ですよこれは。


「おいひー」

「うむ、干しても美味い」


 口に含む。干したはずなのに乾燥してない。いや、乾燥はしてるんだけど、塩分と旨味で出てくるよだれのせいで口が乾かないのだ。不思議な干し肉ですこと。


「ん?」

「…………ください」

「はいはいっと。ほいよ、たんとお食べ」


 青い顔をしていた隊長だが、ドラゴンの肉には勝てなかったようだ。そして語尾が普通になっているぞ、普段のあのあります口調はどうした。


「美味しい……美味しいけど怖い……」

「食べたら寝なさい、起こすから」

「ありがとう」


 なんだこいつ気持ち悪っ。普段と違いすぎるだろ。

 ずっとこんななら可愛がれるんだけどなぁ、普段の態度だとどうしても適当な態度になってしまう。向こうもそれを望んでるからやめるにやめれないし。

 起きたら存分に甘やかしてやろうかな、絶対面白いぞ。何ていアイデアなんだ。

 景色を堪能しつつ、私は遺跡に備えて空腹を満たす。いざ、超古代遺跡へ!

記念すべき50話になります。フォルテシアの終わりまで駆け抜けていきますので、応援よろしくお願いします!

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