頼まれちゃった
お城に到着し、王座の間の扉を開ける。王様と共に歩いているので兵士の目線が刺さりまくりだ。
扉を開けた瞬間に、メイドたちが駆け寄ってくる。王様は的に適当にあしらいつつ、玉座に座った。
「王! 今までどこに行っていたのですか!」
「ええい、こうして帰ってきたのだからよいだろう」
王様は質問に答える気はないようだ。このまま説教が後回しにされてしまうと私が説教をされる王様を見れなくなってしまう。燃料を投下しよう。
「王様は魔獣牧場にお忍びで遊びに来ていましたよ」
「なんと、教えていただきありがとうございますエファ様」
深々と頭を下げるメイドさん。いえいえと笑顔で手を振る。女同士のあれだ。
王様を見ると、こちらを睨んでいた。こわっ。
「貴様ァ……!」
「エファ様は正しいですよ、勝手な行動をされては困りますからね」
「ぐ……」
「だいたい王は――――――」
説教を始めるメイドさん。これが見たかったんだとテンションが上がる、顔に出さないように気を付けなくては。
数分間ではあったが、メイドさんは私たちのことを気にせずに説教を続けてくれた。王様は何度も説教をされているのか、あーはいはいと聞き流している。くそう、もっと縮こまると思ったのに。
「すみませんエファ様、勝手に説教を始めてしまい……」
「本当にな。そんなことより話があるのだったか。おいエファ、貴様らに頼みがある」
「私たちにですか?」
頼みか、お金貰えるならいいかな? でも自由がなさすぎるのはちょっと嫌だな。
「そうだ。ドラゴン討伐を成し遂げるその実力を私の国に使ってはくれぬだろうか。実はな、我がフォルテシアの実力者はとある遺跡の調査を依頼しているのだが……」
「聞いたことはありますね」
そもそもあのドラゴンを倒す戦力が出せなかったのもその遺跡がどうたらが原因だったはずだ。
詳しいことは知らないが、とても重要なこととかなんとか。
「おお知っていたか、ならば話が早い。それ相応の報酬も出すが、どうだ?」
「一応聞いておきますけど握手できる権利とかじゃないですよね」
「戯け。オレは仕事量に応じた報酬を支払うのだ。目的が達成されれば願いを何でも叶えてやってもいい」
ということは褒美が握手権だった見逃さないことはそれほど重要なことじゃないということだ。きっと褒美がどうせバレるとか思ってたんだろうな。お忍び何回目だよ。
てか、なんでも願いを叶えてくれるってマジ? 魅力的すぎでは。しかし私は騙されませんよ、面白くなけりゃ苦行なんですから。
「ちなみにその仕事とは?」
「遺跡の調査だ。古代文明が残っていてな、そこに過去に国を滅ぼした『何か』が眠っているらしいのだ。その『何か』が再び動き出した時、フォルテシアも滅びてしまうやもしれぬ」
「だから調査を進めているんですね……その『何か』って何なんですか?」
「さあ? 一応生物ということは分かっている。記録には目覚めた、と記されていたからな」
生物か……国を亡ぼすほどの生物、それまずくない?
「それ、まずくないですか!?」
「ああ、まずい。しかも、目覚める予兆まで起こっているらしいのだ。今は国民を不安にさせるわけにはいくまいと秘密にしているが、いざそやつが目覚めた時には国中に知らせて逃がす予定でな。まあここまで聞いて分かる通り、この国は滅ぶ寸前だ。笑えるだろう?」
「笑えないですよ! え、ここ滅びたら意味ないじゃん……転移クリスタル手に入れても戻ってこれないし」
この国が滅びたら私の故郷も、ポコの故郷も危ない。隊長の故郷に至っては真っ先に消える。
ということは? 手伝うしかなくない?
「手伝います!」
「おお、そうか。して、望みはなんだ?」
望み……望みってなんだ? 私の望みは世界中の魔獣を食べて美味しいお肉を探すことだけど、それは自分で達成するしな。
なら、今の目標である転移クリスタルだ。転移クリスタルを手に入れるためのクリスタルを所望しよう。
「望み……? じゃ、じゃあ純度の高いクリスタルですかね。転移クリスタルが欲しいので」
「クリスタル……なるほどな、わかった。その程度なら簡単に用意できるが、転移クリスタルそのものを望まないのか?」
確かに。
でも、それを望むのは何か違う気がする。今まで鉱山で採掘をしていた意味がなくなってしまう気がする。そうなれば純度の高いクリスタルも貰うのは避けたいな……ううむ。
「はぁ……純度の高いクリスタル程度であればドラゴン討伐の報酬で十分買えるであろう。転移クリスタルを求めるということは旅をしているのだな? ならば旅の役に立つものをこちらで用意してやってもよいが、どうする?」
「……それでお願いします!」
自分で決められないのか私は。
まだまだ子供だな、もっと大人らしく、動けるようにならないと。
「うむ。まあ調査に協力してくれるだけでも報酬は支払うからな、あまり気張るな。オレからの頼みは以上だ。詳しい説明は隊長から聞くといい」
「ありがとうございます!」
「えっ……?」
一瞬私も隊長と聞いてアバンのことだと思ったが、絶対違うな。多分この城にいる兵士の隊長だろう。
「隊長……アバンじゃないでしょ」
「ああ、本物の隊長でありますか」
「偽物の隊長って何」
そんな短い会話だが、焦っていた私の気持ちも一旦落ち着いた。
ポコはまだ眠そうだ。え、これだけ時間たって寝起き?
「では、わたくしに付いてきてください」
「はい!」
どうやら本物隊長の元へメイドさんが案内してくれるようだ。元気よく返事をして、後ろについていく。
その後、本物隊長から移籍の場所や調査する場所などを細かく説明され、城を出た。
準備を整えたら出発しよう。そう思い、私たちは街で武器の強化や素材の売却などを済ませるのだった。




