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探せ! 鉱石の竜!

 鉱山の反対側は、採掘が進んでいて多少抉れている。

 鉱石の作られる範囲を広げて、採掘効率を大幅に上げているそうだ。言ってしまえば畑で耕した土地を増やすようなもの。種である鉱石は人工的には作れないけど、それでも効果はある。


「ここにドラゴンが現れるのかー」

「今は平和だけどねー」

「早速、探すであります!」


 各自ドラゴン退治を前にして気を張る。それもそうだ、ドラゴン、話には聞くが実際にどのような見た目なのかはみんな知らないのだから。

 一応以前倒したデクセスも竜種なのだが、あれは完全にでかいトカゲだったしなぁ……いや、ドラゴンも案外羽が生えているだけのトカゲなのかもしれない。そう考えると気持ちが楽になってきた。よし、ぶっ殺すわ。


「いざドラゴン退治だ、今から夜にかけて採掘場の探索を行う。各自見つけ次第報告すること、解散!」


 リーダーっぽいことを言って解散しようとする。私かっこいい。


「えー、みんなで探さないの?」

「だってねぇ、その方が効率が……」


 待てよ? 確かさ、隊長ってなんか魔獣を探せる道具を持ってなかったっけ。それを使えば簡単に見つけることができるのではないか。


「隊長! あの、探すやつ!」

「え、あれは精霊の力を借りてるんで、いるかもって時にしか使えないでありますよ。足跡があったとか、咆哮が聞こえたとかじゃないと」

「ダメかー……じゃ、やっぱり自力で探すしかないね。見つけたらその時はお願いね、隊長」

「了解したであります!」


 無駄に使えないのなら無駄じゃなければいいのだ。ちょっとでも声が聞こえたら使わせようかな。

 そんなことを考えながら、働いている人などと話をしたり、採掘の行われていない高い場所を探索したりして時間を潰した。


* * *


 二日目。一日目は見つからなかったが、二日目ならば見つかるだろう。

 そう思っていた時期が私にもありました。結果、見つからない。警戒心が強いというのは本当なのだろう、もしかしたら私たちの気配に気づいているのかもしれない。


 そのままだらだらと三日、四日と過ぎていく。採掘のついでとはいえ悔しい。

 これは本当に気づいているのでは。賢いな……ワンチャン、猪の前に出てきたポコより賢いのではないか。


「これさぁ……動かない方がいいんじゃない?」


 小屋に帰り、就寝する前にそう言った。


「え、なんでー? 探したほうが早く見つかるよ?」

「いや、向こうはこっちに気づいてるかもでしょ? ならさ、待ってた方がいいじゃん」

「なるほど、確かに気づいているかもであります」

「でしょ? どうすればいいんだろうね」


 気づいてるなら動かずに待てばいい。でも、待っていたら気が狂ってしまう。せめて効率を上げられればいいんだけど。


「そうなんだー……あ、じゃあエサで釣るとか!」

「そんな、ポコじゃないんだから」

「なんでわたし!?」


 ポコ=バカの法則が成り立っている。

 エサで釣る? そんなの……そんなのって……あれ? いけるのでは? 効率上がるし、気持ち的にも楽になる。


「どしたの」

「そのドラゴンのエサってさ、鉱石だよね」

「そうだね」

「これ」


 私は袋から宝石を取り出し、二人に見せた。運がよくなる気がしてお守り代わりに持ち歩いていたのだ。


「なんでありますかこれは」

「宝石、すっごい高いの」

「これで釣るんでありますか!? で、でもこれを売ったら大金が手に入るんじゃ……」

「金よりロマンだ。明日はこれでドラゴンを釣る」

「おお、男らしいでありますな」

「だねー、えっちゃんかっこいい」


 女の子に向かって男らしいとはなんたることか。それに、宝石なんてなくても毎日採掘してればお金は稼げるのだ。さらに、ドラゴンを倒せば大量の素材が手に入る。さらにさらに、報酬金も出るのだ。むしろおつりがくるのではないだろうか。


「じゃ、明日が本番だと思ってね。おやすみ」

「おやすみなさーい」

「おやすみなさいであります」


 なぜ今まで気づかなかったんだというようなアイデアだが、とにかく現状が変わるという事実に安心してしまう。気ままに狩りをするのなら、こういう不安要素は解消しなくてはいけない。

 楽しみで寝られないかとも思ったが、採掘の疲れか一気に来たのか、一気に眠気に意識を奪われた。


* * *


「さて」


 やってまいりました深夜の鉱山。木陰に隠れながら、遠くに置いた宝石を眺める。

 原始的なやり方だが、今はこれ以外思いつかない。一応魔術を使って遠視をしているので、気配で気づかれることはなさそうだ。


「来るかなー?」

「どうだろうね。監視役は一人でいいし、交代しながら待とうか」


 一番最初は私。ひたすら宝石を眺めたり、空の様子を見たりして、時間を潰す。


 ……。


 ……。


 …………。


「飽きた。って何してるのさ」

「錬金術だよー」

「道具の準備であります」


 いいなー、私も暇つぶしというか、その場でできること探さなきゃなー。

 ポコは何を作っているんだろう、小石を錬金窯に入れてひたすらかき混ぜている。ふむ、わからん。石から何ができるって言うんだ。


「吾輩も暇になってきたので、そろそろ代わるでありますよ」

「マジ? いやぁ悪いねぇ」

「絶対悪いと思ってないでありますな」


 ばれてら。全くためらわずにその場を離れたのが敗因だったか。もうちょっと「いやいやいいですよーまだ始めたばかりですしー、えー、でもー、いいんですかぁ? やったぁ!」みたいな演技しておけばよかったんだ。

 誰だそいつ気持ち悪い。


「ははは、じゃあお願いね」


 さーて、私は体を動かしてすぐに動けるようにしておくか。軽く体をほぐしていく。んー気持ちいい。こうなったらお風呂にも入りたい。


「よし、できた」


 ポコの錬金術が成功したようなので何を作ったのか聞こうと思ったその時、風が吹いた。

 ふと空を見上げる。ここからでもわかる。月明かりに照らされたシルエットは、ドラゴンのそれだった。

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