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アーチャーが弓使うわけないだろ!いい加減にしろ!

 一発、また一発と矢を発射していく。もう少し上、もう少し左。風の向きによって矢の軌道が大きく変わる。

 ましてやこんな揺れに揺れる馬車の荷台では、矢を放つだけでも精一杯だ。


「一羽目っ!」

「すごっ」


 ポコが早速一羽当てた。あの距離で当てられるんだ……しかも頭に。


「せめて……翼に!」


 ソニックバードは翼をあまり横に広げないため、当てるのが難しい。身体を細くして風のあたらないようにする。だから当てにくい。


「くうう! これ上手い人でも難しいでしょ!」

「確かに……でも近づいてきたしそろそろ当てられるはずだよっ!」

「そうだね、流石にそろそろ当てなきゃ」


 矢を無駄遣いするわけにはいかない。初めてとはいえ数回試したことによりコツはつかめている。群れの中心付近には矢が飛ぶようになった。もうここから先は運なんじゃないかな。


「魔力……魔力を……そりゃあ!!」


 慣れてきたのでポコの言っていた魔力を込める技を試す。使ってみると、矢に魔力というより弓に魔力を吸われるような感覚になる。なるほど、このまま放つ!

 遠視でソニックバードを確認する。このままでは放たれた矢は一羽のソニックバードから少しずれてしまう。残念、軌道だけ確認して次を準備しようと思ったところで、矢が不自然な動きをした。

 矢はソニックバードに吸い寄せられるように、足りなかったずれを修正した。ほんの少しずれていた矢が、当たる位置まで動いたのだ。

 そして、そのままヘッドショット。ソニックバードは当然墜落する。当たった……? 当たったのかこれ?


「ナイスゥ!」

「え、なんかずれて当たったんだけど」

「魔力を込めたら狙った軌道になりやすいからね、まっすぐ飛びやすかったり、風の影響が少しなくなったり」

「そうなんだ……それにしてもすごい動きだったけど」


 生き物に向かっていくような軌道。魔力を込めたらここまで変わるのか。なら、さっきポコが当てたのはこれがあったからでは……?


「よし! どんどん当てよ!」

「まっかせてー!」


 これでもかと魔力を込めて矢を放つ。今度はさっきよりも魔力を込めたぞ、どうだ?

 ……またもやずれて身体に命中。頭には当たらなかったが墜落する。さっきよりも大きく動いたようにも思えた。


「なにこれぇ! 面白い!」

「うわ、すごいね。でも魔力を使ってるわけだから使いすぎには注意したほうがいいかも」

「分かってるって、でも今日はセルコンさんの魔力料理のおかげですごい調子がいいんだ」


 そう、昨日食べたキノコ料理。そのおかげかいくら魔力を使っても疲れない。魔力が回復したのもそうだが、消費が少なく済んでいる感覚もある。しかも自然回復も早い。キノコすごい。

 このまま倒してしまおうと何度も放つが、数は減らない。減ったそばから増えていってるのではないかと思うほどに減った気がしない。弓で一羽一羽落としても追いつかないのだ。というかすごい近くに来てる。もう少しで追いつかれそうだ。


「ううう、別の矢を作ればよかったよ!」

「これ以外にも特殊な矢があるの?」


 毒の矢とか、火矢とかだろうか。それでもあんまり意味なさそうだけど、どうなんだろ。


「うん。魔獣用のだけど、爆発させたり、拡散したりする矢があるの。錬金術で作ったり、矢を改造したりすれば手に入るんだけど……」

「ああ……まあ鳥だもんね。だとしてもソニックバードの対策として準備しててもおかしくなさそうだけど、おじさん、なんでないんですか」

「そんなこと言われてもねぇ、こんなに大量発生するのは初めてなんだ。今まではその矢で撃退するだけで十分だったんだよ」


 今が異常な状況ってだけで、本来ならこの弓でソニックバードを止められたと。

 じゃあその異常な状況の手助けをさせられてるの? やっべー受ける依頼ミスった。


「ああ目の前に来てる!!! 近距離ならいくらアーチャーでも弓は使わないでしょ! ポコ、今まで通りいくよ!」

「うんっ!」


 私はダガーを、ポコは杖をそれぞれ手に取り今まさに荷台に乗り込もうとしているソニックバードに襲い掛かる。

 この馬車を狙ったのが間違いだったね、ここからが本番だ!


「これなら魔術の射程距離だよっ!」

「さっすが! カバーよろしく!」


 私はバリアを張ってもらい、荷台の端に立つ。こうなれば私は肉壁だ、ダガーを振り回して荷台への侵入を防ぐ。もう突撃系の攻撃は経験済みだからね、慣れたよ。

 ポコには私のダガーにも身体にも当たらなかったソニックバードの処理をお願いしている。雷を剣のようにして斬っている。サンダーソードすごくつよい。かっこいい。


「させるかぁ!」


 ダガーを避けて隅から荷台に入ろうとしたソニックバードを蹴りで飛ばす。体術もそれなりに効くね。

 このソニックバード、羽が青いからか荷台の中で舞う青い羽根が妙に綺麗だ。そのおかげで、私は清々しい気持ちで殺戮を行うことができた。害鳥だからこそ、気にせず殺すことができる。もちろん申し訳ないとは思うが、そこはそこ、これはこれ。殺生の割り切りはとうの昔に済ませている。

 ソニックバード狩りは、数が減り、ソニックバードが諦めるまで続いたのだった。

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