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ソロモン校長の七十二柱学校(打ち止め)  作者: シャー神族のヴェノジス・デ×3
第六章 エチオヴィア大狩猟大会編
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七十一話 乗車

フェニックスから俺たちに尾をいただいたところで、俺は尾を右ポケットに入れ、ウァサゴは右耳に掛けた。

「さて、それじゃ善魔生徒会の絆を確認したところで、ガッツに乗車するわよお」

いよいよ鉄道駅突入に入る。俺たちは駅入り口の人混みに身体を向け、ウァサゴは拳同士ぶつける。ウァサゴも力尽くで押し通るつもりか。

「戦闘態勢だな」

邪魔な悪魔を倒すため、魔法陣からレメゲトンとダーインスレイヴを召喚する。アンリデウスも鞘から処刑執行の剣を出し、フェニックスは回復援護のため、俺たちの背後に立つ。一方ヴァプラは泣きっ面のまま背から竜の翼を生やし、飛ぶ準備に。

「あっ、皆。そうカッカと殺気出さなくていいよ」

戦闘態勢に入る俺たちに、ウァサゴは気軽なく意味不明な発言をする。

「え、どういうこと?」

ウァサゴの相変わらず読めない発言にアンリデウスが疑問を出す。

「だって、ほら」

ここでウァサゴが俺たちの前へ三歩歩いたところで右脚を上げ、足底を曇天に差す。ここで右脚の筋肉が一気に分厚くなった。これは力のチャージを一秒に短縮させる時の能力。脚に莫大な力を溜めたことで、力の量に比例し筋肉が大きくなるという、ウァサゴ特有の謎の仕組みだ。

「えい」

そんな馬鹿げた分厚い筋肉の塊を、大地へ強く叩きつける。その衝撃波は凄まじく、踏んだ大地は容易く砕けた。強大な踏みつけによる衝撃で、鉄道駅入口付近の大地が砕けながら、真上へ高く撥ねた。その大地に立っていた人混みの悪魔も一緒に撥ねて飛んだ。

「うああああああああああ」

宙に舞う悪魔と大地の岩盤。それらは高く高く撥ね、落下に入る。各々の身体は重力に引っ張られ、抉られた大地に叩きつけられていく。

「ぐふぁ……!」

そればかりか、砕けた岩盤も人体に落ちていき、次々と潰されていく。

「がああああああっ!」

「ちっくしょ……いったい何が起きやがった……」

「なんか急に撥ねたぞ大地が」

ウァサゴの足踏みによる衝撃波で大地ごと撥ね上げられ、一気にやっつけるこの荒業。これにはアンリデウスは開いた口が塞がらない。

「ええええええ……」

ウァサゴの破天荒な力技にもはや引いているレベル。普通、凄すぎて驚くのに、それすら一周するこのリアクション。ああ、俺たちも初めはこんなリアクションしていたものだ。今やウァサゴの光景だ。

 お見事に、さっきまで入り口付近に戯れていた人混みが、大地に寝っ転がっている。

「さっ、通りましょっ」

ウァサゴは踏み込んだ脚の筋肉を元に戻し、何ら平然のように鉄道の入り口へ進行する。後ろへ振り向いていないから、アンリデウスのドン引きに気が付いていない。

「ああ、そうだな……」

せっかく戦闘態勢に入った俺たちだが、レメゲトンとダーインスレイヴを魔法陣に戻した。ヴァプラも竜の翼を戻し、ウァサゴに続いて歩く。アンリデウスも処刑執行用の剣を鞘に戻すと、歩き早に俺の隣に寄り、口を俺の耳に近づけた。

「ね、ねえレハ。あなたたちのリアクションを見る限り普通っぽかったけど、いつもあんな感じなの?」

ウァサゴに聞こえないよう、薄ら声でウァサゴのことを聞かれた。アンリデウスはウァサゴのことをあまり知らないから、そう思うのは当然か。アンリデウスの質問に、俺も薄ら声で答える。

「ああ。何せ、悪夢に魘されてる俺を殴り起こしたほどだぞ」

ここでアンリデウスはウァサゴの素行不良な行いの原点を垣間見た予感がした。

「あっ、ああ……そうなのね……苦労してるわね」

「それだけじゃないよ。あのヒト小指を極めててね、小指の突きで大地を割るんですよ……」

「ええっ?!」

「ああ、そういえば前、ウァサゴ先輩が小指のデコピンで隕石群をぶっ壊したことあるんだよ」

フェニックスとヴァプラもウァサゴの力自慢を、生徒会新人に小声で話す話す。

 あとは他にも、俺を決闘込みで善魔生徒会に入会させたり、時が止まったヒトをバットみたいに振り回したり、時の速さでブレイクダンスをして体育館壊したり、瀕死のヒトを学校の壁へ貫通するほど強く投げたり、ウァサゴの力伝説は多い。なぜ力加減を知らないんだ。

「く、苦労してるわねホント……」

そのうえウァサゴは自由気ままで我が儘。自分の意見を押し通し、他者の意見は参考にしない。苦労しかしていない。苦労してるわね、と二度漏らすアンリデウス。そのうちウァサゴの厄介に巻き込まれると思うと、この生徒会で居られるだろうか不安だ。俺も辞めたい。

「ああああ、そこで寝っ転がってると交通の邪魔よ」

邪魔という理由のみで、倒れる悪魔の身体を容赦なく蹴り飛ばした。たったの軽い蹴りで数メートルは飛ばされた。

「慈悲もないわねあの善魔……」

アンリデウスは高潔な死神の一族ということで、悪にも慈悲な処刑は下す。そんな独自の道徳から観れば、ウァサゴの行動には善魔生徒会会長の正義感が全く見たらないことだろう。倒れている者に蹴りの一発を入れている時点で、悪魔となんら変わりはない。日頃から粗暴行為が丸見えだ。

「ああ、鉄道の入り口もちょっとヒビ入ってますよ」

ウァサゴの強大な踏み込みは大地を抉り、撥ね飛ばしたに限らず、鉄道の入り口さえも軽めだが損傷している。だが、駅を全壊しなかったのはこちらとしても助かった。もし全壊していれば港町エイラドへ列車は乗れず、陸ルートを使わざるを得なかっただろう。

 敵を退かした道を通り、鉄道駅へ入る。

 迷わず切符売り場に寄るが、切符売り場の上には、俺たちが乗る列車のマークがあった。列車は先頭から最終尾まで七つの車両だ。そういえば肝心の、どの車両に乗るかを決めていなかった。

「そういえばどこの車両に乗ろうか」

「別にどこでもいいでしょ」

「じゃあ、椅子しかない車両と、個室がある車両、どっちを選ぶ?」

この列車マーク、一号から五号まで椅子しかない車両、つまり普通席と、六号と七号が個室席に分かれている。

 普通席は、バスと同様にリラックスできる場所が椅子しかなく、しかも椅子同士が並べられているため狭い。しかも見知らぬ悪魔の隣で座る苦痛も虐げられる。人間の俺にとってそれは耐えがたい苦痛だ。対して個室がある車両だと、仲間内で個室を占拠できるため、見知らぬ悪魔と隣という事がなく、リラックス効果は高い。とはいえ、このマークを見るに、車両内に四つの小さな個室があるだけなので、別の個室には悪魔がいるのは当たり前だ。隣に座られる可能性が高い車両は精神衛生上悪い。俺のような陰気な人格はフレンドリーではないため尚更だ。

「「「個室」」」

ウァサゴ、ヴァプラ、アンリデウスは即答の個室。まるで陰気な性格者同士の集まりのようだ。しかしフェニックスは黙っていて、すぐに答えなかった。

「フェニ、どうかしたの?」

「い、いや、私は貨車がいいなぁと思って」

「貨車って、コンテナを置くところの?」

「うん」

普通席と個室席、この二択以外の案を繰り出された。貨車はコンテナを置く車両で、この列車マークだと七号の最後尾以降に連携されている。が、あくまでコンテナを置く目的だから座る場所はない。

「なんでかっていうとね、貨車だと外の空気をいつでも吸えるし、車両内に比べ狭苦しくないじゃん。それに貨車だと乗客いなさそうだし」

「元より貨車はコンテナを乗せるのであって、客を乗せるものではない」

「で、でも、私実は狭いところが苦手なんだ。鳥だし」

「ああ、なるほどね」

鳥の化身者にとっては、何限りとない大広々とした空は、思う存分滑空できる得意なフィールドだ。それが鳥かごのような狭い場所だとストレスを感じるというわけだな。

 そういえばフェニックスが暗殺部に狙われていた当初、トイレの個室に駆け込んで避難したが、個室も狭い場所だから、決して個室も安心して休められる場所ではないのだな。不衛生なトイレ場なので安心もないと思うが。

「あっ、私個人の言い方しちゃってごめんなさい。わがままだったね」

「いや構わない。ではフェニックスは貨車にして、俺たちは七号の個室席にしてもらおうか」

「いいねそれ。貨車と近いし」

「ああ、なるべく仲間は距離は離れないほうがいい」

フェニックスが利用する予定の貨車と、俺たちが利用する個室席は近い方が良い。よって最終尾の七番号車に乗ろう。

「あっ! だったらさ、私とレハ、ウァサゴさんとヴァプラの個室に分けない?」

アンリデウスが個室を二つに分けるという提案を出す。

「俺とアンリが……? あっ」

俺とアンリデウスを一緒にするという、アンリデウスらしい魂胆を垣間見た予感がした。俺はアンリデウスの魂胆の可能性を防ぐべく、否定しようとした。

「ああ、いいぞ」

「それもそうね。狭い空間で四人も居たら窮屈だわ。せっかくの旅列車だもの。のびのびしましょ」

がしかし、俺の否認が間に合わず、ヴァプラとウァサゴはその提案に可決。多数決で決まった。とはいえウァサゴの言う通り、狭い個室を三日間四人で過ごすのは窮屈だ。俺も狭苦しいのは好まない。

 アンリデウスは俺にウインクした。ああ、この三日間、アンリデウスとの狭い密室を耐えるか……。

 こうして七号車のC個室を俺とアンリデウス、D個室を宿題置いてけぼり作戦失敗の二人。貨車をフェニックスが利用することが決まり、切符を購入。


 エイラド行きの始発は十二時十分。今が十一時四十分だから、だいたい三十分後には列車が停車場に到達し、エイラドへ向かう。

 あとは指定した席が奪われないように停車場まで急いで向かい、七号車が停まる位置に並ぶ必要がある。事前に並んでおくことで、指定した席が取られないように済むから、早く並ぶのは大事だ。

「ふう、列の先頭は取れたな」

運が良いことに、七号車の位置にはまだ誰も並んでいない。列車が来るまでの間、三十分は七号車の列の先頭に立っておこう。

「しかし、停車場は意外とすっからかんね。あんなに人混みがあったのに」

「ウァサゴが全員、鉄道駅の敵を気絶させたからな」

鉄道駅入り口に混雑していた悪魔たちを、ウァサゴがたったの一蹴りで気絶させたことで、停車場は誰もいない。もしあのままウァサゴと悪魔たちが人混みのまま鉄道駅の中に入っていたら、この停車場でも戦闘が始まっていて、全員は何が何でも乗ろうとした。勝ったものが列車に立った者で、負けたものが停車場に立った者だ。それがどうだ。今の停車場は誰もいないから、この先頭の列を奪われない心配をする必要がない。

「さっすがウァサゴ先輩いいい!」

ウァサゴの制圧力に関しては、ただひたすら凄いとしか言いようがない。何の策略のない一方任せな力のみで、雑魚を容易く鎮圧させるのだから。しかもその多くがワンパンチ、ワンキックの一撃。流石、顔に戦慄と書いているとの自称しているのはある。

 だが、アンリデウスは結果を良しとしていないような、不服そうにしている。


 結果的に停車場に来たのは、俺たちと後からやってきた怪我をしていない悪魔たち。だいたい八十数人が来たと思うが、数千人に及ぶほどの人混みではないため喧嘩や乱闘には至らず、皆は安定して乗車することができた。

 そして十二時十分。始発の約束となり、列車は無事にエイラドへ進行した。

 

「しっかし、レハとはつくづく二人っきりになることが多いわね」

「お前が俺と同席を希望したのだろう」

アンリデウスの魂胆は叶い、七号車のC個室は俺とアンリデウスの二人っきり。更には引き戸を内側からロックされたため、外側からは誰にも入れない。まさに密室だ。

「まあまあ、レハは天界の王子、私は王子を護る光の騎士だもの。一番手っ取り早く護衛するには、私の身体の側に居てもらう他ないわね」

一つの個室につき、窓側にテーブルを挟むソファのリビングルームと、二つのベッドが置かれてある寝室に分かれている。俺は今、アンリデウスと一つのベッドに無理矢理寝転がされ、そのうえ白ビキニ状態で猛烈に拘束(ハグ)されている。元はサキュバス専門学校の護衛関係で、アンリデウスと一緒の空間が多かったが、今回は俺が護衛される身として、アンリデウスと一緒の空間に引きずり込まれた。

「なあ、いつまで俺を拘束し続けるんだ?」

アンリデウスは己の肉体で俺を縛っている。おかげで身動きが取れず、俺の胸板とアンリデウスの爆乳が密着し摩擦している。

「列車が港町に着くまで」

素のトーンで即答するあたり、アンリデウスは本気で俺と密着するつもりだ。やはり性欲に飢えた性天使の喰らいつきが強い。

「お腹空いたんだ。離れてくれないか?」

何せ今は十二時十五分。お昼ご飯の時間だ。抱かれて性欲が増すより、空腹で食欲の方が圧倒的に強い。食べないと集中力が失せ、元気が失せそうだ。

「だったら、私を喰らって……? はぁ」

女性ホルモンことエストステロンが籠った甘い吐息を、俺の顔に掛ける。

「きもちわるい」

アンリデウスの顔に張り手し、怯んだ隙に縛る女体から解放。すぐさまベッドから転がって脱出。そのまま足を床につき、アンリデウスから離れた。張り手で突かれたアンリデウスはうつぶせ寝の体勢になって腕を組み、俺を睨みつける。

「冷たい王子様ね」

「アンリデウスはなぜ俺を王子扱いしたがる」

「事実王子でしょ」

「俺を淫魔街の王子にさせたがっていたのはどこの誰だったかな」

「それはアスモデウス」

「ああそうだった」

アスモデウス率いるサキュバスたちは淫魔街の王子に、アプロディーテ率いる天使たちは天界の王子にさせたがっていた。双方も性欲が桁違いな群れであった。俺は陰気な性格なので尚更淫らな女性は苦手だったんだがな。今でもアンリデウスは苦手だ。

「ねぇ、ところでさ、善魔生徒会について質問」

ゲーティア高校生ではないが一員として受け入れたアンリデウスが、善魔生徒会について質問をした。

「レハにとって、ウァサゴってどういう存在?」

出発時からウァサゴの噂や行動を視聴して、これを良しとしていないアンリデウスは、より彼女を情報収集に取り組む気だ。

「……仮にそれを知って、例えば女神王にチクることはしないな?」

善魔生徒会の一員として迎え入れたが、本職は天界の軍隊長だ。情報収集をして、ウァサゴのことを報告し、アプロディーテが余計な処分を下すと厄介だ。この善魔生徒会は、良くも悪くもウァサゴの存在で成り立っている。彼女がいなくなれば、善魔生徒会は滅びると言っても過言ではない。ウァサゴの代わりは宇宙のどこを探しても見つかることはない。

「悪い情報なら漏らさせていただくわ。あなたが万一、怪力自称善魔に殺されたりしたら、もう只事じゃない。死刑よ死刑」

生徒会新人であるアンリデウスはそれほど、生徒会長が信じられないらしい。確かに、あの言動をポジティブに捉えるほど、アンリデウスは狂っていない。ある意味正しい判断と言えよう。

「安心しろ、殺されることはない。フェニックスの回復の炎があるからな」

そう言いながら窓際にあるソファに腰を下ろし、アンリデウスの話を継続的に聞く。

「そういう問題じゃない。あなたが危険になること自体がいけないのよ」

天界側からすれば、俺はその世界の王子だ。そのような者がただでさえ危険な魔界にて、敵だけならず仲間からも危険な目にあえば大事(おおごと)だ。下手したら、天界軍がウァサゴを処刑する可能性もある。

「まあ、そうかもしれない」

「そうかも、じゃなくて、そうなの」

説得にヒートアップしたか、うつぶせ寝から起き上がり、スレンダーな生脚を床に下ろす。身体も俺に向け、表情もしかめっ面だ。対する俺も、天界の過保護っぷりには苛立ちをあった。反論する材料が脳内で揃ったから言ってみる。

「少なくとも一国を担う王や王子たる者が、怪我を負わない気でいるのは威厳を感じさせはしない。民や国のためなら傷を負う覚悟がある奴が、王としての責任じゃないのか? 天界の連中は過保護すぎる」

悪の意志の脱却を図るため、魔界と人間界の世界の壁を退くため、一時期は魔王になることを目指したが、今や天界の王子だ。元々は好き好んで王子になったわけではないが、悪の意思の脱却を願う俺が、悪魔との戦いを無傷で済まそうとは思わない。だからこそ戦う能力を身に付け、悪のエリートを育てるゲーティアへ入学したのだ。

「そ、そうかもしれないけど、この生徒会のリーダーであるウァサゴが、ヤロベアムの悪夢で魘されているあなたを普通殴るかしら? 正気の沙汰だわ」

アンリデウス渾身の正論が爆発。それに関しては反論できず、俺も頷きしかない。

「うんうん」

「仲間であり先輩でしょ。え、なに、もしかしてレハってイジメられてるの? 許せない……!」

更には俺を虐げていると一方的な容疑をかけ、ウァサゴがいるD個室へ壁越しに睨み付ける始末。ああ、溺愛はここまでヒトを勘違いさせるのか。小学生の頃から悪魔に虐げられてきたが、善魔にも虐げられるとは、いやはや虚しい人生のことよ俺。

「いいや、あいつは力加減が知らないんだ。雑魚相手にも瀕死の相手にも、容赦ない正拳突きで攻めるからな」

小指で大地や隕石群を破壊し、拳で時止め、力溜め、時速突きで何でもかんでも人体を破壊し続けたほど。弱者にも情けを掛けない徹底さは、良く言えば如何なる相手にも戦の礼儀があると言えよう。

「それをなにサラッと言えるの。怒らないの?」

「怒ったさ。仕返しの蹴りも入れてやった。だがまあ、パワーも凄い分、筋肉の耐久性も高いからな……」

吐血で集中力も失せて瀕死さながら、渾身の蹴りをかましたが、ウァサゴは怯んだ様子はなかった。なにせ刃を二指で挟み止めるほどのパワーや筋肉の硬さだ。仮に殴り合ったら今でも勝てる気がしない。

「所詮、強さは心の優しさとは相反するのよ。本当に優しいヒトは弱者に攻撃しないもの。強いヒトは己の強さに酔いしれて、弱者にも蟻同然みたいに踏むんだから。ウァサゴは善魔じゃない」

アンリデウスは、強さと心優しさは合わさることがないと考えを漏らす。それに関し、俺はウァサゴの話題からそれに反論する材料を見つけ、反論する。

「確かにウァサゴは手に負えようのない馬鹿な暴れん坊だ。だが、あいつはあいつなりに己の正義に従って戦っている。この魔界においてあいつ唯一の長所は、魔界を変えるには絶対的に必要なんだ。だから俺はこの生徒会に居続けている。短所は俺やシトリーがサポートしている」

最初は俺もアンリデウスと同様、ウァサゴのわがまま一点っ張りな姿勢や乱暴粗暴な戦い方に、不快さを抱いていた。だが、わがままな性格を逆に言えば、恐れず己の正義を主張し、それを仲間に巻き込むことができている。力強い戦い方で逆境を幾度も切り開き、仲間の危機を救った。リーダーとして資格は十分に備えている。これこそ善魔生徒会が継続できている理由だ。だから俺も所属している。

「それにあいつがあの時、俺を止めなかったら、俺は魔界を滅ぼしていた」

「……あの、黒獄の天秤の戦いのことね」

「ウァサゴは、俺が魔界を滅ぼす未来を予知して、善魔の覚悟が目覚めたんだ。そして、俺の悪魔に対する憎しみを、正義に変えてくれた。何もかも、あいつが俺を阻止し、俺を変え、俺を必要としたから、俺はここにいる」

この夢も希望もない世界で虐げられ、絶望を知り、善魔の皮を被った悪魔の正義語りで一層苛立ちは増した。結果、俺は怒りに任せ、耳目障りなウァサゴやシトリー、そして俺自身ごと魔界を滅ぼそうとした。ある意味、すべてを犠牲して魔界を滅ぼそうとした方が、人間界は永久的な平和が訪れたかもしれない。だが、俺たちが生き残ってハッピーエンドを迎えたに越したことはない。俺を止めてくれたのは、今となってはとても感謝している。

「そして今度、俺が妹を助けなきゃいけないと知ったとき、あいつは俺に手を貸してくれた。だからあいつはここにいるんだ」

ウァサゴは普段からわがままで気まぐれ。力加減が効かず、半殺し以上に相手を傷つけてしまいがち。でもいざとなれば頼もしく心強く、全ての行動の裏にはれっきとした正義がある。その行動は確かに不器用だが、ヒトを導く勇敢さがある。そうでなければ、ウァサゴはこの列車に乗ってくれない。

「……んん」

それでもアンリデウスは納得してくれないか。ならば、俺の思い出語りでトドメをさしてくれよう。

「あいつはな、弱者が群がれば一つの硬い剣が完成して、強者に打ち勝てる戦法『窮鼠猫を嚙む』っていうのがあるんだ」

「きゅ、きゅそそ?」

「きゅうそねこをかむ。要は追い詰められた弱者(ネズミ)ほど、強者(ネコ)に打ち勝てる策があるということだ。群れれば尚更強い策が出せるようになる。追い詰められるという意味では背水の陣とも呼べるな」

「は、はいすいの……?」

「はいすいのじん。追い込まれた挙句の果て、背後は逃げ場のない海。逆境ほどヒトはリミッターを外し、潜在能力を発揮するということ」

窮鼠猫を噛むや背水の陣など、ウァサゴは人間界のことわざが好きだ。事あるごとにウァサゴから聞かされるものだ。

「まあ、そういうことであいつは弱者の立場を理解しているんだ。だからシトリーやフェニックスやグラシャ=ラボラスもウァサゴの元にいる。俺でさえ『勝るとも劣らない強い精神力がある。それは、真の弱者しか得られない特別で強い力』と言われたんだ。どう、分かったか? ウァサゴは、世界最強の真の弱者なんだ」

アンリデウスはウァサゴの噂や偏見に振り回されがちだ。かと言って俺もヒトの事は言えないが、案外近くに居れば、ウァサゴの良さはそのうち理解する。ヒトとの関係もそうだ。勝手に脳が分析し、仲良くできそうかできなくないか区別してくれる。

 思えば語るのに夢中だった。しかし、アンリデウスにはしかめっ面はなく、落ち着いてくれている。俺の話も自然と頷いてくれた。不服そうな様子もない。

「……分かったわ。レハがそこまで熱く語るぐらいもの。信じてみせるわ」

「そうか。助かる」

これでアンリデウスも納得してくれたことで、ソファから立ち上がる。ソファの隣に置いたリュックサックからサイフを取り出し、引き戸に向かう。

「どこにいくの?」

「さっきからお腹空いたんだ。お弁当買いに行く」

「あ、お腹空いてたんだったね。ごめん」


はぁ~なんとか冬休みが終わるまでには小説の続き書けました!

一月はオンライン授業があるのですが、二月の実習に向けて書類の準備があるので、小説書いている場合ではなさそうですね!


しかし、去年は『書けない』を理由に書いていなかったという認識もあるので、

今年は『書く時間を作る!』ことを頑張りたいです!!!!


では、また次回で!!!

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