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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第六章 エチオヴィア大狩猟大会編
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七十九話 幽霊船上の戦い

今回の一話のみの投稿になります!実習前になんとか書けましたので……

「よし、では乗り込むぞ」

右手に魔法陣を出現し、レメゲトンを手に取る。第三部『アルス・パウリナ』を開き、詠唱。

「我は、太陽の道にて死した三百六十星の屍なり。魂兵の憎悪を受け入れよ」

レメゲトンから三百ページの紙ドクロを放ち、俺の足先の前に一つに群がる。紙ドクロ軍団の上に踏み入れ、紙ドクロの浮遊能力でそのまま幽霊船に移動するつもりだ。

「そのまま幽霊船に特攻ね」

「ああ」

「レハベアム様が敵船に向かうのなら、私も共に」

アンリデウスはコートのファスナーを半分まで開き、ビキニ上体を外に晒す。背から白い天使の翼を出した。アンリデウスも幽霊船に突撃する気だ。

「アンリデウス」

如何なる私情を挟まず、王子の護衛を命ぜられた天使としての使命を果たす。さながら騎士だ。その戦いに満ちた表情には、先程までの苛立ちは一切無い。

 一方ウァサゴは船酔いで倒れ込むヴァプラの頭までしゃがみ、

「ほら、寝っ転がっていないでアンタも戦いなさい」

ダメ押しかパワハラか、ヴァプラの首を鷲掴みして起こしあげた。ウァサゴの腕力でヴァプラは首から持ち上げられ、吊られている。

「ウァ、ウァサゴ先輩……く、くるしい……」

「いい? この船が幽霊たちで壊れると王国に行けなくなるのよ。だからアンタがこの船を守らないといけないの」

そう言うとヴァプラを掴んだまま後方へ下ろし、

「ほら、ヴァプラ、しゅつどぉおおおおおおおおお!!!」

窓に向かってヴァプラを剛速球で投げた。

「うわあああああああああああああああ」

ヴァプラの体で窓をぶち貫き、破壊。そのままヴァプラは二階から船上へ落ちていった。善魔生徒会のダークヒーロー、ヒーロー戦隊としてはなんと無様な出動の仕方だ。

「相変わらずのパワハラだぁ……」

「そういう奴なんだよ、ウァサゴは」

「就職したら、あんな上司ヤだな……」

「まず就職するのか? こんな魔界で」

「そ、それもそうだね」

魔界のどこの国や市町村で就職しても、ブラック企業で翻弄されるだけだ。身も心も闇に染まり、屍になるまでこき使う。もっとも、ウァサゴ以上のブラック上司もそうなかなかお目にかかれないと思うが。そういう意味では、善魔生徒会はホワイト企業の皮をした超ブラック企業だ。非営利活動で一切の収益は生まない。俺たちはつくづく酷な道に進んだものだ。

「まずレハベアム様の就職先は女神国の王職なので……」

「嗚呼、人間界で働きたいでござる」

ウァサゴのパワハラもだが、女神国のセクハラも耐えられそうにない。やはり俺は最初の目的である人間界の帰還を目指して、人間界で就職がしたいな……。メナリクを人間界にもう一度返すために。

「じゃあ、私の未来はスネップ……? 私はスネックスになるの……?」

高齢期に入るまでに一切の職業をしないスネップなフェニックス、か。そんなお情けないフェニックスは見たくないな。せめて回復の炎を活かして医者を目指せばいいのに。かく言う俺も、これと言った職業になりたいというのは決めていないが、少なくとも機械関係の職種には絶対になれないな。

「なにボサッとしてるの。ほら、働きなさい!」

善魔生徒会長の恐ろしい喚起で俺たち社畜の強制出陣。もとより、そのつもりだ。

「分かってる、行くぞ!」

俺の土台になってくれている紙ドクロ軍団が浮上した。そのままベランダを越え、海と空の間へ飛んだ。フェニックスとアンリデウスも翼を羽ばたかせて飛び、ウァサゴは部屋からベランダへ助走をつけて高く跳び、善魔生徒会、ノアから幽霊船へ奇襲作戦を遂行。

 上空からノアと幽霊船を眺めると、ほとんどの幽霊たちはノアへ目を向けて襲撃しているので、俺たちの上から行動がばれていない。ウァサゴはビル二階からダイナミックに身を投げ出したため、弧を大きく描いて跳び、圧倒的な脚力でノアを越え、幽霊船の船上に激突大着地。

「相変わらずのパワフルだぁ……」

「そういう奴なんだよ、ウァサゴは」

ウァサゴのダイナミック着地に幽霊船は大きく揺れ、奇襲返しに幽霊船上の幽霊たちが慌てている。ウァサゴに続いて俺たちも上空から幽霊船へ一気に下降。

 俺の土台になって飛んでくれている紙ドクロ軍団を散らばらせ、各自幽霊船を取り囲むよう指令。俺は重力に従うままに幽霊船に落ち、ボロボロの床に着地。

「っと。まるで海賊船だな」

内装も海賊らしく、船壁には大砲が左右に並んでいて、宝から贅沢に財宝やメダルが零れ落ちている。床には、ドクロマークのボロボロな海賊旗が落ちており、やたらと整備がされていない、不潔さ満点の海賊船だ。

「いやいや幽霊船でしょ」

俺の着地後、ウァサゴが俺の背後に立ち、互いに背を向け合う。サーベルを持った幽霊たちは俺たちを囲い、警戒する。

「今は幽霊船だけど、元々は海賊船だったんだろうって」

「はぁ? こいつらは海賊の真似をした幽霊でしょ」

「いやだから、元々は海賊だったんだけど、それが幽霊になって」

「いいいや絶対幽霊が海賊ごっこをしてるって!」

「ええい今はどうでもいい! とりあえず倒すぞ」

本性は幽霊なのは間違いないが、俺曰く元々は海賊なのか、ウァサゴ曰く元が幽霊なのか、くだらない論戦が始まってしまった。そんな答え、導きだしたところでこの戦局には何の役にも立たないのに。

 左手に魔法陣を召喚し、ダーインスレイヴを手に持つ。

「私は幽霊が海賊の真似をしていると思うんだけどなぁ……」

一方でフェニックスは幽霊船の真上を飛び続け、回復の火の粉を振り散らして落としている。アンリデウスもやや遅れて、幽霊の頭上へ落ちつつ、脳天を処刑執行用の剣で縦に割った。着地様に絶ち、それぞれ奇襲成功。俺の紙ドクロ軍団も、幽霊船の周囲を周り、レーザービームを放って外側から攻撃中だ。

「海賊のフリをした幽霊が慌ててるわ!」

俺たちの奇襲に、フェニックスと紙ドクロ軍団の遠距離攻撃に、船上に浮く幽霊たちが二転三転と慌てて、精神的に揺さぶられている。幽霊に精神力があるのか不明だが、幽霊たちの精神が不安定なら、もはやこの幽霊船の制圧は確定したも同然だ。

「さぁて、じゃああとは念仏を唱えながらブン殴るとしましょうかねぇ」

弱気な幽霊たちを前に、それでも容赦しない強気な言葉を吐く。

「フン、私たちがこの船に乗った瞬間から怯えているじゃない。魔列車の時の強気は一体なんだったの?」

以前の幽霊たちの襲撃は魔列車という大きな乗り物に乗って、悠々と俺たちを轢き殺すつもりだったのに、こうも幽霊たちの攻撃範囲に入った途端、一気に弱々しくなったな。まるで、奇襲返ししてきた俺らが悪者だ。死者に鞭を打つ気持ちとはこういうことかもしれないが、死神の末裔であるアンリデウスは、己の使命感に充実か、相当殺る気のようだ。

「う、うわぁああ!」

ここで再度幽霊船に激しい揺れが襲いかかってきた。床は斜めまで傾き、バランスを崩してウァサゴと俺とアンリデウスが転倒。

「もう、なんなの船って。地に足のつかない場所って嫌いだわもう!」

船なのだから多少の揺れはしょうがないだろ、と言いたいところだったが、この幽霊船がノアに衝突したような衝撃ではなく、どちらかと言えば強い波が襲い掛かってきた感じだった。この幽霊船はノアに並ぶほどとてつもなく巨大な船だが、揺れに生じて海水が肩に飛んできたのだ。それだけではない。幽霊船の外から、ザーザーと強い波の轟音が聞こえる。

「……! お、おいおいまさか……」

幽霊船を取り囲み、海の上に浮く紙ドクロから、驚きの情報が俺の視覚に飛んできた。俺の視覚に映っている外の中継には、この幽霊船の前方に、大きな渦巻が生じている。俺が驚いているのは、その渦巻の正体だ。

「レ、レハ、どうかしたの?」

ウァサゴが俺の驚きの反応に気にしながら、揺れに耐えながら立ち上がる。アンリデウスも立ち上がりながら、俺の反応を静かに伺っていた。同時に俺も立ち上がりながら、俺が見た中継を言ってやった。

「七つの大罪の、〝嫉妬〟が出てきたぞ」

「しっと?」

「嫉妬と言えば、まさか……!」

流石は〝色欲〟の反対の存在。早くも理解できたか。アンリデウスが察した存在は、そのまさかの存在だった。

 幽霊船の前方に現れた渦巻の中心から、ノアや幽霊船でさえ丸呑みできそうなほど巨大な顔が現れ、外を睨んだ。幽霊船を睨むと、顔から首へ、首から超巨大な海蛇の図体を縦に伸ばす。蛇の体を外に露にして、顔を上空まで上げる。曇天にまで届きそうなほど頭を高く上げ、幽霊船上の俺たちを見下げる。

「さっきから騒いでいるの、あなたたち?」

この魔界で知らぬ者などいないほどの有名で強力な七人の悪魔、七つの大罪。その嫉妬を課せられた悪魔が、あのレヴィアタンだ。サキュバス専門学校からのスパイ アスモデウスも色欲の大罪を背負う悪魔だが、その仲間だ。

「おうおう、これはこれは……」

「ビックスターのお出ましね……」

ウァサゴもアンリデウスも海賊幽霊たちも、大の大な大迫力のある海蛇の図体に目が釘付け。この幽霊船でさえオモチャと見れるほどの巨人サイズを前にして、失笑していた。幽霊船の上空から火の粉をまき散らしていたフェニックスは、いつの間にか船上に降り立ち、俺の背後に隠れていた。ビクビク震えている模様。

「騒々しいのよ。ここを誰の海だと思って騒いでいるわけかしら? 私の海よ」

レヴィアタンの言葉が本当なら、まさか偽王国とエリトヴィア王国の間の海を支配していたとは知らなかった。となると、その海の上で争っていることで、この海の主の逆鱗に触れてしまったようだ。もしや幽霊船の大砲による爆薬音で不愉快に思われたか。しかも俺たちは船の上である以前に、海の上だ。レヴィアタンのテリトリーで、最も有利なポジションである以上、俺たちの抵抗は絶望的に不利。海の藻屑確定だ。

「ま、待て! 俺たちはこの幽霊船に襲われているんだ!」

天高い頭上に向けて、これでもかと大声を上げて必死に説明。これで納得していただく作戦に急遽変更。幽霊船から奇襲してきたのは本当だ。俺たちは、俺たちに起きた真実を懸命に訴え、納得していただく。

「襲われている……?」

レヴィアタンが俺の言葉に耳を貸してくれた。たいていの悪魔は都合の良い訴えしか聞かない連中だが、この嫉妬だけは意外にも公平な心をお持ちのようだ。

「そ、そうよ! 私たちはエリトヴィア王国に向かっている最中に幽霊船が突然いきなり来てきたのよ!」

流石のウァサゴも海の上で抵抗は無理と即座に判断したか、ウァサゴも汗をかいてこちらの正当性を訴える。

「あなたがこの海の主なら、あのノアなら分かるでしょう! あのノアはエリトヴィア王国行きの船なのよ!」

アンリデウスはレヴィアタンがここの主であることを理由に、ノアに指して言葉巧みに訴える。

「……確かに、このノアは偽王国とエリトヴィア王国の間の海を渡る有名な方舟。そうか、ノアがこの船にあるということは、もう大狩猟大会がもうすぐ始まるってことか」

流石は七つの大罪の一人。ノアを見ただけで大狩猟大会に直結する思考。よぉぉく世間をご存じで。さあ、そのまま俺たちの正当性に納得して、どうか怒りを落ち着いてくだされやがれ。

「でぇ、なんであなたたちは、襲われてるとやらの幽霊船の上に居るのかしら?」

「「「「えっ?」」」」

「どう見たって、あなたたちが幽霊船を襲ってるようにしか見えないわよ」

嫉妬の公平な心を持ったが故の発言。俺たちが間抜けに一言零してしまったときは、次に言い訳を言うための思考力が真っ白になった。何も言い返せなかった。

「さては、あなたたちが襲ってるわねぇ……!」

「ま、ままままっまままて!」

まずい、俺たちは幽霊船に襲われ、己の命を守るためにこの幽霊船に奇襲返しし、制圧しようとした。しかしレヴィアタンはその一部始終を知らない。それどころか、俺たちが幽霊船に着地した時に、悪いタイミングで這い上がってきた。事実を知らないレヴィアタンは、俺たちが幽霊船に襲い掛かっているとしか思えない。過剰防衛だったか。

「私も悪魔だけど、嘘をつく悪魔は嫌い。だから契約の箱を通さない言葉は一切信じないわ。この魔界では当たり前の知識でしょ。それに私のテリトリーで強奪を図ろうとは、図々しいことしてくれるじゃない……!」

海蛇の顔でも眉間を寄せて、声にも怒りを込める。俺たちの正当性を信じず、嘘をついたと判断し、逆鱗に触れてしまった。せめて嘘偽りのない言葉であることを証明してくれる契約の箱さえあれば信じてくれたが、今は不可能だ。もう覚悟を決めるしかない。

「……ん? 蟻みたいな小さな体だから気が付かなかったけど、そのレメゲトンは……。ホーンなるほどねぇ。まさかここでご子息に出会えるとは……運がいいのやら」

「なに、ソロモンを知ってるのか……!」

「ええ知ってるわぁ……関係性が知りたいのなら、モーヴェイツ家の体には物理で教えてあげるわ!」

声色に強い怒りや恨みが籠っている低いトーン。そんなご子息に対して運がいいという発言の裏には、昔に相当根深い心情がおありのようだ。とはいえ俺からすればとばっちり。物理で教えられる筋合いはないが、海蛇の図体による重い物理は、一撃喰らって無事には済まない。

「皆、戦う気力は落ちていないよな」

俺の口から、ウァサゴ、アンリデウス、フェニックスに戦意のチェック確認だ。

 海の上で嫉妬の逆鱗を触れた今、絶望的な状況。それでも俺はメナリクに会うために、ここで海蛇の餌になるわけにはいかない。

「まあ、やるっきゃないでしょ」

ウァサゴの薄ら微笑から出た軽い言葉に、深い覚悟を感じた。それにアンリデウスも頷いた。

「フェニ、お前はどうだ?」

顔を後ろに振り向き、背後に隠れるフェニックスの様子を伺う。するとフェニックスは青ざめていた。レヴィアタンに相当の強い恐怖を抱いている。

「……レ、レハ。こんな時に言うのもあれだけど……」

顔を下げ、恐怖に支配された声色で、フェニックスが俺に何か言おうとしている。俺が求めた覚悟、聞ける様子はなさそうだ。

「あのレヴィアタンよりも強大な、霊のオーラが急速に迫ってきてるよ……!」

「な、なに?」

フェニックスが顔を上げて俺に感情で訴える。そのトンデモ発言に、レヴィアタンよりそっちに集中が向けられた。

「それはどういうことだ」

「そ、それにこの悪意……とても覚えが……!」

まさかフェニックスが青ざめている原因は、あのレヴィアタンではなく、レヴィアタンよりも強い霊のオーラか。だが、フェニックスは生命に満ちた不死鳥。回復の炎で幽霊たちを成仏していった。死に満ちた霊界の力なんぞに怯える義理はないはず。なのにこの異常な恐怖感。只事ではない。

「おいモーヴェイツ、何よそ見してんの……? ナメてんのかオウラァ!」

それはそうと、俺がフェニックスに顔を向けて、プライドを傷つけたか更に怒りを買ってしまった。そんなレヴィアタンの高い()が、俺もろとも幽霊船に向けて素早く下ってきた。大口を開けて、鋭く尖った牙が幽霊船を嚙もうとしてくる。

 一旦フェニックスの恐怖を後回しにして、レメゲトンの第一部を開いて戦う姿勢に入る。ウァサゴとアンリデウスも姿勢を構えて、巨大な牙に立ち向かおうとしていた。その時。

「ッ……!!!」

急降下してきた蛇頭が、急に静止。襲い来る牙は幽霊船を咀嚼する前に止まり、レヴィアタンの攻撃中止に疑問を浮かばせる。蛇の瞳に力は一気になく、瞳孔散大している。

「……なんで止めたの?」

そればかりか、レヴィアタンの首回りから大量の血飛沫。嫉妬の鮮血が周囲の海を赤く染めている。まさに紅色の海だ。まさか脂っこいものばかり食い過ぎて、血管が内部から破裂したか。そう甘い考えが一瞬余技ったが、首から頭が離れた。ただ離れているだけではない。首と頭が完全に絶たれている。俺ごと幽霊船を嚙もうと襲い掛かった顔は、幽霊船ではなく紅海にそのまま重力に従って沈んでいった。今俺たちが目の当たりにしている光景は、海蛇のどこから首と呼んでいいのか分からない図体にある、血肉の断面図。レヴィアタンの体は、死んだまま首を起立している。

「アンリデウス、お前がやったのか?」

首の切断はアンリデウスの能力だ。だが、首が切断された瞬間は俺も目撃していない。更に言うなら幽霊船の上空や周囲に配置している紙ドクロの全視覚もだ。アンリデウスに問いてみたが、アンリデウス自身も表情に驚きが覆われていた。

「いや、違うわ。でも、確かにレヴィアタンは何者かに切断されてる」

「では、誰が……?」

「……この悪意は、副部長……」

俺の背後に異常に怯えるフェニックスが、そう答えた。一同はフェニックスに注目した。

「副部長? え、誰」

フェニックスが言う副部長が誰なのか、サッパリ検討が着かない。それにフェニックスがさっきから言っている悪意。それがフェニックスが怯えているほどの強大な霊のオーラだとしたら、尚更理解不能だ。

「ようやく相まみ捉えたぞ、人間っっっ……!」

天空から第三者の声が耳を拾ったと同時に、上空に浮く紙ドクロの視覚が、第三者の姿を捉えた。その情報は俺の視覚に送信された。

「……なるほど、そういうことか」

俺の視覚に映る副部長の正体、すなわち、不死鳥が怯える悪意の正体が理解できた。確かに奴は副部長だった。そんなフェニックスにとって、副部長がトラウマだということはもう知っている。フェニックスが副部長の悪意や霊のオーラを感じて、フラッシュバックした、というところか。

 天空からの声にウァサゴとアンリデウスは上空を見渡しているが、どこにいるのか居場所が分かっていない。そんな俺は、副部長がいるところへ指す。副部長は、レヴィアタンの起立した死体の上に立っている。

「あれは、ゲーティアの制服……?」

俺たちでさえ外国旅行は制服は着ていないのに、副部長は海の上にはあまりにも不格好な、獄立ゲーティア高等学校の制服を堂々と着用。黒い翼と黄色い嘴が特徴の男は、大きな剣を握っていた。その剣身には鮮血を覆い、周囲には禍々しいオーラが漂っている。

「ん、なんかどっかで見た事ある奴ね……」

同じゲーティア高校生で、副部長はウァサゴと同じ三年生の上級生なのだから、見た事はあるかもしれない。少なくとも、俺は奴を知っている。このフェニックスも。

「ウァサゴ先輩。あの悪魔は、暗殺部の副部長です……!」

「え、暗殺部の副部長?」

ウァサゴも自分の眼で見たことがあるはずだ。かつて俺と副部長が戦ったとき、ウァサゴは俺の助太刀として副部長を蹴り飛ばした。時の力で副部長の時を十秒静止させ、俺の詠唱の隙を作ってくれた。

「あああ思い出した! ……えっ、でも奴は死んだはずじゃ……?」

遅く思い出すも、謎が謎を呼ぶ疑問を抱いた。最後はフェニックスが副部長にトドメを刺し、副部長は倒した。でも、今俺たちの目の前には、死んだはずの副部長が実在している。

「なんで実在してるの?」

実在という言葉は正しくない。霊のオーラを纏っている以上、発現というワードが正しいか。

「エセ不死鳥が死んで幽霊になった、っていうことだ。そうだろ、カイムセンパイ……」

幽霊船からでは、レヴィアタンの死体の上に立っているカイムがよく見えない。が、紙ドクロの視覚によると、カイムは怒りに満ちた表情をしている。そんな苛立っている敵の再会には、死者に皮肉を込めた煽り言葉が最適だ。

 俺が左手に持つダーインスレイヴの元所有者で、暗殺部の副部長を務めていたカイムだ。かつてカイムは、血を吸う魔剣ダーインスレイヴでフェニックスを刺し、不死鳥の血を体内に取り入れたことでカイムも不死鳥になってしまった。不死鳥となったカイムを媒体として、ブネの改造生物、通称『飼物(かいぶつ)』に輸血する計画が裏隠れしていた。

 しかし、不死鳥カイムを善魔生徒会がなんとか倒し、その計画はお蔵入りにさせた。不死身の代わりに、ブネは再生能力を限界まで引き延ばした、自動的に治癒し、傷口から分裂するケルベロス=ラボラスを造った。とにもかくにも、暗殺部の末恐ろしい計画の一人だ。もし不死鳥カイムがブネの飼物(かいぶつ)に輸血されていたら、不死身の飼物(かいぶつ)軍団が完成し、人間界は完膚なきまでに壊滅になっていたところだ。

「所詮、エセはニセ。完璧に不死身になることはできなかったということだ。だから本物の不死鳥の餌になって死んだ」

生前の結末は、七十二本の柱槍(じそう)で粉々になったカイムの肉片を、フェニックスが不死鳥になって食した。そうしてカイムはダイになった。手に入れた不死身を活かせず死に、今度は幽霊に化けて前世に舞い戻ったということか。なんと哀れな。

 俺の煽り言葉で、燃え上がる怒りに油を注ぎ込むどころか高笑いしてきた。怒りに満ちた眼で笑い、どこかご満喫の様子だ。

「フフフフハハハハハ。その逆だ。不死鳥の生命力とは言え、いつかは衰えるんだ。だが、俺は死んだ。死んだということは、次に死ぬことは無い! つまり俺は今度こそ、フェニックス以上の不死鳥になったのだぁ!! もはやそこにいるフェニックスは、不死鳥として無価値なのだよぉ!」

自分が未だに不死鳥と酔いしれている。それはそうと、幽霊はみな生気がないと当たり前のように思っていたが、このカイムは相当元気に叫んでいる。死んだのが一周回って、正気の沙汰に狂いが拍車がかかったみたい。

「さっき俺がエセ不死鳥だとほざいたな。その言葉、そのままフェニックスに返してやる。今思えば、寿命が長いだけの鳥風情が不死鳥とは詐欺めいている。寿命は有限だ。だが、死者は永遠に死者だ。この俺こそが完璧な不死鳥だ!」

絶大な生命力を持つ不死鳥の寿命が千年としたら、死者としての二度目の死はない不死鳥の寿命は零。零だからこそ死ねない。そんな屁理屈で真の不死身だと言いたいのかい。

「どうやら霊界は俺が思っていた以上にお花畑が広がっているようだ。住民の脳内がな」

「……人間。種族としてありとあらゆる不完全な存在が、完全な俺に言いたいことがあるのか?」

そろそろ煽り言葉に気が障ったか、ご満喫な笑みが失せ、冷静な表情に変化。静かに俺の言葉を待った。

「イキリ散らし暴れ殺すだけ脳しか持たない悪魔は、呆れるほど低能っていうことだよ。俺みたいな人間よりはな」

そう言ってやると、カイムは翼を羽ばたかせ飛び、死体の上から俺に急速接近。一秒にも満たない速度で俺の間合いに入り、咄嗟にダーインスレイヴを逆手に持って左手を右斜め上に構える。カイムは大きま魔剣でダーインスレイヴの剣身に叩きつけてきた。魔剣同士の衝突で、俺とカイムの周囲の空気が拡散。突風でウァサゴやアンリデウス、フェニックスに海賊幽霊が突き飛ばされた。

「俺はな怒っているんだ。この魔界に人間が調子に乗っていることでなぁ!」

「そいつはどうも失礼。だがお互いの怒りはごもっとものようだ。俺も、悪魔が人間界で幅を利かしているらへんが特に」

「じゃあ白黒つけようじゃねえか。俺の新たな魔剣グラムで、人間界に黒い怒りをぶちかましてやるァ!」


霊界から迫り来るホラー。陸の魔列車、海の幽霊船。そして、空の不死鳥 幽霊になったカイム!


ということで、暗殺部の副部長カイムは不死鳥になりつつも、再生が間に合わず死んでしまい、幽霊になってしまった。しかし、死者だからこそ不死身になったことで真の不死鳥になったと喜び、霊界から魔界へ帰ってきましたね。


……実習が終わるのは7月後半なので、七月後半になったら執筆を再開します。頑張ります

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