王様に報告だ!
ギンを預け、お城まで行く。フォルテシア城、久しぶりに来たけどやっぱりお城というだけあって大きいな。
と言っても入ったのはデクセス討伐の時だけなのだけれど。もっとじっくり見学したいよ。
もう何度かこの街に来ているので、流石に道は慣れた。城に到着すると、門に例の門番がいた。変わらないねこの人も。
「ひっさしぶりでーす!」
「んん? おお、お前達か。クリスタルは手に入ったのか?」
「これから買うところですね」
覚えてくれてたのね。仲良くなればお城に入りやすくなるし良いことだ。
「あの、この人とは知り合いなんでありますか?」
「ああ、隊長は初めて会うんだっけ。えっとね、えーっと、どういう関係だっけ」
「そういえばそこまで親しくないねー」
そういえば二回しか会ってなくね? 多分ポコがいなかったら仲良くなれてない。
この人との関係は……うん、ちょっと顔見知りの兵士ってくらいか。
「顔見知りの兵士だよ。私たちの才能を見抜いてお近づきになろうとしてるの」
「なんてことを言うんだこの娘は」
「あーなんとなくわかったであります」
「わかるなよ。口調の時点で常識人だとは思ってなかったけど」
まるで私たちが常識的じゃないみたいな言い方だな。
「ところで、城に何の用があってきたんだ?」
「実は――――――」
私は兵士……シーヘさんだったか。にドラゴンを倒したので報告をしたいと伝えた。鉱山のドラゴンだということや、サイズなどを細かく説明するとすんなりと通してくれた。
しかも、シーヘさんが城の中を案内してくれた。
「あれ、門の警備はいいんですか?」
「いいんだいいんだ、こっちの方が重要だからな。あと門にはもう一人いるし」
「そんなものですか」
門は二人体制じゃなくてもいいのかな? にしても相変わらず広い。
シーヘさんはデクセス討伐の時の広間とは別の場所へ歩く。どうやら階段を上るようだ。二階とか全く知らない、わくわくすっぞ。
「わーなんか、すっごい豪華な扉があるよ」
「ほんとだ、なんだろねあそこ」
金色の装飾で飾られた巨大な両開きの扉があった。さらに兵士二人が扉の端で武器を持って警備している。
「あそこは王座の間……国王が仕事をする部屋だな」
「へー国王……王様!?」
「あの奥に王様がいるでありますか!?」
「すごー」
いや、すごーじゃねぇよすごーじゃ。王様がいるんだぞ。国のトップだぞ。
「いつか、私たちもあの部屋に入る時が来るかもしれないね」
「いやーまだまだ先でありますなー」
「だねー」
「いや、今からあそこに入るんだが」
…………? ん? どゆこと?
今なんて言ったのシーヘさん。よく聞こえちゃったんだけど、聞こえたけど理解が追い付いてないんだけど。
「はぁん? なーに言ってんですか。え、ほんとに何言ってるの」
「でけードラゴン倒したんだろ? 十分だ」
十分かぁ、十分なんだ。確かにドラゴンだもんな……そっかぁ。
「そ、そうなんだ…………マジかよ、隊長居眠りとかしないでね」
「もう眠気は吹っ飛んだであります……」
「ですよねー」
今から王様に会うのか。あー緊張するなぁ。何話せばいいんだろう、報告だけでいいよね? ぶっちゃけ疲れてるし。
「よし、行こう。早く済ませちゃおう」
「王様とお会いできるのに済ますってお前……まあいいや、くれぐれも失礼の無いようにな」
「りょ!」
「りょ!」
「それやめろ」
思わずツッコミを入れてしまった。流行ってるのか知らないけど王様相手にそれはダメだろう。いや、今は王様いないから平気とかじゃなく、扉の向こうに王様がいるのにその心構えはダメだと思うんだ私。
なんてことを考えている間に、シーヘさんは扉の前にいた兵士と会話をしていた。お、戻ってきた。話し終るの早くない? そんなにドラゴン討伐って無条件で通してくれるくらいの偉業なの?
「入れって言ったら開けろよ? 先に知らせてくるから」
「わかりました」
シーヘさんが扉を開け王座の間に入る。少し待つと、扉越しにも聞こえる声で入れと指示が出た。
意外と手は震えていない。普通に扉を開け、普通に部屋に入る。
「失礼します」
こそこそせずに堂々と。報告するだけなのだ。
部屋の奥にある黄金の椅子には、赤いマントに王冠を被った、まさに物語の中の王様のような見た目の人物が座っていた。金髪で、意外に若い。王様というよりは王子と言った方が正しいのではないか。
「エファという者です」
「ポコン=マジツールです」
「アバンという者であります」
それぞれ簡単に名乗る。
一人だけ家名があることは気にしていないようだ。魔術師となると家名くらい普通なのかな?
というか城の錬金術師がポコの父親だって気づいたりしてるのかな?
「ふむ、貴様らが……して、ドラゴンを倒したというのは本当か?」
「はい。以前王国に依頼を出されたことがある、鉱山で鉱石を食べるドラゴンを討伐しました」
「そう、か。あれはオレも問題だと思っていてな、戦力が確保でき次第向かおうと思っていた案件だったのだ。面倒ごとが減ったとも考えられるな、褒めてやろう!」
「あ、ありがとうございます」
ちなみにポコと隊長は余計なことを喋らないようにしている。こういうことには慣れていないらしく、すべて私に丸投げしてきたのだ。いや私も慣れてないし。
「フォルト王、ご自身のことは私とお呼びくださいと何度も……」
「よいであろう、この方が話しやすいのだ」
そしてこの王様、なんだか緩いぞ。もっとお堅い人かと思っていたが、構えすぎだったようだ。
しかしメイドさんが居るのか、さすがお城。メイド可愛いよメイド。
「それで? ドラゴンは貴様ら三人だけで倒したのか?」
「いえ、現地で仲間に加わったドラゴンと一緒に倒しました」
「なに? ドラゴンと仲間にだと? 詳しく聞かせろ」
「ええと、鉱山で見つけた宝石をですね――――――」
私は鉱山であったこと、ギンがどのように協力してくれたのかなどを事細かに説明した。
王様は興味津々といった様子で私の話を聞いていた。失礼なこと言わないように必死だよ私は。
「くっはははは!! なんだそれは! まるで作り話ではないか!」
「で、でも本当なんですよ。本当にドラゴンが仲間になって……あ、なんなら関所の近くにいますよ、見ますか?」
「よい、嘘をついていないのは目を見ればわかるからな。だが後でそのドラゴンを確認させてもらおう、理由はオレが単純に見たいからだ!」
見たいから、見たいからかぁ。それなら仕方ないね。共感できちゃうよ、口には出さないけど。
楽しそうだなこの王様、この生き方は見習いたい。
「王、そのようなことをしている暇は……」
「ええい、戦力なのだから確認するのは当然であろう!」
「今見たいからって言ってたじゃないですか」
図星を突かれたからかメイドさんに反論はしなかった。逃げたねこの人。
「はぁ……まあいい。貴様らなかなか面白いな。もう少し話をしたいのだが、時間はあるか?」
「あ、えーっと、はい」
「用があるのか。ならばまた明日にでもここに来い、私は基本いつもここに座っているからな」
目を逸らしたからか、嘘をついて時間があると言ったことに気づかれてしまった。
「すみません……」
「ハッ、さしずめドラゴンの解体か。今日のところは帰って体を休めるとよい」
「ありがとうございます」
「ふん。おいシーヘ、外まで案内してやれ」
「承知いたしました。ほら、行くぞ」
再びシーヘさんに連れられ、王座の間から出る。
城から出て、門の前で軽くシーヘさんと話をした。シーヘさんは、私たちに王様があの反応をするのはすごいことだと力説していたが、今はそれどころではない。本当に疲れた。
疲れてはいるが、今は解体屋にドラゴンを預けるべきだ。疲れてボロボロの身体に鞭を撃ち、私は解体屋に向かった。