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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第一章 黒獄の天秤編
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九話 守る

大変投稿が遅くなりました。では、人間の心を



 鍛錬は終了し、次の日の朝、俺は学校の支度をしていた。

 バルバトスに頼まれた件について、俺は無視することにした。だからアモンは殺さない。怯えるバルバトスを見捨てることを選んだ。俺は悪魔が困ろうと俺の知ったことではない。逆に悪魔が怒鳴ろうが威張ろうが、同様に知ったことではない。好きにやっていればいい。ただ俺の邪魔をする奴は殺す。それが俺の生きるルールだ。

 城を出て、森を出て、いつもの通学路を通る。獄立ゲーティア高等学校に到着し、いつもの教室に上がる。一年H組の教室の引き戸を引くと、ちょうど一番合いたくない女性と面と面鉢合わせになった。

「レハ。」

「バルバトスか。」

学校に来ないで、アモンを殺して、殺されたことにして、の三拍子の魔性の女だ。俺と目が合い、目が動揺して泳いでいる。表情も頑なになっている。

「学校、来たんだね。偉いね。」

若干引きつった表情で言う。

「俺は俺のために生きる。だから来た。」

それだけを言い残すと、バルバトスの横を過ぎ、無視するように席に座った。

 その後は一時限目、二時限目、三時限目、四時限目とクソな授業をこなし、昼休み。俺はいつもの場所に行き、そこに腰を下ろし鞄からお弁当を取る。

 いつもならバルバトスが遅れてやってくるのだが、依頼を断ったのを良しとせず、今日は来ないか。せっかくいつものバルバトス用のお弁当を用意したのに、これでは無駄になったな。まあいい、冷凍保存して明日の俺の分にすればいい。

 しかしなんだこの胸騒ぎ。なにか落ち着かない。何かが俺を落ち着かせない。心臓が揺れているような感覚だ。

「ううん、食欲がないな。」

どうにも落ち着かない。まるで誰かが俺の助けを待っているかのような、未知なる感覚で血が騒ぐ。お弁当を鞄に戻し、きっと気のせいだと思い込み、気晴らしに裏庭から半一周回って散歩をする。

「きゃああああああ!」

そのとき誰かの悲鳴が奥から聞こえた。すると、俺の足は、咄嗟に声がした方向に走り出そうとしていた。

「……?!」

俺自身、この条件反射に動いた俺の体に驚きながらも、その一歩を踏み込み、声の方向へと走る。奥には曲がり角がある。そこを曲がった先には、赤い毛の大男が女性の胸倉を掴み、恫喝していた。その女性のスカートからは黒い尻尾が生え、毛が膨れ上がっていた。

「てめえなんで殺さなかった!野郎生きてんじゃねえか!」

赤い大男は小さい女性の頬を拳で殴り、その衝撃音は鈍く響いた。女性は地面に横に倒れ込んだ。

「言ったよな。殺さなかったら俺がお前を殺すって。なあ、おい!」

大男は倒れた女性の体に乗り、再び拳を顔に下した。

 恫喝に加えて暴力だ。あのままではあの女性死んでしまう。

 大男に向かって間合いを縮め、

「おい、その辺にしろ。」

と大きく注意する。すると大男は俺にギロリと睨み付けて、

「おう人間。確か、レハベアムっつ名前だったか。」

女性の顔に下した拳を上げて、次は馬乗りした体勢から立ち上がり、俺に近寄ってきた。以前、死月に俺に恫喝してきた男。名をアモンだったか。そして、アモンの後ろに倒れているのは、鼻が潰れたバルバトスだった。

「なんだ。なにがその辺にしろ、だ。あ?人間よ。」

頭を高く見下だし、威圧してくる。

「悪いが、バルバトスは二人三脚のパートナーなんだ。殴り殺して、それで欠場になったりしたらどうするつもりだ。」

「はああ?なんだテメエ。俺様に文句があんのかごらあ!」

「あるから言っている。」

「おい人間。なんでてめえ俺の彼女と組んでんだ?誰の許可を得て組んでんだん?」

「誰でもないな。」

そうはっきりと答えると、アモンは右目をピクリと微動させ、苛立ちを過激している。

「俺様の許可がいるだろうがてんめえええ!無許可で俺のカノピッピと二人三脚だあ?ざけんな!」

「悪いな。それは知らなかったものでな。」

当時、俺だけ二人三脚に選ばれて、そのあとバルバトスが二人三脚に立候補した。だから俺の力でどうにかできた状況ではない。が、こんな奴に俺の事情を説明しただけ無駄か。

「知らずに済むもんじゃねえ。しかもだ。人間が俺様のカノピッピと組むなんざ気持ち悪いんだよ。ぶっ殺すぞ今から!」

バルバトスは自分から立候補したと言っていないのだな。だからこんなややこしいことになってしまったのか。

 アモンは右拳を引き、俺に突いてきた。対する俺は一歩後退し、突きを避ける。

「逃げんじゃねえっ!」

更に左拳を突き立てるが、俺は右に体を回し、回避。このとき、右ポケットから第四部『アルス・アルマデル・サロモニス』の闇塊を出し、コピシュに変え、アモンに突く。対するアモンも勘が素早く突きを左に避ける。突いた右肘を戻し、今度は上からアモンの脳天へ振るう。だがアモンは両掌で剣身を強く挟み、真剣白刃どりを成功させた。

「キャッチ―。」

アモンはどや顔で俺を嘲笑う。まさか真剣白刃どりを成功させるとは、戦闘能力の集中力や精密さが伺える。しかしそれは俺の作戦で、剣身は蔓状に変化し、両掌を包囲し縛る。そして蔓同士くっ付き合い、全ての両掌を包み込む。

「な、なにい!」

動揺するアモンは、力で腕を左右に引き、手を包む闇塊を引きちぎろうとする。腕の筋肉が膨れ上がり、闇塊を破壊し、両手が自由になった。

「なんだてめえの能力は。」

砕け散った闇の欠片は地面にパラパラと落ちる。アモンは広げた手を握りしめ、俺に間合いを寄せてくる。対する俺は真っ黒なコピシュを構えて、受けて立つ。アモンは左脚を俺に振るい、俺の脇腹は左脚の脛を真に受ける。しかしその後左腕で太い左脚を巻り、一歩後退する。アモンの支える右脚一本のバランスは崩れ、転げ落ちる。その時に左脚を離し、コピシュの剣身をアモンの右腕に下す。切先はアモンの右手首を裂き、右手首は天へ撥ね、落下した。

「ぐああああああああああああああ!」

アモンは一度起き上がるも、その激痛のあまり膝を地面につけ、左手で右手首の切断面を支える。

「や、やろおおおおおおお!」

アモンが激痛で膝をつけている間に、俺は倒れているバルバトスを背負い、この場から逃げていった。

「ま、待ちやがれ!」





「……ここは……?」

バルバトスの微かな声が聞こえた。そっと振り向くと、バルバトスの身はベットの上で横たわって、黒い布団で覆われている。

「保健室だ。手当してもらっている。」

黒い仕切りカーテンで囲い、俺はその密室空間でバルバトスが目覚めるのを座りながら待っていた。バルバトスは顔をミイラのように黒い包帯で巻かれている。

「……そうか……。」

バルバトスは己の状況を理解し、瞳から涙を流した。涙は黒い包帯の上を通り、そのまま枕へ一滴流れ落ちる。

「ひどくやられたな。だが保健医曰く命に別状はないそうだ。」

「助けてくれたんでしょ?」

微かな声で確信的な一言を俺に当てる。

「助けてくれなかったら私死んでいた。ありがとう。レハベアム。」

「……お前が死んでもらっては二人三脚できないしな。それは俺の成績に繋がる。だから助けてやっただけだ。勘違いするな。」

「で、でも……助けてくれたのは事実だし、本当に……あり……ひっく、……がとう……。」

泣きながら感謝するバルバトスに、女の涙の雰囲気的に長居は気まずい。俺はさっさとカーテン包囲空間から出ようとする。

「待って……。」

「なんだ。」

「レハベアムって、実は優しいんだね……。本当に人間だね……。」

「……その顔の重症ではしばらくチアガール部も二人三脚も練習は打ち止めだ。まずは回復してから再び練習に付き合え。」

今度こそ仕切りから出て、バルバトスを後にする。



 それから更に月日が経ち、六月五日の夜。体育祭の前日。俺は森の広場で、摩天に輝く赤い満月を眺めていた。

 あのアモン暴行事件からバルバトスは回復し、チアガール部に復帰した。そして二人三脚にも参加できるようになり、一ヶ月で立ち直ることは成功した。あとは本番で一位を取れば俺の成績は向上する。

 そして、明日がいよいよ黒獄の天秤だ。ウァサゴの死闘が待っている。負ければ生徒会の入会。勝てばフライングチケット。俺の未来が左右する死闘がある。何が何でも勝たなくてはならない。

「……俺は……勝つんだ。絶対に。」




時を同じくして、同じ空の下、同じ地の上であかい満月を見守っていた。

「ウァサゴ先輩……いよいよ……明日ですね……」

「……ええ。そうね……。」

明日が待ちに待った黒獄の天秤だ。レハベアムの死闘が待っている。負ければ魔界は滅びる。勝てば生徒会の入会。魔界の未来が左右する死闘が待っている。何が何でも負けるわけにはいかない。

 







そして、体育祭が開催された。

 俺は今、二人三脚開催の順番待ちだ。だがバルバトスが来ない。

 っというより、今日はバルバトスの姿を一度も見ていない。欠席だろうか。そのせいで俺は二人三脚レースから外され、結果的に走らなくていいことなった。

「くそ、あんだけ練習したのに時間の無駄になったか」

俺の成績のため、仕方なくバルバトスと猛練習を積み重ねたが、バルバトス欠場のため俺までもが不参加となった。二人三脚は二人で走るものだから不参加になるのは当然だが、今までの努力が水の泡となるのは腹立たしい。

 それから休憩の間のなく次々と選手が走り、競技を行い、そして、時は来た。

「今から黒獄の天秤だって!」

「凄いね、誰と誰が戦うんだろう」

ゲーティア高校敷地内にある闘技場に、生徒の大群衆が集う。観客席に着いたものから座っていき、すぐに多くの席が悪魔に埋まった。

 闘技場は円形のドームで建てられ、外側には観客席が、内側の中心には巨大な天秤が設置されていた。それから、外側の観客席から天秤を守るためなのか、天秤全体の上からガラスのドームが設置されている。俺らはあの天秤の上で戦うことになる。

 いざ、選手台に立つ。崖のように台の先には足場はなく、真下には皿がある。どうやらジャンプして落ちて試合が始まるそうだ。そして、反対側の奥の選手台には、

「ウァサゴ.......」

生徒会長ウァサゴが立っていた。

 両者睨みつける。もうすぐ、それぞれが賭けた勝負が始まる。俺はウァサゴを殺し、フライングチケットを手に入れるのだ。

 ウァサゴから選手台から降りた。では、俺も降りなくてはな。

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