くまクマ熊クマアアアアアアアアーッ!
熊肉。それは、臭みがありしっかりと調理をしなければとても食べられたものではない臭いを放つ肉。
このヨロイグマもそうなのでは? と思いながら今食べる量だけ解体した魔獣肉を焼いている。わーお、ワイルド。
数分間焼き、色が変わる。取れたてのため、血が黒く変色する。よく拭き取ったつもりだったがこればかりは仕方ない、新鮮な証だ。臭いは出るけども。
「さて、誰が犠牲になる?」
「え、な、なんで?」
「熊の肉はね、臭いの。もしかしたら、食べられないくらい臭いかもしれない。なら、だれか一人が食べて、確かめるしかない。でしょ?」
アバンを見ながらそう言う。アバンは自分が原因で仲間ができないと言っていたが、仮に私たちについてくるとして、逆にこちらから旅の危険さについてこれるのか? と言いたい。
まあなんだ、ぶっ飛んでるくらいがちょうどいいのだ、旅なんて。あと、魔獣肉の初体験をさせてあげたい。
アバンは焼く前に嫌がっていたが食べれないの? と聞くとこれくらいできらぁ! と反論してきたので、ちょうどいいだろう。
「こ、これはやっぱり解体をしたエファ殿が食べるべきでありま――――」
「ん? なんて? よく聞こえなかったなぁ隊長さぁん」
「ヒィィィ!! な、なら隊長である吾輩が、毒味をするであります!!」
危険を感じたアバンが自分から乗ってくれた。ちょろい。
見ただけでは、普通の美味しそうなお肉だ。しかし、獣臭さというものは、食べてからが本番である。
口に入れてすぐは分からないが、少し噛むと次々に臭いがあふれ出てくる。辛い物を食べた時と似ている。辛い物を食べると、一瞬美味しいと思い、次の瞬間に遅れて辛さを感じる。そっくりだ。
「い、いただきます」
そこはありますが付かないんだと思いつつ、見守る。ちなみに、ポコは食べたそうにしている。こいつに食べさせてもよかったかもしれない。
アバンが魔獣肉を口に運ぶ。いけっ! やれっ!
「ん? 美味しいでありまあああああああああああああああ!?!?」
「あーやっぱダメか。よし、鍋使うよー」
「おー」
口を押えて転がりまわるアバンを無視して、調理を開始する。
まずは鍋に水を入れ、沸騰させる。次に、塩や酒を入れる。酒は臭い消しだ。熊肉を入れ、薬草も入れる。さらにハーブも。まあ今できる臭い消しはこんなところか。
「あとは煮込むだけ。アバン、大丈夫?」
「隊長であります! 飲み込んだのに鼻の奥の方に臭いが残ってて気持ち悪いであります!!!」
「大丈夫そうだね。私の鍋とか運ぶの大変だったんだけど、こういうのも収納できるの?」
鍋は私とポコの二つがある。ポコの鍋は錬金用なので底が深く、丸い。錬金窯というのだとか。もう鍋じゃないね。私のは普通のだ。いやそんな情報はどうでもいい、とにかく運ぶのが大変なのだ。
私は、アバンに錬金窯を見せながらそう言う。
「もちろんであります。こうやって……こう!」
「こう!!」
変なポーズをしながら、アバンは錬金窯に触れる。ポコ、マネしなくていい。二個目の変なポーズを覚えなくていい。一個目は初対面の時のあれ。
アバンが錬金窯に触れると、錬金窯が光りながら消える。え、消えるの? 何それ。
「これ、応用すれば戦闘に使えるんじゃない? 例えば、敵の武器を奪ったりとか」
「できなくはないでありますが、動いていたらできないんでありますよ……」
「あーじゃあ難しいか。でも隙をつけば戦闘にも使えるかも」
背後から近づいて武器奪ったりね。そうかぁ、ポケットに入れないと使えないのかと思ってた。
「ていうか、かぎ爪ロープとかを戻すときは直接ポケットに入れてたじゃん!」
「これはこれで魔力を使うんでありますよ。精霊の力を借りてるとはいえ、転送魔術なんでありますから」
「確かに、納得」
転移が魔法の域だとか言ってたのに、それに近いことを人間ができるのだから当然魔力は使うか。
「まあ手持ち無沙汰だったのもあるであります」
「そっちの方が納得できたのはなぜだろう」
私も、楽とはいえ何もすることがないよりは手を動かしたほうがいい。そっちの方が納得できるのは共感したからだろうか。
なんて会話をしている間に、完成したらしい。乾燥キノコも入れたから出汁はバッチリだ。
「アバンは……」
「ううぅ……」
「よし、じゃあ今度は私が食べるよ」
もうすでにアバンのトラウマになってしまっているヨロイグマの肉。流石に連続で毒味は悪いので、最初にアバンに食べさせた私が責任をもって食べよう。
ちょっぴり勇気を出してみる。大丈夫さ美味しいさ。
「あ、わたしも食べるー!」
「私の勇気返して……」
ポコに食わせとけばよかったパートツーだ。
まあとりあえず私が食べるさ。見てこのごちゃまぜ。およそ煮物とは思えない色。
「いただきます」
「いっただっきまー!」
す、まで言え。
「ん、美味し……」
「おいしー!」
まだだ、これから強いのが来る。
「ンッ! いや、でも食べられる。というか美味しい……」
一瞬、熊肉特有の臭みを感じたが、逆にそれが美味しさを引き立たせている。この臭いをもう一度味わいたい、そう思ってしまうくらいには美味しい。魔獣肉もそうだが、キノコの出汁もすごい。大成功だ、ゆっくり食おうぜ、そう焦るなって。
「おいしーよ隊長!!」
「隊長も食べてみてよ」
「い、嫌であります!! そんなものを近づけないでほしいであります!」
あ、なんか、興奮してきた。いけない気分になってきちゃったぞ。これも全部クマ鍋のせいだ。
お姉ちゃんたるもの、下の子をいじめてなんぼさー! 弟は感情死んでて面白くなかったから憧れてたんだ。
「いやいや、美味しいから。これが好きになっちゃうよ、ほら、口を開けて」
「い、いやああああああああああーーーーーーーー!!!!」
アバンの半開きの口に、濃厚な汁の滴る肉を近づける。ポコはそれを見て、肉から逃げるアバンの頭を固定した。
素晴らしい。やはりアシストはポコに限る。後は欲望に任せてこの肉をぶち込むだけだ。口元に肉を近づけるが、アバンは口を開かない。生意気な奴だ。
「おら口開けろォ!!」
「んんん! 絶対に、絶対に魔獣肉なんかに負けたりしないであります!!!」
私はキッとこちらを睨むアバンの口に、無理やり肉をねじ込む――――――
飛び散る汁と共に、しばらく探検家の悲鳴が森に響くのだった。
* * *
「魔獣肉には勝てなかったであります」
この後めちゃくちゃ食事した。
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